「読めない運勢」

Twitter300字SS 第七十二回参加作品

お題「運／うん」
ジャンル：オリジナル、とある平凡な日常の話（現代FT長編の番外編）
注意書き：特になし

---

「中華街って行ったことある？」
　雑談中の問いにまりあが「いいえ」と答えたら、次の週末に行くことになった。
　級友たちと待ち合わせ、駅から電車を乗り継ぎ一時間。派手な門の前で写真を撮り、珍しい売り物を冷やかし、それから目についた中華料理店で昼食をとった。
　その店では食後にフォーチュンクッキーを配っていた。変わった形の焼き菓子を割ると中からおみくじが出てくるというが。
「……あの、何も入っていません」
　まりあの手元には三角形の破片だけ。
　細長い紙を広げて見せ合っていた友達が一斉に顔を上げた。
「えっ何それ見せて」
「ホントだ、超ウケる」
　中が空っぽだった場合、運勢はどうなるのか？
　楽しい議論は熱いお茶が冷めるまで続いた。

---
字下げと改行を除いて300文字。

ゼロ年代の高校生が奮闘する現代ファンタジー『DROPOUT』から、ヒロインまりあちゃんと、その級友たちの一場面。
遊びに行くと即決したのは依子でしょう。

ところでフォーチュンクッキーは日本がルーツだそうですね。
半端な知識を補おうと少し調べたところ、複雑な経緯をたどって中華街のレストランのおまけに落ち着いたらしい。
おみくじの解釈は個々のインスピレーションに任せるのが正解なようです。