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Party Syndromeの現場に踊る足跡の記録。


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Twitter300字SS 第五十五回参加作品

お題「あう」
ジャンル:オリジナル、とある不思議な世界の話
注意書き:特になし

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 薬屋の作業台の上には変わった色の芋が一つ。
 受付嬢と薬師たちが頂き物を囲んで、話題は今日の晩ご飯。
「これ食べるの?」
「見たこともないものをどうやって食えと」
「泥みたいな色してらあ、毒があるに違いない」
「毒があるなら薬にできるかも。調べてみよう」
「召し上がってくださいって渡されたのに?」
「傷んでる匂いはしないね」
「どんな食材にも必ずそれに合う調理法がございます」
「煮るか蒸すか」
「焼いたら、きっと、おいしい」
「一個しかないなんて。薄く切って分けなきゃ量が足りません」
「よし決めた。育てて増やしてからいろいろ試そう」
 最後に現れた店主がそう言って芋をさらってしまった。
 あっけにとられた顔だけは皆一緒だった。

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意見が合わない限り献立はなかなか決まらない。これは毎日の課題。
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Twitter300字SS 第五十四回参加作品

お題「水」
ジャンル:オリジナル、とある普通?の学校の話
注意書き:特になし

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 昇降口から外に出ると、水玉模様の傘を差した子が立っていた。
 空を見上げても雨は降っていない。天気予報は一日中晴れだと言っていたし、傘を持っている子なんて他にはいなかった。
「どうして傘持ってるの?」
「まだかな。まだ降ってこないかな」
「帰らないの?」
「この傘で帰るの、楽しみにしてたのに」
 こちらの声には全然答えないで、ずっと校庭の方を向いたまま立っている。
 いったい何を見ているのか。横に回ってその子の顔を見ようとしたら、後ろから名前を呼ばれた。振り返った先には同じクラスの友達がいた。
 ばいばい、また明日。
 手を振ってからもう一度横を見ると、そこには誰もいなかった。
 傘立ての隅に古びた水玉模様の傘が残っていた。

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雨上がりの虹のような出会いの一瞬。

お題の扱い方としてはかなりぎりぎりのラインかもしれない。
Twitter300字SS 第五十三回参加作品

お題「歌」
ジャンル:オリジナル、とある不思議な世界の話
注意書き:特になし

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 太陽の祭りに花を添える楽団が新緑の下で練習に励んでいる。
 その様子を見守っていた近所の住人が、離れた場所で楽器と格闘する小さな団員を見つけた。
「先生、全然音が出ません」
 渦巻き笛を抱えた少年が顔を真っ赤にして息を吹き入れるたび、空腹を知らせるような音が鳴る。植え込みの陰で妖精たちが笑い転げるわけだ。
 付き添っていた先生が優しく諭した。
「いいか、君がこれを鳴らすのではない。この笛が歌いたいように歌わせる。君はその手助けをするだけ」
「知ってるけど」
「相棒を信じて」
 ついでに座る姿勢も直されて、少年は改めて笛に向き合った。さっきより肩の力が抜けている。吹き口をそっとくわえると、カエルの歌声に似た音が響いた。

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ビューティフルハーモニーはこれから作られていく。
Twitter300字SS 第五十二回参加作品

お題「咲く」
ジャンル:オリジナル、とある日常の話
注意書き:特になし

久々にファンタジーでも何でもないやつです。

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 先週の花見の席で美女を見た。
 昼休みに入った定食屋に若者の集団がいて、目撃談を語り合っていた。桜の下にもすごい花が咲いていた。気持ちは分かるが非常にうるさい。
 気づけば彼らに背を向けて座る同僚の口数が減っていた。迷惑というより、心当たりがありすぎて聞き流せない、そんな顔だ。
「そういやお前も先週花見に行ったって言ってたな。同じ場所?」
「ああ……」
 話を聞く限り、現場はこの辺で一番有名なスポットだ。偶然居合わせてもおかしくはない。
「まさか噂の美女ってお前の知り合い? 元カノ?」
「いや」
 僕らの会話が途切れた後、また大声が響いた。爆笑に紛れるように同僚が呟いた。
「だからそれ、俺……」
 聞かなかったことにしよう。


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最後の一言から書いていくときれいにまとまりますね。
Twitter300字SS 第五十一回参加作品

お題「薬」
ジャンル:オリジナル、とある不思議な世界の話
注意書き:特になし

先月と同じ子です。だんだんシリーズ化してきましたね。

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 見習い薬師が薬の材料を仕入れに行った。
 下手な地図を頼りになんとか見つけた家で呼び鈴を鳴らすと、弱々しい声が扉越しに聞こえた。
「どうぞ……鍵は開いてます」
 おそるおそる踏み込んだそこは驚くほど普通の民家だった。
 薬草の匂いはなく、テーブルには山ほど積まれた本だけ。若い女がソファの上で本を広げ、膝に置いた広口瓶の中に嗚咽と涙が絶え間なく落ちていた。
「あの、材料を取りに来ました」
「これです……お代はもういただいています」
 女は抱えていた広口瓶を薬師に押しつけた。そして目尻をぬぐうことなく、別の瓶を取って両手で抱えた。

 水妖の女が流す涙は浄化の力を持つという。
 今どきのそれは「泣ける本」によって量産されていた。

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余談。
300文字、の基準をどう取るかは悩むところで、数え方によっても違うんですよね。
自分の場合はWordで書いているので、基本的にはその文字数カウントで取っています。
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自己紹介:
化屋月華堂(親サイト)&カフェ「パーティ」(子サイト)管理人。今のところ活動は後者の方が活発。
一応今は社会人なので控えめに動いてるつもりだが、その割に子供じみた言動も多々ある。自覚あり。

ちなみにブログ名は“カフェパにのめり込んで離れられなくなった人”を指す造語に由来。
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