「焦がす」

今回はSS企画《俺のグルメFESTIVAL》に飛び込みました。

味覚関係の記憶力が弱い人なので、おいしそうに見えるかどうかは今ひとつ自信がないのですが、何事も練習しないと上達しないそうなので。

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　藍は意気込んでいただろう。
　タルトの飾りつけは完璧。後は表面のキャラメルを軽く炙るだけ。気合いを感じる鼻歌のリズムに合わせ、二つ結いにした髪が揺れた。
　私は手出しを禁じられていたが、バーナーに点火する瞬間だけは心配になって横目で見てしまった。

「どう？ わたしだって、これくらいはできるのよ」
　切り分けたタルトを私に差し出す藍は満足げだ。焦がした色に少々ムラはあるが、気にしていないようだ。
　一口分を頂いて、私は笑顔の理由を知った。
　キャラメルに入り込んだ苦味をバナナが打ち消そうと頑張って、それをタルト生地の優しい甘さがフォローしてくれる。
「いつもありがとう」
　勤続半年。令嬢の運転手として初めてのボーナスだった。

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魔女でお嬢様で旅人な藍（ラン）ちゃん＆専属運転手ゼファールの年の差コンビが送る近未来ロードムービー風ファンタジー「ストレイトロード」から、平和な一場面をお送りしました。

ツイッターから来られた方の中には気づかれた方もいるかもしれませんが、同日投稿のルート140と同じ書き出しです。
本当はそちらように考えていた話ですが、ちょうど食べ物の話ということで、文章の途中から分岐させてもう一つ書いてみました。

企画自体は「おいしそうな食事風景」がテーマだそうですが、それにしては食べる場面の比率が低いようにも思います。
作る人にとっては作るところから全部ひっくるめて料理で、そこからもう味わうことを始めている、
という個人的な印象がそうさせたのかもしれません。

食べ物をおいしそうに描ける人、それどころか架空の世界の食べ物を一から描き出せてしまう人って、本当に凄いなあと。
書いていて改めて思いました。