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Party Syndromeの現場に踊る足跡の記録。


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カフェパ話。

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 その日の夕方、島の大部分を覆う森の一角で火の手が上がった。事態を知った水ポケモンたちの手により火は一時間ほどで消し止められ、森の木々へ燃え移ることはなかった。
 焼けたのは家が一軒、そしてその庭。
 消火活動に当たったポケモンたちは住人の身を案じ、黒こげの木材の山と化した現場に踏み込んだ。そこで彼らが見たのは――



「急なお願いで申し訳ありませんが、どうかよろしくお願いします」
「ご安心ください。この子たちは私が責任を持ってお預かりします。トレーナーさんも、どうぞお気をつけて」
 育て屋の受付で応対した女性はまだ若いようだったが、その割にしっかりしている印象を受けた。腕も確かなのだろう。たった今手渡したポケモンがもう懐いている。
 もう一度深々と頭を下げてから、店を後にした。
 扉の音が静かに遠ざかる。
「……ごめん」
 背を向けたまま呟いた。
 とがめる言葉も、慰めるような鳴き声も、聞こえてこない。
 無言のまま町を歩く。途中でふと顔を上げると、フレンドリィショップのガラス戸に見覚えのある影が映っていた。
 疲れ切った顔をした金髪の青年がこちらを見つめ返していた。



 焼け跡からは何も見つからなかった。
 救出すべき人間やポケモンはもちろん、彼らがそこで直前まで生活していたと思えるような痕跡さえも。
 即席の救助隊は日が暮れてもしばらくの間、手がかりを探し続けた。しかし結局彼らが掴んだのは、二つの事実を示す証拠だけだった。

――その家は燃え始める前から既に住人を失っていた、ということ。
――その家は何者かの手で、おそらくは人間の道具によって火をつけられた、ということ。

 そのことは特にどこかへ報告されることもなく、日常の雑多な記憶の中へ埋没していった。

 失われた何かがあることに誰かが気づき、誰かに問いただすまで、それは忘れ去られたままとなることだろう。
 この島において多くの“事件”がそうであったように。
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自己紹介:
化屋月華堂(親サイト)&カフェ「パーティ」(子サイト)管理人。今のところ活動は後者の方が活発。
一応今は社会人なので控えめに動いてるつもりだが、その割に子供じみた言動も多々ある。自覚あり。

ちなみにブログ名は“カフェパにのめり込んで離れられなくなった人”を指す造語に由来。
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