化屋月華堂は6月の文学フリマ岩手にエントリーしていたのですが、キャパオーバーのため抽選となり、残念ながらスペースを手に入れられませんでした。
行ってみたかったんですけどねぇ盛岡。昨今の文フリ人気のすさまじさに震え上がって、あと岩手目標で新刊の原稿を頑張っていたのに目標のほうが消えたこともあって、それから原稿は進んでいません。
それでも何かをしなければと思っていくつかエントリー。
9月の文学フリマ札幌は幸い抽選対象外となり確定。
さらに、次のイベントは7月開催の「ウチノコRection」に決まりました。
ウチノコRectionの特色は、なんといってもオリジナルTCGのカード作成権が付いてくること。
テキストと画像を用意して専用フォームから提出すると、主催側で作ってくださるのです。
「うちの子」をアピールするところに主眼を置くイベントです、藍ちゃんとサイガと、どうせならばけも欲しい。
アンケートに後押しされる形で全部作ることにしました。
まあ、一回分の旅費が浮いたから、その分と思えば……
しかし、テキストはいいとして、問題は画像。
カードの枠内にはめ込むのにふさわしいキャラクターのイラストが手元にないのです。
化屋月華堂の作品は主に写真と加工で表紙を作っています。なぜなら書き手Ristaはイラストが不得手だから。
イラスト表紙なら「ストレイトロード」があるじゃないかと思うかもしれない、しかしシリーズは続いていてもあの本はそれなりに年数が経っていて、今さら使わせてほしいとは言いづらく。
サイガくんも立ち絵はあるけど何年も前、しかも別の目的で描いてもらったので今さら以下略。
そんなわけで、新規でイラストを描いていただける方を探すことに。
しかし勇気のいることでした。
Ristaのそれなりに長いインターネット歴はもちろん失敗の連続です。そしてその中には
「イラストをリクエストするチャンスを得たものの、対する振る舞いが失礼すぎて、それきり一切レスポンスをもらえなくなった」
という苦い経験もありました。
正直、怖かった。
しかし常に同じ環境にさらされ続けているわけでもありません。
ちょっとXで愚痴ったら運よくアドバイスをいただけて、依頼文を添削していただけることになったので、頑張ってみることにしました。
こうして2人分のイラスト製作者探しが始まったのです。
(ちなみに「ばけ」は生みの親、化屋月華堂もう一人のメンバーである鈴に依頼しました。今や多忙なのでとても頼めないと思いつつダメ元で話を振ったら快諾してくれました。概要とイメージは伝えたので、あとは向こうが時間を作ってくれるのを待っています。)
イラストが得意な人はたくさんいます。
しかしその中でRistaと接点があり、依頼を受付中であり、しかもカード作成申請の締め切りに間に合う程度の余裕がありそうな人……となると非常に限られます。
特に最後の条件。下手するとゼロかも。
そうやって今までは相手の都合を気にして遠慮していたのですが、今回ばかりは締め切りが優先。戸惑っている暇はありません。
なので思い切って、知り合い以外から探すことにしました。
近年インターネット上では、対価を払って誰かに何かをしてもらうための取引サポートサイトがいくつもあります。
中でもクリエイターの場合、有料の作成依頼(よくコミッションと呼ばれます)は大きく2つの系統に分かれているようです。呼び方はよくわからないのでRistaが勝手につけています。
・リクエスト型
→作ってほしい内容を投げ銭付きでお願いする。細かな内容の決定権は制作側にあり、リテイク(頼んだ側からの修正依頼)は不可。『Skeb』が代表的。
・仕事発注型
→依頼内容を送り、制作側との相談や見積もりなどを経て、代金を払って作ってもらう。相談も調整もリテイクも可(ただし途中までしか修正の余地がないことも多い)。『SKIMA』『ココナラ』が有名。
一方そのころ、Xの自分のタイムラインでは、しばしば同じドメインのURLが流れていました。
クリエイターとの取引に特化した仲介サイト『つなぐ』 https://tsunagu.cloud/
上記2系統の両方を扱うほか、イラストの描き手が自分のデザインしたキャラの立ち絵を販売していたりもします。
というかその販売(オークション?)の宣伝がたくさん流れてきていたのです。
ちなみに立ち絵を購入して何に使うのかは知らないのですが、TRPGや定期更新ゲーム、PBWなどをたしなむ方々をフォローしているので、そちら方面の需要があるのかもしれません。
気になってちょっと調べてみたら、手数料の低さを売りにしている模様。
同じ金額を払っても、他社(大手サイトかな?)より手数料が低いから、より多くのお金が作者に支払われるというわけです。
こちらとしても負担が低いのはよいかもしれない。
というわけで『つなぐ』のコミッション検索のページから、イラスト依頼関連を見てみました。
制作者側が「こういうの作ります、○○円から」のような感じで、自分にできる仕事とその料金プランを提示しているのです。
本を作った人が販売サイトに登録して内容や値段設定を入力するのと同じ感覚ですね。
そして多くの方が、依頼する際の注文分テンプレート(必要な条件を箇条書きにしてあり、質問に答えるだけで依頼文になる)や条件ごとの価格設定、注意事項などを明示しています。
注文側はこういった内容やイラストの見本などを見ていって、頼みたいなと思ったら制作者にメッセージを送って取引に入るわけです。
TCGのカード用イラストは800x800というサイズ指定があります。
そうすると、全身立ち絵を描いてもらうよりは、SNSアイコンなどのサイズ感で作ってくださる方のほうがいいかもしれない。
それでも数千円からが相場です。貴重な時間を割いているのだから当然と思いたい。しかし同じサイズでもあまり高すぎたら自分の本が刷れなくなるから、多少は抑えたい。
中には現在依頼を受けていない方のページも混ざっていたり(取引希望のボタンを押せないようになっている)、サムネイルではわからなかったけどサンプル画像を見たら画風がちょっと違ったりする。
そうやって少しずつ絞り込んで……
……それでも、多い。多すぎる。
コミッションページとのにらめっこだけで、気づいたら一週間が過ぎていました。
しかしずっと足踏みしていたら締め切りが来てしまう!
着実に進めるためにはまず計画です。どういう条件で頼みたいか、改めて整理しました。
1.依頼を受けられる状態である (募集休止中のコミッションもあるので)
2.納期までに作品を仕上げられる (最低限の話)
3.比較的小さいサイズのアイコンまたはキャラ絵を引き受けられる
4.商用利用可能としている (印刷したカードを配るのがゴールなので一応)
5.青少年のキャラクターが得意そう (依頼内容がどちらもティーンなので)
番号は優先順位です。
このうち1はコミッション画面で依頼を受けるボタンが出ているかどうかで判断できます。
3と4はコミッションの説明、5はポートフォリオなどが判断材料になるでしょう。
ちなみに4はどこまでが商用利用とする基準がないせいか、コミッションでの書き方はまちまちです。許可制もご自由にも断固拒否もあります。
問題は2。依頼料だけ持ち逃げするような輩はいないにしても、他サイト経由の依頼など抱えて忙しいから取引依頼を見落とすような人には当たりたくない。
片手間のサービスではなく「仕事の依頼」、お金を出す以上は、というやつです。
他のコミッションサービスのほうが閲覧数も注文数も多いでしょうから、わざわざ『つなぐ』に登録しても反応が少ないからと放置されるかもしれない。
そんなわけで、登録日が比較的最近の(つなぐの存在を忘れていなさそうな方の)コミッションに的を絞って、3と4に見合う方を探しました。
購入日が新しい順に並べ替えてから、販売者側のステータスを見比べました。探しました。
そうしてまず、藍ちゃんのイラストをお願いする方が見つかりました。
『つなぐ』ではいきなり注文ボタンを押すような発注方法もありますが、通常は販売者と1対1でメッセージをやり取りできる画面(LINEのトーク画面やSNSのDM機能みたいな画面)を通して依頼し、見積もりや詳細や納期などを双方が確認してから入金手続きに入ります。
アイコンや立ち絵の仕事募集の場合、基本価格を提示しつつ、描画範囲や持ち物の有無などで追加料金が発生する旨を紹介ページに明記している人が多いです。
そんなわけで「購入を相談」ボタンを押して、メッセージ画面で依頼文を書きます。
コミッションの紹介ページにはたいていテンプレート(その人が絵を描くために把握したい内容を質問形式で並べている人が多い)があるので、それをコピーしてキャラクターの説明を詰め込み。
あと用途としてウチノコRectionのことと絵のサイズ指定があることを説明し。
とはいえ「頼み方」で痛い目にあっているので、できれば失敗はしたくない。絵を描く人にやさしい文章になっているのかしらこれ。
というわけで、前に書いた通り事前に添削を受けて、直してから出しました。
思ったよりは直すよう指摘される箇所がなかったのですが、これは今の自分がかつての自分と違って、社会人経験とメールのやり取りを積み重ねたから……かもしれない。
その日のうちに返事がきました。
これは予想以上に早い!
追加質問などの簡単なやり取りをして、翌日には話がまとまって入金手続きへ。
そしてその方は納期についても「何日以内に」の目安を提示してくださいました。
想定よりずっと早い!
ここまでがゴールデンウィークの前半。
それから後半を挟み、休みボケに悩んでいたころ、ラフが届きました。先に提示された目安ぴったりの日数で。
添えられたイラスト(まだラフ)を見ただけでへろへろメンタルが大幅に回復しました。
既に文句なしの出来。
ついでに先方から「こういうのはどうですか?」と提案もされまして、それが面白い案だったので乗っかることにしました。
投げっぱなしでなく相談しながら進めるっていいですね。
そして数日後。
またも目安通りの日数で、完成したイラストが納品されました。
(納品の際は複数のファイルを送ることができます。背景ありと透過Ver.をくださいました)
何年ぶりだろう……手に入れたよ……藍ちゃんのイラスト……!
これで「ウチノコRection」会場でカードなしの状態を回避できる!
さて、もう一方、つまりサイガのイラストも藍ちゃんと同じく『つなぐ』経由で依頼し、描いていただきました。
お願いした相手は記梦さん(https://x.com/hitchhike_to_42)。
通常の等身のほかにもデフォルメを得意とされている方です。
普段からお忙しい方のようで、やりとりは最低限だったのですが、こちらもトラブルなく納期内にデータをいただくことができました。
なんでデフォルメかっていうと、実は彼については全く別のテイストとなるイラストも同時期に発注していたので、それと差をつけたかったのです。
それが(XやBlueskyで公開していた)彼の出演作の「イメージビジュアル」。
会場設営時にポスターとして掲げることを前提に、大きな一枚絵をお願いできる方も探していたのです。
しかし背景まで含めた絵がどんな感じになるか。TRPGやPBWや配信など、キャラ単体立ち絵の募集が圧倒的に多い中では、良さそうな人を見つけてもちょっと交渉しづらい。
そこでRistaは『つなぐ』に搭載された機能「仕事依頼」を利用しました。
予算や納期などの条件を提示し、「この仕事を引き受けてくださる方」をこちらから募集するというものです。
大型連休前半に書き込んだところ、なんと3日で18件もの応募が。
たくさんのポートフォリオを見比べるだけで連休の後半が溶けました。
募集時に提示した「タイプの違う男女3人の背中合わせ絵」をきちんと描けそうかだけでなく、作品の世界観やキャラクターの特徴に合いそうか、などなど慎重に比較した結果、
比良坂比呂さん(https://x.com/hirasakahir0)さんにお願いしました。
ここだけの話、決め手はこの方が現代系のTRPGの一枚絵をたくさん描いていたこと。
イメージをつかみやすそうだったのです。
そして予想は見事に的中!
素晴らしい武器を手に、会場へと乗り込んだわけです。
いろんな人がいて、いろんな作風があって、いろんな出会いがある。
先ほどの仕事依頼で応募してくださり、今回選ばなかった方(申し訳ない)の中には、別の作品を依頼しようかなと考えている方もいます。
勇気を出して頼んでみて、本当に良かった。