化屋の轍2020、あるいは活動報告のようなもの

この一年何してた？と皆様がTwitter上で振り返っていらっしゃるので、Ristaも少し考えてみたんですが。
結論は「この状況でよく新刊出せましたね」でした。

＜出かけていった記録＞
非常にきりがいい「化屋月華堂20周年」イヤーとして、これまで以上に広く遠く出かけてみるつもりだったのですが……
世の中のごたごたのせいで、結局オフラインのイベントは2月の文学フリマ広島のみとなりました。
初の広島。完全アウェイ。なんなら無配以外ゼロ冊も覚悟していましたとも。
しかし蓋を開けてみれば『DROPOUT』1巻を思った以上に多くの方が手にとってくださいました。今までにない驚きの体験であり、大きな自信につながりました。

しかしその次としてエントリーしていた文フリ大阪は後にキャンセル、テキレボに至っては開催自体できず。
テキレボはオンラインの「EX」に参加したもののドリームにはほど遠い成果でした。
（なおこれを書いている時点で「EX2」が開催中です。お買い物期間は1/11まで。購入ページから「化屋月華堂」で検索をよろしくお願いします）

でも表に出て行く活動が少なかったことを、世の中のせいにはしません。
というか、いろんなことが変わった結果としてひとつ決心し、その実行に時間とお金と他諸々のリソースを取られてしまったのが停滞の多かった最大の理由でした。
それは『引っ越し』。
自宅にして創作活動の拠点を、この夏、思い切って別の場所に移しました。今まで以上に作業へ没頭しやすい環境を手に入れるために。
ストレス要因の軽減という目的は見事達成。
今年に限って言えば原稿や縫い物より本業（交代で在宅勤務になっていた時期があった）や調べ物（これはカフェパの方）で活躍していましたが、来年はもっと活用しようと考えています。

＜ものを書いた記録＞
新刊は3冊。
上述の文学フリマ広島でツイノベ集『ルート140』の5巻、テキレボEX2で同じく6巻。実は同一年に2回出すのは初めて。
そして（大阪行きを諦めていなかった頃に）引っ越しと並行して完成させた『DROPOUT』2巻、こちらは化屋のBOOTHで頒布中ですが、イベント初売りはテキレボEX2となりました。

あと、『300字SSトラベル』アンソロジー企画に、『誰より早く朝を迎えに』という作品を入れていただきました。
タイトルの時点で分かる人には分かる元ネタ。イメージする色合いはあれで間違いないです。

本にしていないものでは、このブログに毎回出している「300字SS」の数々と、ツイノベがたくさん。
そしてテキレボWebアンソロの『双花＆ばけのあわあわアワー！』『前略、額の中より』（このブログの過去記事に解説が出ています）。
完成させたものは鈍器が一冊のほかは字数制限がきっちりあるやつばかりですね（140、300、4000！）。

ごめん、ツイノベ以外の『ストレイトロード』は今年も進まなかった……

＜作った記録＞
『ルート140』5巻表紙の「雨粒を表現したビーズカーテン」。
その新刊をひっさげ広島に行ったとき、藍ちゃん（ぬいぐるみ）に着せていたレインコート。
……あれ、もしかしてそれだけ？

ちなみにテキレボEX2で「テキレボねこマップ！」という企画を主催してまして、そのマップもまあ「作った」に入るのでしょうか。

＜2021年の化屋について＞
目標はあります。
今年作りたくても作れなかった本を一冊でも多く実物にすること。
そして、いろんな「経験」を積むこと。

作りかけもあります。まずはそこから攻略しなければ！

＜お知らせ＞
ここまでどこにも告知していませんでしたが。

化屋月華堂は2021年2月の文学フリマ広島にエントリーしております。

今度こそ、イベント自体が中止になるか身内に何か起きるかでもしない限り、万全に対策した上で参加するつもりでいます。
広島で得たご恩を広島で返すために。
無事に完成した『DROPOUT』2巻と、新しい衣装をまとった藍ちゃんを連れて。

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書き残す：前略、額の中より

テキレボのWebアンソロは「サークルの構成員1名につき2本まで」投稿することができます。
これまで化屋では1本しか出してこなかった（か、投稿諦めて0本だった）のですが、今回初めて2本目の投稿にこぎ着けました。

理由は
「1本目の『双花＆ばけ～』から開催まで間があきすぎて、忘れ去られていそうで不安になった」
「その1本目が“サークル全体の紹介”メインだったので、“頒布する小説がどんな感じの文体なのか”伝わらない構成になっていた」
「突然頭の中に落ちてきたタイトルをきちんと使いたかった」
あたりです。
特に最初の一つ（10/1投稿で10/9公開だった）が念頭にあったのと、実際に文章を書き始めたのがかなり遅かった（締め切りの数日前！）ために、完成もぎりぎりになってしまい。
まさかの「アンソロ募集初日と最終日の投稿」。
で、「どうせ遅刻ならアンソロ公開の最終日にでもなってしまえ！」と半ば投げやりに投稿してました。準備会の皆様ごめんなさい。


さて、ここからは解説という名の釈明を。
ネタバレを含みますので、できれば投稿作を先に読んでいただきたいです。




＞二〇一Ｘ年初夏
まだマスクつけないで催し物に参加できる時期だったことを強調したかったのもありますが。
化屋作品を追いかけてくださっている方はこの書き方でピンときたかもしれません。今回のベース『DROPOUT』の冒頭につながっています。
冒頭と末尾が『ストレイトロード』だった『双花＆ばけ～』とは複数の点で対になるように、プロットの段階から意識していました。

＞天蓋先生
今作のために誕生したキャラです。よって本編には登場しません。時間軸とか接点の問題とか諸々調整が大変そうなので、多分今後も出てきません。
個人的には動かしやすくて気に入っています。既刊のいくつかの人物と重なるところは、いわゆるヘキってやつなのかもしれない。
本編よりはむしろどこかの定期更新ゲームとかTRPGとかに出してあげたいイメージ。（機会があるかは知らない。）

＞筆名
近年の自分にしてはよく考えついたなと思います。一見普通だけど普通じゃない名前。
何しろ自分自身が本を作るときの名義が横文字になったまま換え損ねているくらいなので。
（同人誌作りを始める前の自分に手紙を出せるなら「縦書き対応できる筆名にしないと後々苦労するからよく考えろ」と書きたい。）
できればこの名前の由来にも言及したかったのですが、字数制限に引っかかったのでカットとなりました。ヒントだけ書くと……
・当て字。
・本編の主人公サイガと同じように“下の名前はルビを振らないと正しく読めない”。
・漢字には訓読みと音読みがあります。

＞《ここにあるのはどんな絵だと思う？》
普通に絵を描くだけじゃ物足りなくなった芸術家が人と違うことをしたくなって、見に来た客を巻き込んでみることにした。若さゆえの斬新なようで割とありがちな気がする行動。
ちなみに『DROPOUT』では文章を《　》、主に対面で発せられる話し言葉を「　」、声に出されない声（回想・テレパシーなど）や電話越しの声などを『　』で表現しています。

＞「そう来たか！」
テキレボWebアンソロの各作品ページには簡潔な感想を伝えるためのコメントボタンがあるのですが、その選択肢の一つから着想した場面でした。

＞主に手紙
『双花＆ばけ～』とは違う形の「手紙」をいくつか盛り込むことも、意識した要素のひとつでした。
アンソロテーマを素直に解釈した往復書簡。

＞スタンド花
これもまた広い意味では手紙の一種。もちろん特注品。しかも今ほど柔軟な注文を受けつける時代ではなかったと思います。花屋さんよく無茶振りに答えましたよね。
贈り主は恐らく少しも反省していません。
ちなみに担当のひとは後ずさりしてバランスを崩して尻餅をついたときに腰をやられました。泣いていい。

＞一九九Ｘ年
デビュー年などを書いてないのにここだけ年を指定しているのには理由があります。具体的には、最初の場面と末尾の数字が同じ、という部分に。詳しくは本編で。
ちなみに小説などのテレビドラマ化について否定または嫌悪する意味合いはありません。現実の事件と思わぬ形でリンクしてしまったせいか再放送やDVD発売などが一切なかった某連続ドラマの存在をヒントにしたエピソードです。
ひとしきり騒がれた後、原作本はひっそり書店から消えたはず。担当さんも天蓋先生も泣いていい。

＞新作はＳＦ
あらすじにニヤリとした方もいるかもしれません。『ストレイトロード -the first junction-』またはその試読ページを参照。
多分Ristaはこういう話を書けない。少なくとも重厚なドラマとしての構成はできないと思います。

＞作品タイトル（あるいは空白の絵の題名）
元ネタは一世風靡セピアのヒット曲『前略、道の上より』。天蓋先生や陽介パパはこの曲が流行した頃をリアルタイムで知っているはずの世代。
Ristaは通常「場面」から物語を膨らませるタイプでタイトルには悩む方なのですが、単純にもじっただけのフレーズを内容より先に思いつくというレアなパターン、かつ最後までこの案が消えてくれませんでした。
さすがにそれだけというのも何なので、内容や構成において多少は歌詞（４番まであるってご存じでした？）を意識しています。

＞本編は現代ファンタジーって書いてあるんですが
振り返ってみればその要素が微塵もないですね！
一応「謝らなくていい奴が謝っている」部分が多少は関係しています。
本編はもっと露骨にファンタジーしてますよ。主人公が見えない力で首を締め上げられたり、天使が人間に化けて潜入したり、やばそうな人とバトルしたりしてます。はい。


テキレボEX2、もうすぐお買い物用サイトがオープンします。
化屋月華堂の作品をよろしくお願いします。あと「テキレボねこマップ！」も見てね！
（あっまた猫要素入れるの忘れた！）

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「まぶたを閉じた瞬間に」

Twitter300字SS 第七十一回参加作品

お題「眠る」
ジャンル：オリジナル、とある平凡な日常の話（現代FT長編の番外編）
注意書き：わからないひとにはわからないネタかもしれない

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「こう、目を閉じて一瞬で眠れるってうらやましいよね」
「何だよいきなり」
「最近忙しくなってきたけど、やっぱり睡眠は大切だから。少しでも長く熟睡したいなって」
　確かに実隆（みのる）は塾だ何だと忙しそうにしている。でもそれは高校に入る前からで、今更言うのかとサイガは首をかしげた。
　肩を並べて座って、コントローラーを握って、同じテレビ画面を睨む。これも最近なんてレベルじゃない、何百回と重ねてきた時間。でも昔に比べて頻度は減った。これからも減る一方だろう。
「でもさ、コイツ、そもそもホントに寝てんの？」
「さあ？」
　実隆がボタンを押した。
　画面の中のキャラが目を閉じた瞬間、隣にいたキャラが物凄い勢いで場外へ吹っ飛んでいった。


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遅刻ついでに、先に思いついて先に仕上がらなかったやつも書き切りました。
字下げと改行と名前の読みを除いて300文字。

何の話かというと、スマブラのプリンです。
必殺技のひとつ「ねむる」。発動した瞬間に当てられれば超火力を出せるが外すと自分が無防備になる、という玄人向けの技。というかキャラ自体そういう難しいやつ。
このネタは誰かと被っていてもおかしくない、いやでもこの企画って版権あんまり見ないし……メタネタ的な使い方はさらに見当たらないから、別にいいかな？

プレイヤーは『DROPOUT』の主人公（金髪）とその親友（黒髪眼鏡）。その場には他の友達もいると思うけど文字数足りなかった。
ゼロ年代の男子高校生だったら誰かの家で対戦に燃えてた可能性は大いにあるんじゃないかと思って書きました。西原家にゲーム機なんてないと思うので集まるなら実隆の家一択だったはず。
サイガは何使いなんだろうなあ。

スマブラと『DROPOUT』を両方知っていたら……いや、現代日本を舞台にした創作をしてる方がいたら、たまには「うちの子こんなポケモン持ってそう」じゃなくて「うちの子スマブラでこいつ使ってそう」を考えてみてほしいです。聞きたい。

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「白昼の夢」

Twitter300字SS 第七十一回参加作品

お題「眠る」
ジャンル：オリジナル、とある不思議な世界の話（ハイファンタジー系の）
注意書き：特になし

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「眠れないんです」
　薬屋を訪れた客が今日の当番の薬師へ真剣に訴えている。
　様子を見るだけで何も手助けできないのがもどかしい。受付嬢がしつこく繰り返すので、見習い薬師は彼女の話を聞くことにした。
「どうして自分の状態がわかっていないのでしょう」
　その客には生の息吹も死の気配もない。眠りについた肉体を忘れ、意識だけが無自覚なまま、昼間の世界でうろたえている。
「異変に気づくきっかけになる相手がいないのかも」
「周りが見て見ぬふりを？」
「ううん。誰にも姿が見えてないのを不思議に思わないってこと」
　夢は都合良く色々なことを無視する。
　現実との矛盾を見落とした迷子のために調合する薬は。
「目が覚めるまでが夢なんだってさ」


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薬屋の受付嬢シリーズ（と今は呼ぶことにする）。
字下げや改行はノーカウントで300文字。今回もちょうどのはず。文字数オーバーと戦っていたら微妙に遅刻しました。

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「見せられない」

Twitter300字SS 第七十回参加作品

お題「服」
ジャンル：オリジナル、とある平和な世界の話（単発）
注意書き：特になし

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　娘が人前に姿を見せなくなって一週間。
　部屋から出ない理由を尋ね続けた母に、今日初めて返答があった。
「どれ着てもうまく入らない。こんな格好で外なんて無理」
　すると見守っていた父が珍しく提案した。
「それなら新しいのを買えばいい」
　母が選んできた服をドアの隙間から差し入れてみたが、袖を通す音もなく「これもダメ」と投げ返された。思わず父が怒鳴った。
「礼も言えない娘に育てた覚えはない！」
　強引に開けたドアの奥で娘がうずくまっていた。三角の耳と長い尻尾つきで。
　異変に気づいた父は目を丸くした。
「そういうことなら早く言いなさいよ。隠し方なら教えてあげるから」
　娘を抱きしめる母の足元にも、揺れる尻尾が一本。
　父は卒倒した。


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字下げや改行はノーカウントで300文字（今回もちょうどのはず）。

今回はタイトルとジャンルをどう書くか迷いました。主にオチを踏まえるかどうかで。

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