騒がしそうな休暇

カフェパ話。
23日夜に繰り広げた会話の前日談として。

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「頼むから、向こうではボロを出させるなよ……」
「承知しております」
　ハッサムは隣のラプラスと顔を見合わせると、懇願するマックスをじっと見据え、２匹揃って重々しくうなずいた。

　統轄本部の一員にしてポケモン派遣会社の社長、エリーが短い夏期休暇を使って響音家に泊まると言い出したのはもう先月のことだ。
　招待した琴牙とは愛でるポケモンの趣味が（一部）一致したことで意気投合したという関係だが、エリーは彼自身のことも愛でる対象に入れているらしく、会うたびに窒息寸前に追い込んでいる。だがマックスが心配しているのはそのことではない。もっと深刻な、しかし口に出して忠告するわけにもいかない“面倒な癖”が存在するために、出来ればカフェ関係者の誰とも親しくされたくなかったというのが彼の譲れない本音である。

「大丈夫でしょー。琴牙くん家はポケモンいっぱいいるんだから、片っ端から紹介してもらってもふもふしてくだけで、あっという間に一日が終わっちゃうよ」
　一方、そのエリーに同行するメープルは気楽そうにしている。スターミーの宝石の手入れをしながら鼻歌など歌っていた。
「そうだにゃあ」
　同意の声を上げるのは、椅子に座って毛繕いをしているニャース。こちらはエリーが連れて行くメンバーの１匹だ。
「なでなでが終わったらいっぱいおしゃべりして、きっと本部長の私生活もいっぱい暴露するから、アレのこともきっと忘れてるにゃあ」
「お前今さりげなくやばいこと言わなかったか？」
「写真いっぱい持って行く～、って張り切ってたよね～」
　顔を引きつらせたマックスの足下から、ラクライがのんきな声で追い討ちをかける。
　考えないようにしていた方面の不安から目をそらそうと部屋を見渡せば、こういうときまともにフォローしてくれるニドクインがいない。ブースターと一緒にエリーの仕事に同行していることを数秒後に思い出した。
「……ポケモンの愛で方どうのこうの言ってたのは」
「この前会った時もキュウコンの毛繕いの話は出てたし」
　話題そらしを試みればメタモンのモノムーが先回りして封じ、
「あいつの今日の帰りは何時だったっけ」
「携帯端末もカメラもご自身のお部屋に持ち込まれるかと思いマス」
「部屋に侵入した瞬間に襲われますな、あぁ、間違いない」
　別の試みを探ればドーミラーとマルマインに読まれて警告を返された。
　部屋の隅に鎮座しているメタグロスは無口なので話しかけても無駄だろう。その辺を浮遊しているレアコイルはそもそも言葉が通じない。

　結局マックスは正面からの説得を諦め、口調と内容を変えて宣告した。
「あんまり人のプライベートをネタにするようなら、隠してるアレを全部ネットに流す。後でエリーにそう言っとけ、俺が直接言うよりお前らが言った方がまともに聞くだろ」
「……善処します」
　一斉に凍りついたエリーのポケモンたちを代表し、ハッサムが重々しく頭を下げた。
　メープルとその仲間はそろって首をかしげた。


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エリーの手持ちはハッサムとブースター以外が♀。メープルのは全員が性別不明。
バラエティに富んだ２人＋１２匹がただいま２泊３日の響音家ツアーを満喫中です（…