忍者ブログ
♥ Admin ♥ Write ♥ Res ♥ 
Party Syndromeの現場に踊る足跡の記録。


 188 |  187 |  186 |  185 |  184 |  183 |  182 |  181 |  180 |  179 |  178 |
カフェパ話。
今日は昼間に多少の余裕が出来た。しかし夜は間違いなく時間がとれない。

----------

 彼女が目を覚ますと、そこは自分に宛がわれた部屋だった。

 頭を打ってから丸一日ほど意識が飛んでいたのを知るのは、後で誰かの会話の端々を聞く時になる。
 このときは、まだ単に「目を覚ました」実感しかなかった。また何かの夢を見ていたような気がする。しかし思い出せない。
 思い出そうとする努力も、すぐ隣に生き物の気配を感じ取った瞬間、きれいに吹き飛んでしまった。
『………。』
「………………。」
 その姿を仰ごうにも体が動かない。どこかしびれたような感触に抗ってようやく顔を横へ傾けると、すぐそこに紫色をしたポケモンの体があった。自分の隣で丸くなっているらしいが眠っているのかは分からなかった。
 苦しいとか鬱陶しいとかそんな感情じゃない。
 顔も見えないそいつが今にも襲いかかってきそうに思えて、
 ただ、息が詰まる。



「はーい質問ー。あの子はもう預けたんでしょ、それなのにどうして監視体制ゆるめないの?」
「お前にしちゃいい質問だな」
 半分おどけた調子で片手をまっすぐ挙げたメープルを、マックスは投げやりに評価する。明後日の方向へ向けた目にはどこか疲れがにじんでいた。
「いつ脱走するか、そうでなくても大暴れするか、全然読めないからだ。今のアレは結構短絡的なとこがあるから、変に刺激したら爆発しかねない」
「マルマインみたいに?」
 メープルは比喩からまず連想される名前を率直に口にした。
 余談だが彼女はそのポケモンを手持ちに入れている。何かを思い出すように若干視線をそらしながら、手はポケットの中のモンスターボールに触れていた。
「その爆発じゃねーよ。……まぁいいか。アレは『人を見たら敵と思え』が方針らしくて、基本的に誰にも心を許してない。そこまでは聞いてるよな」
「うん、何度も聞いた」
「だから敵を怒らせないように普段は威嚇程度で、逃げることはあってもいきなり斬りかかりはしない。でも時々急に張り切り出す。島を守るって大義名分を唐突に引っ張り出したり、ロケット団見た途端に目の色変えて襲いかかったりすんだよ」
「人から何か焚きつけられたらしい、っていうのもそれ?」
 説明へさらに問い返す。ハクタイ名物、森のヨウカンを口に入れながら。
「あぁ、祠をぶっ壊した一件か。そうらしいな、言った本人は変に煽るつもりなかったって話だけど」
 マックスもつられてヨウカンに手を伸ばした。思い出すだけで口の中ににじむ苦さをごまかすように。
「でも火がついちゃった?」
「そう。その辺考えるとどうやら、アレは目の前の問題にしか反応できないらしい。冷静さも何もないから後先考えないし、行動も無茶苦茶すぎる」
 次に何を説明するか迷い、ふと、説明相手の口元に目を向けた。
「……ところでお前、それ何本目だ?」
「ん?」
 彼の手元には皿があり、食べやすい大きさに切られたヨウカンがまだ1切れ置いてある。
 一方、メープルはかじりかけのヨウカンを1本、バナナのように包装紙をむいただけの状態で片手に持っていた。手元には未開封のものが数本、中身のなくなった包装と一緒に置いてあるが皿はない。
「まだ2本目だよ? これ本当おいしいよね、5本もらったけど家帰る前に全部食べちゃいそう」
「そうかい。好きにしてくれ……」
 自分が食べたわけでもないのに、マックスは腹が限界までふくれたように錯覚してため息をついた。



 相手はそれまでと変わらぬ態度で接してくる。しかし彼女は格段に口数を減らしていた。食欲は絶食直後ということもあってかなり低下しており、無理に食べさせようとするなら威嚇はしたが、向けるハサミも子供の工作用のそれに近いほど小さくなっている。
 抵抗する気力、あるいは体力がなくなってきた、ととらえる向きもあるだろう。
 しかし実際、彼女は抵抗しないのではなく、抵抗という手段をほとんど忘れていたのだった。頭の中にあるのは怒りでも恨みでも憎しみでもなく、ましてセッティングされた状況の不自然に気づける余裕なんて限りなくゼロに等しい。

 腹を減らした獰猛な野獣に出会ったときのような。
 不幸にもそいつに目をつけられたときのような。
 直接視線を向けられなくても、ただそんなプレッシャーの源がそばにいるというだけで――同じ家の中にいて、しかも自分がベッドから降りられないほど衰弱している状況故に――彼女は何も出来なくなっていた。
 考えることも出来なくなっていた。

 怯える怪物は夜になっても眠りにつくことが出来ず、かえって目は冴える一方だった。
 握り潰されそうな心がようやく睡魔に負けても、見るのは決まって悪夢ばかりで、すぐに跳ね起きては全身の痛みに声もなく悶えることを一晩中繰り返していた。


----------

基本的にほぼリアルタイムで話を進めています。
滞在日の1日目が4/30なので、その後の「day X」は基本的に5月(X-1)日の話です。
今日(10日)の話はレスポンスを待って明日書く。

PL的な思惑は特にない、単に「彼らor彼女が取りうる行動」を出来るだけ忠実になぞっているだけなのに。
どんどん突き進む方向の違いはやっぱりPLの姿勢の違いなんだろうな。
PR
この記事にコメントする
Name
Title
Color
Mail
URL
Comment
Password   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
secret (管理人しか読むことができません)
Copyright(c)  狂宴症候群  All Rights Reserved.
*Material by *MARIA   * Photo by photolibrary   * Template by tsukika

忍者ブログ [PR]
カレンダー
04 2024/05 06
S M T W T F S
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31
プロフィール
HN:
Rista
HP:
性別:
非公開
自己紹介:
化屋月華堂(親サイト)&カフェ「パーティ」(子サイト)管理人。今のところ活動は後者の方が活発。
一応今は社会人なので控えめに動いてるつもりだが、その割に子供じみた言動も多々ある。自覚あり。

ちなみにブログ名は“カフェパにのめり込んで離れられなくなった人”を指す造語に由来。
あなたは大丈夫ですか?
最新コメント
[05/13 Монтаж французского балкона]
[05/01 FlaproDes]
[05/01 PerydeDes]
[05/01 BailakeDes]
[04/19 Ferifaphype]
ブログ内検索