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Party Syndromeの現場に踊る足跡の記録。


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Twitter300字SS 第十三回参加作品
テーマ「お盆」
ジャンル:オリジナル
補足:自創作のスピンオフ、ただし未読でも問題なし

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 冥府の城壁の周囲が無数の胡瓜に包囲されていた。
「お盆は初めて?」
 先輩が呆然とする後輩の肩を叩いた。
 精霊馬という名は新米死神の研修で必ず扱われる話題の一つだ。でも多くはたかが胡瓜と侮り、そして現物を見て驚くという。
「種類は増えたけど数は昔より減ったかな。新暦と旧暦で分かれるし、作る人減ったそうだし」
 魂が形を失い次の生へ至るまでは時間がかかる。その間に未練を解消する手伝い、例えば現世への見送りも死神の仕事だ。
「これから忙しくなるよ」
 馬どころか猛獣、自動車、モーターボート、ロケットまで。勢揃いした乗り物は野菜自体の芸術か、込めた願いの具現化か。
 緑の軍団は祖霊を載せて現世に飛び立つ時を待ちわびている。

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今回はSS企画《俺のグルメFESTIVAL》に飛び込みました。

味覚関係の記憶力が弱い人なので、おいしそうに見えるかどうかは今ひとつ自信がないのですが、何事も練習しないと上達しないそうなので。

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 藍は意気込んでいただろう。
 タルトの飾りつけは完璧。後は表面のキャラメルを軽く炙るだけ。気合いを感じる鼻歌のリズムに合わせ、二つ結いにした髪が揺れた。
 私は手出しを禁じられていたが、バーナーに点火する瞬間だけは心配になって横目で見てしまった。

「どう? わたしだって、これくらいはできるのよ」
 切り分けたタルトを私に差し出す藍は満足げだ。焦がした色に少々ムラはあるが、気にしていないようだ。
 一口分を頂いて、私は笑顔の理由を知った。
 キャラメルに入り込んだ苦味をバナナが打ち消そうと頑張って、それをタルト生地の優しい甘さがフォローしてくれる。
「いつもありがとう」
 勤続半年。令嬢の運転手として初めてのボーナスだった。

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Twitter300字SS 第十二回参加作品
テーマ「願い」

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 商店街の入口で七夕の飾り付けをやっていた。通行人が足を止め、短冊に何か書いては笹に吊していく。
 近所のおばさんに見つかった僕も仕方なく一筆。無難に〈成績上がりますように〉と書いた一枚を枝にかけたら、誰かがささやいた。
「本心じゃないね」
 どうしてわかった。
「気持ちがこもってない。願い事があるなら具体的に書いてよ」
 こんなのただの飾りだ。願っても叶うわけじゃない。
「織女も牽牛も短冊なんか見ないけど、僕らは違う。逢瀬の間の暇つぶしに願い事をついばむのさ。君のも拾うから、ほら早く」
 僕は半信半疑で書き直した。
〈助けてください。家にも学校にも居場所がなくなりました〉

 七夕の夜。
 一人の少年が町から忽然と姿を消した。

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自己紹介:
化屋月華堂(親サイト)&カフェ「パーティ」(子サイト)管理人。今のところ活動は後者の方が活発。
一応今は社会人なので控えめに動いてるつもりだが、その割に子供じみた言動も多々ある。自覚あり。

ちなみにブログ名は“カフェパにのめり込んで離れられなくなった人”を指す造語に由来。
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