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Party Syndromeの現場に踊る足跡の記録。


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Twitter300字SS 第五十三回参加作品

お題「歌」
ジャンル:オリジナル、とある不思議な世界の話
注意書き:特になし

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 太陽の祭りに花を添える楽団が新緑の下で練習に励んでいる。
 その様子を見守っていた近所の住人が、離れた場所で楽器と格闘する小さな団員を見つけた。
「先生、全然音が出ません」
 渦巻き笛を抱えた少年が顔を真っ赤にして息を吹き入れるたび、空腹を知らせるような音が鳴る。植え込みの陰で妖精たちが笑い転げるわけだ。
 付き添っていた先生が優しく諭した。
「いいか、君がこれを鳴らすのではない。この笛が歌いたいように歌わせる。君はその手助けをするだけ」
「知ってるけど」
「相棒を信じて」
 ついでに座る姿勢も直されて、少年は改めて笛に向き合った。さっきより肩の力が抜けている。吹き口をそっとくわえると、カエルの歌声に似た音が響いた。

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ビューティフルハーモニーはこれから作られていく。
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Twitter300字SS 第五十二回参加作品

お題「咲く」
ジャンル:オリジナル、とある日常の話
注意書き:特になし

久々にファンタジーでも何でもないやつです。

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 先週の花見の席で美女を見た。
 昼休みに入った定食屋に若者の集団がいて、目撃談を語り合っていた。桜の下にもすごい花が咲いていた。気持ちは分かるが非常にうるさい。
 気づけば彼らに背を向けて座る同僚の口数が減っていた。迷惑というより、心当たりがありすぎて聞き流せない、そんな顔だ。
「そういやお前も先週花見に行ったって言ってたな。同じ場所?」
「ああ……」
 話を聞く限り、現場はこの辺で一番有名なスポットだ。偶然居合わせてもおかしくはない。
「まさか噂の美女ってお前の知り合い? 元カノ?」
「いや」
 僕らの会話が途切れた後、また大声が響いた。爆笑に紛れるように同僚が呟いた。
「だからそれ、俺……」
 聞かなかったことにしよう。


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最後の一言から書いていくときれいにまとまりますね。
本年もちょっとしたおふざけにおつきあいいただきありがとうございました。
といっても、何のことか分からない方もいらっしゃるでしょうね。

カフェパのエイプリルフールはだいたい「島(物語の舞台)の世界観が変わる」ネタをやるのですが、それに乗っかるかどうかは皆さんにお任せしています。
だとしても、実際にリアクションくれた方の割合が少ないと、やっぱり寂しいものはあります……
去る3月21日、浅草で開催された第8回Text-revolutionsに行ってきました。
なんだかんだ言ってオフラインではこのイベントを軸に動いている気がする化屋月華堂です。
サークル参加の経験を積み重ねて……何年目だっけ?
Twitter300字SS 第五十一回参加作品

お題「薬」
ジャンル:オリジナル、とある不思議な世界の話
注意書き:特になし

先月と同じ子です。だんだんシリーズ化してきましたね。

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 見習い薬師が薬の材料を仕入れに行った。
 下手な地図を頼りになんとか見つけた家で呼び鈴を鳴らすと、弱々しい声が扉越しに聞こえた。
「どうぞ……鍵は開いてます」
 おそるおそる踏み込んだそこは驚くほど普通の民家だった。
 薬草の匂いはなく、テーブルには山ほど積まれた本だけ。若い女がソファの上で本を広げ、膝に置いた広口瓶の中に嗚咽と涙が絶え間なく落ちていた。
「あの、材料を取りに来ました」
「これです……お代はもういただいています」
 女は抱えていた広口瓶を薬師に押しつけた。そして目尻をぬぐうことなく、別の瓶を取って両手で抱えた。

 水妖の女が流す涙は浄化の力を持つという。
 今どきのそれは「泣ける本」によって量産されていた。

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余談。
300文字、の基準をどう取るかは悩むところで、数え方によっても違うんですよね。
自分の場合はWordで書いているので、基本的にはその文字数カウントで取っています。
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プロフィール
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Rista
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性別:
非公開
自己紹介:
化屋月華堂(親サイト)&カフェ「パーティ」(子サイト)管理人。今のところ活動は後者の方が活発。
一応今は社会人なので控えめに動いてるつもりだが、その割に子供じみた言動も多々ある。自覚あり。

ちなみにブログ名は“カフェパにのめり込んで離れられなくなった人”を指す造語に由来。
あなたは大丈夫ですか?
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