「秘密のテキスト」

Twitter300字SS 第六十四回参加作品

お題「書く」
ジャンル：オリジナル、とある不思議な世界の話
注意書き：特になし

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「これ読める？」
見習い薬師が古い本を受付嬢に見せた。飲み薬の作り方が書かれているが、材料の分量が全部塗り潰されていた。これでは正しく作れない。
「皆は患者や症状によって違うからって言うけど、絶対何かおかしいよ」
店主の下で働く薬師たちはレシピを暗記しているという。倉庫の奥でこの本を見つけた見習いだけが、口伝に限る方針は納得できないと息巻いていた。
「問題には原因がある、では？」
受付嬢が店主の口癖を引いてなだめていたら、本人がやってきた。
「それは私の師匠が書いたものです」
「塗りつぶしたのは」
「それも師匠が。なんでも嫉妬した兄弟子がでたらめな内容に書き換えたそうで」
見習いは黙って暗記に励むようになった。


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きっと自分で自分のために書いていく分には問題ないんだよ。

とあるファンタジーな世界の薬屋さん話を久々にひとつ。このTwitter300字SSの中でだけシリーズ化してます。

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「それは確かにきれいなんだけど」

「#ポケ二次お花見会場」用の300字SSです。

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　昨日という日をどう過ごしていたか覚えていない。一日かけて君の特訓につきあったのだけは確かで、下手するとそれ以外何もしていなかったかもしれない。
　何故君がそれを覚えたくなったのか正直よくわからない。確かにマラカッチも覚えるには覚えるけど、もっと実戦に向いた有用な技があるのに。でも夢中で踊る姿が正直楽しそうで、なんとなく口を挟めなかった。
　自転車を飛ばしていつもの練習場へ。既に一匹がフィールドに出ている。その隣にはトレーナーが一人と、スマホロトムが一台。
「お待たせ！」
　待っていたライバルに軽く謝ってからスタンバイ。合図と同時に、相棒をボールの中から解き放った。
　強い日差しの下で勝手に花吹雪が舞い上がった。

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ラテラルタウンの市場にいるマラカッチ可愛いですよね。化屋の売り子にも一匹欲しい。

直前の投稿（Twitter300字SS）とほぼ同じ構図でもう一つ書いてみました。
違いはジャンルが一次か二次か、テーマが「鞄」か「花見」かというだけ。

ところでシェイミがはなふぶきを覚えないことを今更知りました。威力はともかく見た目は似合うのに。

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「舞え、花吹雪」

Twitter300字SS 第六十三回参加作品

お題「鞄」
ジャンル：オリジナル、日常、とある普通の世界の話
注意書き：特になし

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　昨日という日をどう過ごしていたか覚えていない。一日かけて紙を切り刻み続けたことだけは確かで、下手するとそれ以外何もしていなかったかもしれない。
　作ったものをビニールバッグに詰め込んだら満杯になった。それを使い古したエコバッグでくるみ、さらにリュックへ放り込んだ。窓の外で吹き荒れる風がすごすぎて、そこまでしないと中身を守れそうになかった。
　自転車を飛ばして母校の体育館へ。既に一人が舞台に上がっている。その正面には三脚付きのカメラが一台と、扇風機が一台。
「お待たせ！」
　待っていた仲間に軽く謝ってからスタンバイ。合図と同時に、昨日の成果を扇風機の前に解き放った。
　卒業を祝う歌に合わせて紙吹雪が舞い上がった。

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時事的などうこうではなく、ただ青春の一コマを描きたかっただけ。
動画投稿サイトやライブ配信サービスの使い方もどんどん広がってきていますが、仲間内にしか見せないものかもしれない。


余談。
コメントするタイミングを見失ってた件をひとつ。
前作「分け合う問題」の答えは「１６」。言及いただいた数名の方、正解です。

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「分け合う問題」

Twitter300字SS 第六十二回参加作品

お題「余り」
ジャンル：オリジナル、日常、とある普通の世界の話
注意書き：特になし

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　いつもケンカばかりの兄弟が今日は一時休戦。大好きなママの誕生日をお祝いしたい。ママの大好物を二人だけで買いに行ったら、肉屋のおばちゃんも笑顔になった。
「えらいねえ。特製唐揚げ、おまけしてあげる」
　ご機嫌でおうちに帰った兄弟だけど、夕飯の支度で問題発生。
　肝心の唐揚げをうまく分けられない。二人とママのお皿に同じ数だけ並べてみたら、一つ余ってしまった。
「ママが買うときはぴったりなのに」
「じゃあぼくが食べる」
「ずるい！」
「いたい！」
　取っ組み合いが始まったところで、ママが仕事から帰ってきた。そして二人の話を聞くと、唐揚げを何個か別のお皿に移した。
「はい、パパの分。これでぴったり同じね、二人ともありがとう」

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具体的な数を入れずに書いたら、算数の問題みたいな話になってしまいました。
そして本当にこの話が成り立つのか自分で気になって計算を始めてしまった……そういう意図はなかったのに……

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「あのときのように」

Twitter300字SS 第六十一回参加作品
※2/1開催分の再掲です。（当時は忍者ブログがメンテナンス中で投稿できなかった）

#Twitter300字ss @Tw300ss
第六十一回「包む」
タイトル：あのときのように
ある日常/注意書きなし/残念ながらフィクションです

いつものブログがメンテ続いてて書き込めないので（閲覧はできる）別の形式でまとめました。 pic.twitter.com/yWwAJVAvQ9

— Rista(化屋月華堂) (@Rista_Bakeya) February 1, 2020

　我が家に初めての猫がやってきた頃、ちょうど隣の家が建て替え工事をしていた。
　昼になるたび壁を壊す重機の音がこちら側の窓や壁をも揺らす。手のひらサイズの仔猫にはきっと世界を揺るがす衝撃だったに違いない。いつも酷くおびえて鳴き続けるから、そのたびに私は猫を毛布に包み、優しく抱きしめて、小さな心臓をなだめ続けた。
　そうして時は過ぎ、工事が終わる頃、猫はすっかり我が家の王様になっていた。
　家中どこでも我が物顔で歩くし、あらゆる手段でわがままを通す。そして甘えたいときには決まって、どこからか毛布を咥えて持ってくる。仔猫のときのように包んでくれるまで、私の足下につきまとって、不安そうな声音で鳴き続けるのだった。