書き残す：未来の私へ

ようやくというか遅すぎる感じがありますが、今年3月の第3回テキレボにて無料配布しました300字SSポストカード「未来の私へ」について、ネタばらしと裏話をここに置きます。

以下、ネタバレを含みます。
ちょっとした「謎」を仕込んだ作品なので、できればWeb公開中の作品を一度読んでいただくか、お持ちの方は現物を引っ張り出していただいて、一度悩んでからお読みください。

段階を追って説明しますので、スクロールのしすぎにご注意ください。


[1. 作品自体の話と内容について]
基本的には、テーマ「手紙」に沿って一から考えたストーリー。他の作品とのリンクはない単体の話です。
学校で友達とこっそり手紙を交換したり回したり、そういうことをやったなという思い出（なお自分がもらうケースはまれでほとんどは傍観）がベースになっていたかと思います。
登場人物は主人公の女性とその母親のみ。300字で説明しきらないといけないので極力削りました。
このフォーマットの場合は「一人称」「二人の話」「三段落」が一番書きやすいですね。（個人的な感想です）


[2. デザイン]
さて、画像（または現物）を見ていただくとわかりますが、この作品はイラストなしのシンプルな構成にしています。
残念ながら「人物」の絵がそんなにうまくないので、他のカードも背景っぽいフレームとか切り絵風アイテムだけとかピクトグラムっぽいのとか、だいたい他の手段で飾っています。

さて、「未来の私へ」の主題は「友達と作った秘密の暗号文」ということで、それっぽい文字をちりばめたフレームを作成しました。
あくまでデザインとして作るので、色やフォントを工夫し、本文の邪魔をしないような形へまとめました。
残念ながらWebに掲載されたものより印刷したポストカードの方が小さなサイズで、色味も少し異なります。
ちょっと薄いのと文字が小さいので読みづらかったかもしれないですね。

そしてWeb公開時にお気づきの方も何人かいらっしゃったようですが……これ、実際に「暗号文」になっております。
その解き方と答えをこれからご紹介します。

気づかなかった、自力で解いてみたい、という方はこの記事を読むのを一度止めて、チャレンジしてみてください。
そして続きをちょっとずつ読んで、答え合わせをしてみてください。



[3. フレームの秘密]

(1)文字
デザインっぽくするためのフリーフォントをいろいろ探して回り、最終的には「FF Clip Regular」という欧文フォントを使用しました。
配布ページでアルファベットを順に並べてありますので、読めなかった文字はここで探してみてください。


読めましたでしょうか？
左上から時計回りに並べると以下のようになります。
ちなみにこの段階でちょうど300文字です。

fe:e<noek0qd^>bkwt@[e-mail]4bsf<ejw@mbkvnzkmd@_9/.yq@
>4;deu>jyt@tiu.8/ftuejdqt>c;sm69/xytu>ejk0qdf5_thkt@swmqkdhwq@ergw@
r>jyt@_9]kmq@ergw@r>mdjyt@
_4jht:uhwmutuew@,>ejk0qd9ld@)4r@q@to>0qdksmq@asfejmut9dw@
rt>0qdfhorsd@(hiqhxysmq@at@ejr>noek0qdimqhxysmq@ae.9,>
3srwgut;dmma\ye.9,>qkdnw@r>d@(4,yj5k0qd9l


(2)変換
使われている文字に偏りがあること、特に「@」が多いことにお気づきでしょうか。
Web公開時に指摘されている方もいましたね。

「10年前の小学生が考えそうな暗号」ということで、パソコンの日本語キーボードを対応表代わりに使用して、ひらがなをアルファベットに置き換えるという方法を使いました。
インターネット歴が長い方は聞いたことがあるかと思います。いわゆる「みかか」方式です。

カナ入力モードに設定した状態でローマ字入力のタイピングをすると、一見でたらめな内容が出てきます。（逆もまたしかり。）
そして復元は逆の手順で行うのです。

復元を試してみたい方はキーボードをカナ入力モードに設定して、上記の「暗号文」を書いてみてください。


(3)補正
みかかには見破られやすいこと以外にも一つ欠点があります。一部の文字を直接変換できないことです。

自力で入力、あるいは変換ツールにかけてみると、対応する文字が出てこないところが何カ所かあるはずです。
文章を読めば内容から推測できるかもしれませんが、一応補足します。

「_」（アンダーバー）はキーボード右下のキーをShiftと同時押しで入力しますが、ここにはカナ入力用のひらがなや記号が割り当てられていません。
一方、逆にカナがあって英字入力の方に文字・記号がないキーも1つだけあります。最上段の右側、「わ」「０」とセットになった「を」です。

今回の暗号文ではこの関係を利用し、足りないキーを補っています。
置き換えてみてください。


(4)答え
2,3の手順に沿って変換すると、以下の文章になります。

はいけい、みらいのわたしへ。
このてがみをよんでいるということは、いまでもこのひみつのもじをよめるんだ。
うれしいな。
まんがかになるゆめはかないましたか。
それともおよめさんかな。
いまのわたしはえをかくのがとてもたのしくてだいすきです。
まんがをよむのもだいすきです。
もしまんがをうまくかけなくてもなかないでね。
いまのわたしよりじょうずだから。
わたしのともだちとはいまもなかよしですか。
わたしはくらすとじゅくにたくさんともだちがいます。
みらいのわたしにもたくさんともだちいるよね。
あとすてきなかれしももちろんいるよね。
たのしみです。
じゅうねんまえのわたしより


……この「手紙」こそがタイトルの由来です。

「イタい」という感情にのたうち回った主人公が仮に解読法を思い出す、あるいは再発見するとしても、その内容がダメ押しの一撃を食らわせる。
オヨメサンになるどころかステキナカレシもいなかったら余計に。
ああ、イタい。


いかがでしたでしょうか。
次に同じ企画へ参加するのはいつになるかわかりませんが、内容だけではとても先輩方にはかなわないので、今後も違ったアプローチをいろいろ考えたいと思います。