Party Syndromeの現場に踊る足跡の記録。
カフェパ話。このタイトルでやるのは実に3年ぶり。
たいしたネタもないのに突発的に書きたくなって、メモ帳を開いてから考えた。
だからこの話自体に重要な意味があるわけではない。
強いて言うなら、再確認。
たいしたネタもないのに突発的に書きたくなって、メモ帳を開いてから考えた。
だからこの話自体に重要な意味があるわけではない。
強いて言うなら、再確認。
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厚い雲が風に乗って流されていくと、朝の日差しがダイニングテーブルに差し込んだ。
一つの例外もなくぴかぴかに磨かれた食器、ガラス細工風の模様が刻まれたプラスチックのグラス、ハバンの実を煮詰めたジャムをたっぷり塗ったトースト、どれもがきらきらと輝いて見える。
テーブルを囲む面々はおのおののペースで朝食を口に運ぶ。食卓に響くのは、食器が軽くぶつかる音や控えめな咀嚼音。そして静かな吐息。
その風景は一見すると実に平穏で、しかし、とても穏やかな空気とは言い難かった。
あまりにも静かすぎる。
気味が悪いとさえ感じるほどに。
「みんな……最近、何かあったの?」
おそるおそる切り出したのは、洗いざらしの白いパーカーを着た、食卓の中心に座る少年――シェイドである。
同居人たちの中心でもある彼はトレーナー修行の旅を一時中断してハクタイへ帰郷していたのだが、ちょうど昨夜着いたばかりで、この家の今の同居人たちとともに食事を取るのはこの朝が初めてだった。ここまでの滞在時間は当然まだ短く、彼が旅をしていた間にこの家で起きた事は一切聞かされていない。自分が知らない空白の時間を原因として疑うのはごく自然な流れといえた。
「別に。何もねーよ」
左隣に座るマックスが素っ気ない一言で答えた。
「なんにもないの?」
「そう、なんにもない。取り立てて人に話すような話題もないからみんな黙ってる。それだけだ」
「……そっか」
シェイドの声色が沈んだ。
ようやく何かを思い出したマックスが、今度は逆に尋ねる。
「そういうお前はどうなんだよ。ジョウトのリーグ、挑戦したんだろ?」
「あ……うん。初戦で負けちゃったけどね」
そうしてシェイドだけが食事の手を止めて話し始めた。
敗北はしたが健闘したポケモンたちのこと。
対戦相手が見せた見事なコンビネーション技のこと。
旅先で出会ったライバルたちのこと。
各地のジムリーダーとの勝負から学んだこと。
彼らが現在暮らす世界へ引っ越してきたのは、今からおよそ4年と少し前。
シェイドは過去を捨てるため、それまでの人生の約半分にも及ぶ時間を“リセット”され、普通の少年として再出発した。守られる対象でしかなかった世間知らずの孤独な男は、その後改めて積み重ねた時間の分だけ成長し、ポケモンリーグの門を叩くほどの立派なポケモントレーナーに成長していた。
もっとも、頂点に立つにはまだまだ程遠いレベルだというのが一般的な評価であるが。
彼自身は評価とか結果とかいったものをあまり気にしていないようだった。
手持ちのポケモン1匹1匹について饒舌に語る姿は間違いなく、この場にいる誰よりも輝き、過去のどの時点よりも希望に満ちている。
いつしか誰もがフォークを持つ手を止めていた。
彼の過去を知る人々が思い浮かべていた未来をはるかに上回る物語、幸せにあふれた語り口に聞き入っていた。
「みんな……本当に、どうしたの?」
旅の最初の相棒フワンテの話をしている途中、ふと、シェイドが話を止めた。
一向に口を挟まれないことに違和感を覚えたのか目を丸くして、左右や向かいの顔を交互に不規則に見る。
「いえ、何でもないですよ」
右隣のアルビレオの苦笑いが返答の代表になった。テーブルの反対側はというと、向かって左側のエリーは相づちを打つだけ、正面のニーナは固まっている。右側のラキスは仮面をつけたままなので表情が分からない。そのさらに隣、テーブルの端に座る京は一人だけ黙々と食事を再開していた。
ニーナの背後ではポケモンたちが車座になってそれぞれの食事を取っている。顔は見えず、誰も鳴き声を立てていないが、何匹かの耳が一様にぴんと立っているのはよく見えた。
「話を聞くのに夢中になりすぎてました。続きをどうぞ。フワンテの話でしたよね」
「……う、うん」
先ほど言いかけていたはずの言葉を頭の中から拾い上げ、再び思い出語りが始まる。
相づちは無言のうなずきではなくなり、問いかけの言葉も出るようになったが、奇妙な空気は相変わらずテーブルの周辺を離れず漂っていた。
あまりにも静かすぎる。
気まずい、という表現を思い出すまでには、しばしの時間を要した。
----------
10分後。
朝食を終えて自分の皿を下げた後、シェイドは手持ちのポケモンたちをモンスターボールに回収し、キッチンを後にした。
自分の部屋がある2階への階段を上るつもりだったが、その前に通った洗面所から人の気配を感じて足を止める。錯覚ではなかった。ドアの向こうに衣擦れのようなかすかな音が聞こえる。
(誰だろう……?)
息を呑み、おそるおそるドアを開けて中をのぞき込むと、黄金色の目がシェイドを見下ろしていた。
「…………えっ」
「お前が考えていることは杞憂だ」
サーリグは一言――本来あるべき質問や前置きをすべて省き――ストレートに言い放った。
その後は何も続けず、洗面台の鏡へと視線を移す。特注の黒服ではなく普通のTシャツ、長い髪をバスタオルでぬぐっているという、シェイドの思い出に刻まれた彼からは想像できないような姿だったが、下ろした前髪の下でぎらつく眼光だけはまさしく覚えている通りのものだ。
そういえば朝食の席は一つだけ空いていた。ポケモンは揃っていたけど誰か足りない、とだけ感じながらその先が分からなかったことを、今更になって思い出す。
「な……何の、話?」
「今の今まで思い悩んでいただろう。それは忘れろ。奴等は誰も、お前一人に隠し事はしていない」
どきっとした。
自分自身でも頬の筋肉の引きつりに気づいてしまうくらい、シェイドの顔はこわばっていた。緊張をやわらげようと頭では思っても体が思うように動かない。
「……ど、どうして」
「何も考えるな」
背筋が凍った。
この男と目を合わせて話すとどういうことになるか――思い出したときにはもう、体の震えが止まらなくなっていた。いてもたってもいられず、何も悪いことはしていないのに「ごめん」と呟いて洗面所を飛び出す。何故そんなことをしたのか、ドアを閉めてそのまま背中を預け、深い深い一息を吐き出す間に、もう思い出せなくなっていた。
……“お前一人に”?
後になってその発言が気になり出したが、もう一度振り返って尋ね直そうとはとても思えなかった。
----------
ようやく自室に戻ったシェイドがベッドに倒れ込むと、そのはずみで腰のベルトからモンスターボールが1個だけ外れ、シーツの上を転がって床に落ちた。
床板がボタンを押した。
反動で大きく弾んだボールが軽快な音を立てて開き、白い光を外の空間へと放り出す。出てきたのはルージュラ。ジョウトの旅で出会い、リーグの初戦を共に戦った仲間だ。
『さっきのは気にしなくていいのよ』
ルージュラはテレパシーで語りかけながら、シェイドの頬をゆっくりと撫でた。シェイドも寝転がったまま、ようやく震えが収まった手を伸ばし、ルージュラのきれいな金髪に触れる。
「……聞いてたの?」
『聞こえちゃったの。さっきの怖そうな人が言ってたことも、あなたは気にしなくていいから』
「気にしない……か」
『みんなそれぞれ、何かしらあるんでしょうけど。今はそっとしときましょ』
彼女は全部知っていた。
テレパシーで感じ取って。誰かの小声を聞き取って。朝食の席でポケモンたちから教えられて。
たとえば、懸命に広げている事業が行き詰まりかけてきたこと。
たとえば、自分の身に起きている異変に気づいてしまったこと。
たとえば、仲間の危機を救えない無力さに打ちひしがれたこと。
たとえば、他の同居人が抱えている悩みを知ってしまったこと。
たとえば、自分たちが目指そうとしてきた未来を見失ったこと。
知っているが、教えはしない。
彼女のトレーナーが本当のことを知るなら、それは本人の口から直接語られるときでいい。
『それに、朝ごはんが終わる頃にはみんな、最初よりは少しいい顔をしてたのよ』
「え、そうなの?」
『そうよ? きっとあなたの元気がうつったのね。嬉しい気持ちは自然と広がるもの。だからあなたがいつも通り振る舞ってれば、夕ごはんの頃にはもっと明るい空気になってるんじゃない?』
自信を持ってうなずく仲間に、シェイドは不思議そうな顔をした。本人が一番理解していないという状況がおかしいのか、ルージュラはくすくすと笑い、疑問の視線を向けられればごまかすように腰を振って踊り出す。
『それにしても、個性的な人たちね。シェイドの家族って』
「そ、そうだね」
話題そらしの発言にあっさりつられ、少年は苦笑いを浮かべる。
確かに誰を見ても個性は強い。強すぎる。それは外見だけでも際立っているのに、まさかその中でまともな“人間”が彼自身の他に一人しかいないなんて、いったい誰が信じるだろう。
『どんな人たちなのか、後で教えてくれる? 他の仲間たちも興味津々なの』
「いいよ。でも……その前に、新しい技の練習しようよ。どうせならここにいる間に完成させて、みんなに見せたいんだ」
シェイドはようやくベッドから起き上がった。
ベッドの脇に転がったモンスターボールを拾い上げると、ついでにベルトに装着していた5つも全部両手に持って、部屋を飛び出していった。
厚い雲が風に乗って流れていく中、朝の日差しが窓ガラスを通してカーテンを輝かせる。
窓の外の風景は実に平穏で、ポケモンたちと一緒に外で走り回るにはもってこいの天気だった。
--------------------
人と関わってこそのPBCである。
自分の満足しか満たさない設定はただの記号にしかならない。
でも、何も掘り下げておかないまま成り行き任せにしても、薄っぺらい振る舞いしか出来ないんだよね。
演じ手の心がちゃんと入ってないと彼らはうまく動いてくれないんだ。
最初に書いた通り、特に深い意味のある話ではない。つまり何のフラグでもない。はず。
それにしても相変わらず変な連中ばかりが自分の手元にはそろっている。
あらゆる問題の元凶だったはずの彼が今や一番前向きで明るい存在になってるって、何がどう転ぶか分からないね……
余談1。
前半は数時間で。後半は結局10日ほどかかった。
書いてる途中にいくつか思わぬ出来事に遭遇して、気分が落ち込んで行き詰まったけど、何とか仕上げた。
余談2。
第二段落について、当初は浴室のガラス越しの会話を考えていた。
しかし、エリーならまだしも奴がシャワー浴びてる場面を描写したところで、絵にならないどころか誰が面白がるんだと自分で疑問に思えたので没にした。
健全な青少年がハプニングに遭遇した際のうろたえようを健全なタッチで描く練習も時には必要かな、と何となく思っている。
自分が扱える表現の幅は広い方がいいよね。
厚い雲が風に乗って流されていくと、朝の日差しがダイニングテーブルに差し込んだ。
一つの例外もなくぴかぴかに磨かれた食器、ガラス細工風の模様が刻まれたプラスチックのグラス、ハバンの実を煮詰めたジャムをたっぷり塗ったトースト、どれもがきらきらと輝いて見える。
テーブルを囲む面々はおのおののペースで朝食を口に運ぶ。食卓に響くのは、食器が軽くぶつかる音や控えめな咀嚼音。そして静かな吐息。
その風景は一見すると実に平穏で、しかし、とても穏やかな空気とは言い難かった。
あまりにも静かすぎる。
気味が悪いとさえ感じるほどに。
「みんな……最近、何かあったの?」
おそるおそる切り出したのは、洗いざらしの白いパーカーを着た、食卓の中心に座る少年――シェイドである。
同居人たちの中心でもある彼はトレーナー修行の旅を一時中断してハクタイへ帰郷していたのだが、ちょうど昨夜着いたばかりで、この家の今の同居人たちとともに食事を取るのはこの朝が初めてだった。ここまでの滞在時間は当然まだ短く、彼が旅をしていた間にこの家で起きた事は一切聞かされていない。自分が知らない空白の時間を原因として疑うのはごく自然な流れといえた。
「別に。何もねーよ」
左隣に座るマックスが素っ気ない一言で答えた。
「なんにもないの?」
「そう、なんにもない。取り立てて人に話すような話題もないからみんな黙ってる。それだけだ」
「……そっか」
シェイドの声色が沈んだ。
ようやく何かを思い出したマックスが、今度は逆に尋ねる。
「そういうお前はどうなんだよ。ジョウトのリーグ、挑戦したんだろ?」
「あ……うん。初戦で負けちゃったけどね」
そうしてシェイドだけが食事の手を止めて話し始めた。
敗北はしたが健闘したポケモンたちのこと。
対戦相手が見せた見事なコンビネーション技のこと。
旅先で出会ったライバルたちのこと。
各地のジムリーダーとの勝負から学んだこと。
彼らが現在暮らす世界へ引っ越してきたのは、今からおよそ4年と少し前。
シェイドは過去を捨てるため、それまでの人生の約半分にも及ぶ時間を“リセット”され、普通の少年として再出発した。守られる対象でしかなかった世間知らずの孤独な男は、その後改めて積み重ねた時間の分だけ成長し、ポケモンリーグの門を叩くほどの立派なポケモントレーナーに成長していた。
もっとも、頂点に立つにはまだまだ程遠いレベルだというのが一般的な評価であるが。
彼自身は評価とか結果とかいったものをあまり気にしていないようだった。
手持ちのポケモン1匹1匹について饒舌に語る姿は間違いなく、この場にいる誰よりも輝き、過去のどの時点よりも希望に満ちている。
いつしか誰もがフォークを持つ手を止めていた。
彼の過去を知る人々が思い浮かべていた未来をはるかに上回る物語、幸せにあふれた語り口に聞き入っていた。
「みんな……本当に、どうしたの?」
旅の最初の相棒フワンテの話をしている途中、ふと、シェイドが話を止めた。
一向に口を挟まれないことに違和感を覚えたのか目を丸くして、左右や向かいの顔を交互に不規則に見る。
「いえ、何でもないですよ」
右隣のアルビレオの苦笑いが返答の代表になった。テーブルの反対側はというと、向かって左側のエリーは相づちを打つだけ、正面のニーナは固まっている。右側のラキスは仮面をつけたままなので表情が分からない。そのさらに隣、テーブルの端に座る京は一人だけ黙々と食事を再開していた。
ニーナの背後ではポケモンたちが車座になってそれぞれの食事を取っている。顔は見えず、誰も鳴き声を立てていないが、何匹かの耳が一様にぴんと立っているのはよく見えた。
「話を聞くのに夢中になりすぎてました。続きをどうぞ。フワンテの話でしたよね」
「……う、うん」
先ほど言いかけていたはずの言葉を頭の中から拾い上げ、再び思い出語りが始まる。
相づちは無言のうなずきではなくなり、問いかけの言葉も出るようになったが、奇妙な空気は相変わらずテーブルの周辺を離れず漂っていた。
あまりにも静かすぎる。
気まずい、という表現を思い出すまでには、しばしの時間を要した。
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10分後。
朝食を終えて自分の皿を下げた後、シェイドは手持ちのポケモンたちをモンスターボールに回収し、キッチンを後にした。
自分の部屋がある2階への階段を上るつもりだったが、その前に通った洗面所から人の気配を感じて足を止める。錯覚ではなかった。ドアの向こうに衣擦れのようなかすかな音が聞こえる。
(誰だろう……?)
息を呑み、おそるおそるドアを開けて中をのぞき込むと、黄金色の目がシェイドを見下ろしていた。
「…………えっ」
「お前が考えていることは杞憂だ」
サーリグは一言――本来あるべき質問や前置きをすべて省き――ストレートに言い放った。
その後は何も続けず、洗面台の鏡へと視線を移す。特注の黒服ではなく普通のTシャツ、長い髪をバスタオルでぬぐっているという、シェイドの思い出に刻まれた彼からは想像できないような姿だったが、下ろした前髪の下でぎらつく眼光だけはまさしく覚えている通りのものだ。
そういえば朝食の席は一つだけ空いていた。ポケモンは揃っていたけど誰か足りない、とだけ感じながらその先が分からなかったことを、今更になって思い出す。
「な……何の、話?」
「今の今まで思い悩んでいただろう。それは忘れろ。奴等は誰も、お前一人に隠し事はしていない」
どきっとした。
自分自身でも頬の筋肉の引きつりに気づいてしまうくらい、シェイドの顔はこわばっていた。緊張をやわらげようと頭では思っても体が思うように動かない。
「……ど、どうして」
「何も考えるな」
背筋が凍った。
この男と目を合わせて話すとどういうことになるか――思い出したときにはもう、体の震えが止まらなくなっていた。いてもたってもいられず、何も悪いことはしていないのに「ごめん」と呟いて洗面所を飛び出す。何故そんなことをしたのか、ドアを閉めてそのまま背中を預け、深い深い一息を吐き出す間に、もう思い出せなくなっていた。
……“お前一人に”?
後になってその発言が気になり出したが、もう一度振り返って尋ね直そうとはとても思えなかった。
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ようやく自室に戻ったシェイドがベッドに倒れ込むと、そのはずみで腰のベルトからモンスターボールが1個だけ外れ、シーツの上を転がって床に落ちた。
床板がボタンを押した。
反動で大きく弾んだボールが軽快な音を立てて開き、白い光を外の空間へと放り出す。出てきたのはルージュラ。ジョウトの旅で出会い、リーグの初戦を共に戦った仲間だ。
『さっきのは気にしなくていいのよ』
ルージュラはテレパシーで語りかけながら、シェイドの頬をゆっくりと撫でた。シェイドも寝転がったまま、ようやく震えが収まった手を伸ばし、ルージュラのきれいな金髪に触れる。
「……聞いてたの?」
『聞こえちゃったの。さっきの怖そうな人が言ってたことも、あなたは気にしなくていいから』
「気にしない……か」
『みんなそれぞれ、何かしらあるんでしょうけど。今はそっとしときましょ』
彼女は全部知っていた。
テレパシーで感じ取って。誰かの小声を聞き取って。朝食の席でポケモンたちから教えられて。
たとえば、懸命に広げている事業が行き詰まりかけてきたこと。
たとえば、自分の身に起きている異変に気づいてしまったこと。
たとえば、仲間の危機を救えない無力さに打ちひしがれたこと。
たとえば、他の同居人が抱えている悩みを知ってしまったこと。
たとえば、自分たちが目指そうとしてきた未来を見失ったこと。
知っているが、教えはしない。
彼女のトレーナーが本当のことを知るなら、それは本人の口から直接語られるときでいい。
『それに、朝ごはんが終わる頃にはみんな、最初よりは少しいい顔をしてたのよ』
「え、そうなの?」
『そうよ? きっとあなたの元気がうつったのね。嬉しい気持ちは自然と広がるもの。だからあなたがいつも通り振る舞ってれば、夕ごはんの頃にはもっと明るい空気になってるんじゃない?』
自信を持ってうなずく仲間に、シェイドは不思議そうな顔をした。本人が一番理解していないという状況がおかしいのか、ルージュラはくすくすと笑い、疑問の視線を向けられればごまかすように腰を振って踊り出す。
『それにしても、個性的な人たちね。シェイドの家族って』
「そ、そうだね」
話題そらしの発言にあっさりつられ、少年は苦笑いを浮かべる。
確かに誰を見ても個性は強い。強すぎる。それは外見だけでも際立っているのに、まさかその中でまともな“人間”が彼自身の他に一人しかいないなんて、いったい誰が信じるだろう。
『どんな人たちなのか、後で教えてくれる? 他の仲間たちも興味津々なの』
「いいよ。でも……その前に、新しい技の練習しようよ。どうせならここにいる間に完成させて、みんなに見せたいんだ」
シェイドはようやくベッドから起き上がった。
ベッドの脇に転がったモンスターボールを拾い上げると、ついでにベルトに装着していた5つも全部両手に持って、部屋を飛び出していった。
厚い雲が風に乗って流れていく中、朝の日差しが窓ガラスを通してカーテンを輝かせる。
窓の外の風景は実に平穏で、ポケモンたちと一緒に外で走り回るにはもってこいの天気だった。
--------------------
人と関わってこそのPBCである。
自分の満足しか満たさない設定はただの記号にしかならない。
でも、何も掘り下げておかないまま成り行き任せにしても、薄っぺらい振る舞いしか出来ないんだよね。
演じ手の心がちゃんと入ってないと彼らはうまく動いてくれないんだ。
最初に書いた通り、特に深い意味のある話ではない。つまり何のフラグでもない。はず。
それにしても相変わらず変な連中ばかりが自分の手元にはそろっている。
あらゆる問題の元凶だったはずの彼が今や一番前向きで明るい存在になってるって、何がどう転ぶか分からないね……
余談1。
前半は数時間で。後半は結局10日ほどかかった。
書いてる途中にいくつか思わぬ出来事に遭遇して、気分が落ち込んで行き詰まったけど、何とか仕上げた。
余談2。
第二段落について、当初は浴室のガラス越しの会話を考えていた。
しかし、エリーならまだしも奴がシャワー浴びてる場面を描写したところで、絵にならないどころか誰が面白がるんだと自分で疑問に思えたので没にした。
健全な青少年がハプニングに遭遇した際のうろたえようを健全なタッチで描く練習も時には必要かな、と何となく思っている。
自分が扱える表現の幅は広い方がいいよね。
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HN:
Rista
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非公開
自己紹介:
化屋月華堂(親サイト)&カフェ「パーティ」(子サイト)管理人。今のところ活動は後者の方が活発。
一応今は社会人なので控えめに動いてるつもりだが、その割に子供じみた言動も多々ある。自覚あり。
ちなみにブログ名は“カフェパにのめり込んで離れられなくなった人”を指す造語に由来。
あなたは大丈夫ですか?
一応今は社会人なので控えめに動いてるつもりだが、その割に子供じみた言動も多々ある。自覚あり。
ちなみにブログ名は“カフェパにのめり込んで離れられなくなった人”を指す造語に由来。
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