Party Syndromeの現場に踊る足跡の記録。
カフェパ話、2日連続でなんていつ以来だ。
しかも2日分の投稿でブログの最新記事が埋まるってどういうこと。
しかも2日分の投稿でブログの最新記事が埋まるってどういうこと。
※ついでなので昨日の分はもうSS専用ページに放り込んだ。資料集もそろそろ更新しようか。
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すべてを既に失っている者に、失うことの悲しみを“思い出させる”ことは容易に出来るだろう。
しかし、何かを失ってまで奪おうとする空しさを分からせるのは、とても難しい。
『先に言っておくと、僕らは今回、一切手伝う気ないから』
2日前。島の東を流れる川で1個のタマゴが置き去りにされているのを通りかかったプルリルの姉弟が見つけ、届ける先が他にないからとカフェに運び込んだ。
彼らが川を訪れる前からタマゴの遺棄を、そしてその犯人を特定していた幽霊は、タマゴの出自やある程度のいきさつを知るポケモンたちに要約した情報を伝えてやった。知っていたなら何故保護しなかった、と反論されれば幽霊は平然と、
『捨てた本人が思い直して戻ってくるかもしれないじゃない。まずは信じてあげないと』
などと答えてみせる。
『それに、過去の事件のことで僕らは彼女の恨みを買っている。直接関わったって、火に油を注ぐだけでしょ?』
仕方なく、情報を受け取ったポケモンの1匹が代表してタマゴの様子を見に行った。
そして数時間後、紆余曲折を経て別のトレーナーへ預けられたという続報だけを持ち帰ってきた。
幽霊がついでのように発した、配慮なのだろうがただの敬遠にも聞こえる一言は聞き流されていたが、丸一日後に衝撃を伴って関係者の脳裏へ舞い戻ってきた。
聞けばタマゴの落とし主、何とかしたくてもうかつに手出しできない問題の「彼女」が、逆恨みの相手の何人かを見つけて襲いかかったのだという。入ってくる情報は負傷者が無いこと(その時点では大きな被害が出ていなかった)だけで、具体的に何が彼女の理性を吹き飛ばしたのかは分からない。現場を確かめ詳しい状況を把握するため、そして前夜のタマゴについてトレーナーと改めて協議するため、同じポケモンが再び代表者として森を走った。
情報通りに彼女は暴れていて、情報になかったが推測していた通り、まともな会話が成り立たないほど怒り狂っていた。タマゴを捨てた理由を問いただすなんてとても出来なかった。
幸いにもタマゴを預けたトレーナーのポケモンたちが同じ場所に来ていて、彼女が本来の持ち主(であるべき人)だということだけは何とか説明できた。しかし話を進めることなどとても出来そうにないとして協議はまたも先延ばしになった。
「どうすんだよ……これじゃあ、あの“ ”が願ってたことと正反対だ……」
まともな情報の手みやげすら持ち帰れなかった代表者、赤紫の首輪のヤミラミは、だらしなく床に手足を投げ出して天井を眺めることしかできなかった。
報復したところで何も生まれないことを知っていてもおかしくないのに、そのときの彼女はそんなことなどまるきり忘れていたらしい。
もしかしたら今も思い出せていないのかもしれない。
彼女――今やおよそ人とは呼べなくなった「それ」は、当てもなくうごめいていた。
進行方向に何があろうとお構いなしに、冬でもたくましく生きる草木にささやかなダメージを進呈して、ポケモンたちにはほのかな恐怖心を配り歩いて。
意味もなく進んでいた。
霧には拒まれ、帰る場所もなく、時にサイコキネシスや吹き飛ばしなんかで放り投げられていた。
曰く、その問題しか考えていないのではなく。
曰く、その問題以外に考えるものがないのだと。
もしかしたら今はそのことすら忘れているのかもしれない。
『どうかお願いします。私はもう彼女のそばにいることができないので……せめて、この子に』
リザードンの太い指が停止ボタンを押すと、音声はブツリと耳障りな音に遮られて打ち切られた。
ボイスレコーダーを放り投げようとした手を止める。数秒の一時停止の後、音を立てずにローテーブルの上へ置いて、その隣に広げられたメモ帳を掴んだ。
「……僕がポケモンセンターに預けられてから、出会ったポケモン」
あまりきれいとは言えない文字を視線がなぞる。
「一緒に旅をして、ジムを巡って、進化して」
目を閉じなくても、メモを取りながら話を聞いたときの様子ははっきりと思い出せる。
「“あの男”に出会って、別れて、再会して、誘われて」
証言者は涙を浮かべていた。
「騙されて……壊れた」
メモ帳の縁が爪に潰されてぎざぎざになる。
壊されたのは心だけじゃない。トレーナーとポケモンの関係性も、それ以上の絆も、その証も、すべてが奪われたと聞いた。
きっと――想像することしかできないけど――その苦しみを全部背負って、それでもすぐに笑えるようになる人なんて、そんなに多くはないはずだ。
(僕のことをずっと放っといてたのも……しょうがないことだったのかな)
当時に限っては。
夢をもぎ取られ、希望を吸い尽くされ、空っぽになった体にいったい何を望めというのか。
生きようとしただけマシだったんじゃないか。
少なくとも今よりは、マシだったんじゃないだろうか。
「じゃあ行ってくる。今度こそ合流して結論出してくるから」
「待って、僕も一緒に」
店先へと出る廊下から聞こえた声をリザードンは逃さなかった。
寝そべっていた床から起き上がり、自分も部屋を出ようとするが、声をかけてきたヤミラミに片手をかざされる形で言葉の続きを遮られた。
「お前が行くとヤバイことになるから。留守番頼む」
「何で僕はダメなわけ? どれだけ心配してると思ってるわけ?」
「それは分かってる、でもタマゴ預けた相手は炎ポケモン全般ダメなんだ。違う意味で話にならない」
「…………。」
あぁ、そういうこと。
情報交換の中で出てきた固有名詞を思い返すと、舌打ちの代わりに言葉を返した。
「……確か悪タイプも苦手だけどあんたはヘタレだから例外なんだっけ」
「…………。」
ヤミラミの方が黙ってしまった。
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今日、11日ログ分の前日談。というか直前。
なお実際にはヘタレ補正が効かなかったことを補足しておく。(…
よくある、破滅への道行きの一場面。
後味の悪い話は好きじゃないのに、どうしてそっちへ進んだ方がしっくり来るような出来事ばかり起こるんだろう。
・<lay old ghosts to rest>「過去のつらい思い出と折り合いをつける」
前記事(英作文67問目)のためにいろいろな表現を検索していて見つけたフレーズ。
直訳すると「古い幽霊たちを休ませるために横たわらせる」→「過去の霊を眠りにつかせる」。
・月の器についても書きたいけど、一日にいろいろ書きすぎると今度は他のことが進まないので後にする。
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すべてを既に失っている者に、失うことの悲しみを“思い出させる”ことは容易に出来るだろう。
しかし、何かを失ってまで奪おうとする空しさを分からせるのは、とても難しい。
『先に言っておくと、僕らは今回、一切手伝う気ないから』
2日前。島の東を流れる川で1個のタマゴが置き去りにされているのを通りかかったプルリルの姉弟が見つけ、届ける先が他にないからとカフェに運び込んだ。
彼らが川を訪れる前からタマゴの遺棄を、そしてその犯人を特定していた幽霊は、タマゴの出自やある程度のいきさつを知るポケモンたちに要約した情報を伝えてやった。知っていたなら何故保護しなかった、と反論されれば幽霊は平然と、
『捨てた本人が思い直して戻ってくるかもしれないじゃない。まずは信じてあげないと』
などと答えてみせる。
『それに、過去の事件のことで僕らは彼女の恨みを買っている。直接関わったって、火に油を注ぐだけでしょ?』
仕方なく、情報を受け取ったポケモンの1匹が代表してタマゴの様子を見に行った。
そして数時間後、紆余曲折を経て別のトレーナーへ預けられたという続報だけを持ち帰ってきた。
幽霊がついでのように発した、配慮なのだろうがただの敬遠にも聞こえる一言は聞き流されていたが、丸一日後に衝撃を伴って関係者の脳裏へ舞い戻ってきた。
聞けばタマゴの落とし主、何とかしたくてもうかつに手出しできない問題の「彼女」が、逆恨みの相手の何人かを見つけて襲いかかったのだという。入ってくる情報は負傷者が無いこと(その時点では大きな被害が出ていなかった)だけで、具体的に何が彼女の理性を吹き飛ばしたのかは分からない。現場を確かめ詳しい状況を把握するため、そして前夜のタマゴについてトレーナーと改めて協議するため、同じポケモンが再び代表者として森を走った。
情報通りに彼女は暴れていて、情報になかったが推測していた通り、まともな会話が成り立たないほど怒り狂っていた。タマゴを捨てた理由を問いただすなんてとても出来なかった。
幸いにもタマゴを預けたトレーナーのポケモンたちが同じ場所に来ていて、彼女が本来の持ち主(であるべき人)だということだけは何とか説明できた。しかし話を進めることなどとても出来そうにないとして協議はまたも先延ばしになった。
「どうすんだよ……これじゃあ、あの“ ”が願ってたことと正反対だ……」
まともな情報の手みやげすら持ち帰れなかった代表者、赤紫の首輪のヤミラミは、だらしなく床に手足を投げ出して天井を眺めることしかできなかった。
報復したところで何も生まれないことを知っていてもおかしくないのに、そのときの彼女はそんなことなどまるきり忘れていたらしい。
もしかしたら今も思い出せていないのかもしれない。
彼女――今やおよそ人とは呼べなくなった「それ」は、当てもなくうごめいていた。
進行方向に何があろうとお構いなしに、冬でもたくましく生きる草木にささやかなダメージを進呈して、ポケモンたちにはほのかな恐怖心を配り歩いて。
意味もなく進んでいた。
霧には拒まれ、帰る場所もなく、時にサイコキネシスや吹き飛ばしなんかで放り投げられていた。
曰く、その問題しか考えていないのではなく。
曰く、その問題以外に考えるものがないのだと。
もしかしたら今はそのことすら忘れているのかもしれない。
『どうかお願いします。私はもう彼女のそばにいることができないので……せめて、この子に』
リザードンの太い指が停止ボタンを押すと、音声はブツリと耳障りな音に遮られて打ち切られた。
ボイスレコーダーを放り投げようとした手を止める。数秒の一時停止の後、音を立てずにローテーブルの上へ置いて、その隣に広げられたメモ帳を掴んだ。
「……僕がポケモンセンターに預けられてから、出会ったポケモン」
あまりきれいとは言えない文字を視線がなぞる。
「一緒に旅をして、ジムを巡って、進化して」
目を閉じなくても、メモを取りながら話を聞いたときの様子ははっきりと思い出せる。
「“あの男”に出会って、別れて、再会して、誘われて」
証言者は涙を浮かべていた。
「騙されて……壊れた」
メモ帳の縁が爪に潰されてぎざぎざになる。
壊されたのは心だけじゃない。トレーナーとポケモンの関係性も、それ以上の絆も、その証も、すべてが奪われたと聞いた。
きっと――想像することしかできないけど――その苦しみを全部背負って、それでもすぐに笑えるようになる人なんて、そんなに多くはないはずだ。
(僕のことをずっと放っといてたのも……しょうがないことだったのかな)
当時に限っては。
夢をもぎ取られ、希望を吸い尽くされ、空っぽになった体にいったい何を望めというのか。
生きようとしただけマシだったんじゃないか。
少なくとも今よりは、マシだったんじゃないだろうか。
「じゃあ行ってくる。今度こそ合流して結論出してくるから」
「待って、僕も一緒に」
店先へと出る廊下から聞こえた声をリザードンは逃さなかった。
寝そべっていた床から起き上がり、自分も部屋を出ようとするが、声をかけてきたヤミラミに片手をかざされる形で言葉の続きを遮られた。
「お前が行くとヤバイことになるから。留守番頼む」
「何で僕はダメなわけ? どれだけ心配してると思ってるわけ?」
「それは分かってる、でもタマゴ預けた相手は炎ポケモン全般ダメなんだ。違う意味で話にならない」
「…………。」
あぁ、そういうこと。
情報交換の中で出てきた固有名詞を思い返すと、舌打ちの代わりに言葉を返した。
「……確か悪タイプも苦手だけどあんたはヘタレだから例外なんだっけ」
「…………。」
ヤミラミの方が黙ってしまった。
--------------------
今日、11日ログ分の前日談。というか直前。
なお実際にはヘタレ補正が効かなかったことを補足しておく。(…
よくある、破滅への道行きの一場面。
後味の悪い話は好きじゃないのに、どうしてそっちへ進んだ方がしっくり来るような出来事ばかり起こるんだろう。
・<lay old ghosts to rest>「過去のつらい思い出と折り合いをつける」
前記事(英作文67問目)のためにいろいろな表現を検索していて見つけたフレーズ。
直訳すると「古い幽霊たちを休ませるために横たわらせる」→「過去の霊を眠りにつかせる」。
・月の器についても書きたいけど、一日にいろいろ書きすぎると今度は他のことが進まないので後にする。
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プロフィール
HN:
Rista
HP:
性別:
非公開
自己紹介:
化屋月華堂(親サイト)&カフェ「パーティ」(子サイト)管理人。今のところ活動は後者の方が活発。
一応今は社会人なので控えめに動いてるつもりだが、その割に子供じみた言動も多々ある。自覚あり。
ちなみにブログ名は“カフェパにのめり込んで離れられなくなった人”を指す造語に由来。
あなたは大丈夫ですか?
一応今は社会人なので控えめに動いてるつもりだが、その割に子供じみた言動も多々ある。自覚あり。
ちなみにブログ名は“カフェパにのめり込んで離れられなくなった人”を指す造語に由来。
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