Party Syndromeの現場に踊る足跡の記録。
面識も交流もない相手にいきなり相互リンクを申し込むのは宣伝以外の何者でもない、応じる理由もないしそうするべきではない。
そのことを経験から習い覚えたのは最初のサイトを作った年のことでした。
……化屋の方でもそろそろ何か書きたいなぁ。
以下はカフェパ話。完成。
そのことを経験から習い覚えたのは最初のサイトを作った年のことでした。
……化屋の方でもそろそろ何か書きたいなぁ。
以下はカフェパ話。完成。
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彼女は暗闇をひた走っていた。
何も見えない聞こえない触れない吸わない吹かない、停滞した時間の中を走っていた。
両の肺を潰しそうなほどに張り上げた声が、自分にとっての精一杯の叫びが、誰にも届かなかった。
“あのとき”の寒気を、息の詰まる苦しみを、力が抜けていく感覚を、どうしても思い出してしまう。
あれこそが絶望と呼ばれるものだと知ったのは後になってからだ。しかし知ったところでどうにもならないし、再びそれを感じたところで悦に入るようなものでもない。本当は考えたくもない。
なのに今、その痛みが胸の中から去っていく気配はない。
『助けて』
呼ぶ相手もなく、思いついても今ひとつ信用できず、頭に浮かんだ顔に×印をつけていく。
途中、うっかり昨夜カフェで遭遇したあの顔を思い出してしまい、奈落の底からわき上がるような強い怒りが気道を突き刺してきた。
考えることをやめ、走ることに専念した。
『壊さないで』
口から飛び出しそうになった言葉を改めて意識し、我に返った。
立ち止まるとそれまで暗かった視界が元に戻った。火山の麓。夕闇に染まる山頂は一見、いつもと同じ。しかし何か違うように一瞬だけ感じた。
行ってはいけない気がする。
自分の直感に逆らって、彼女は上り坂を駆け上がった。
男は血に染まってもいない口元を手の甲でゆっくりとぬぐった。
数匹のポケモンたちの悲鳴をバックに、足下に伏した緑髪の青年の横顔を見下ろす。片目がかろうじてこちらを見返してきたが、いずれ気を失うだろうと一目で分かった。
「今、一人喰われました。命に別状はなさそうですが、いかがなさいますか」
受話器を通して淡々と語る女と一瞬、目が合う。
額のを含めた三つの瞳は男を拒絶するようにそろって明後日の方向を向いた。視線に込められた金縛りの呪力をすんでの所で回避すると、女は背負った木刀を静かに抜いた。
「そうですね、ええ。一応訊いてみましょう。……意識はありますか?」
返答の代わりに椅子が飛んできた。
振り上げた木刀が椅子を、続いてそれを突き上げてきた数本の蔓を相次いで弾き飛ばす。間髪入れずに踏み込む次の一歩。女は受話器を放り出すと、浴衣の袖すら蔓に触れさせず男の懐へ飛び込み、胴への一突きをねじ込んだ。
鋼の装甲に阻まれる手応えを感じた。
真横へ転げるように跳ぶ女。木刀の先端がわずかに着衣を乱した痕跡、その正面に生じた空間へ、純白の弾丸と朱色の御札が連続で叩きつけられる。
白い轟音が森の一角を耳障りに照らした。
火山を下りる彼女の足取りは往路より重かった。
湖から上がった花火が火山を遥か越えて上空に花開く、その光を照り返す地面の色で感じながら、当てもなく歩く。温泉を迂回し、湖を避け、広場にはかすりもせず、そもそも森の散歩道自体を外れて。
――大丈夫ですよ。この島に来ている皆さんはいい人たちばかりですから。
かつて自分が誰かに言った言葉が、何故か今更脳裏に響く。どんな場面で誰に言ったことかは思い出せず、ただ盲目的に信じていた愚かしさだけが胸をえぐった。
――君たち、警戒心なさすぎ。
かつてどこかで聞いた嘲笑の記憶が、標的のない怒りを加速させる。やり場もなくそもそも意味も分からない感情を押さえきれず、腕力に任せて何かにぶつけようとして、周りに木しかないことに気づいた。
ここで八つ当たりに走れば間違いなく誰かが来る。
騒がれると面倒だし、誰にも絡まれたくない。
振り上げかけた手を静かに下ろし、足を止めた彼女は木々の合間の夜空を仰ぐ。その頬を涙が伝いそうになると、堅く目を閉じて耐えた。
土煙が晴れた後、床には割れた窓ガラスが散乱しているだけだった。
「逃げられたましたか……」
「大丈夫だよ。今の一撃は効いてるはずだから、そう遠くへは行かれないよ」
緑髪の青年を抱え上げた金髪の青年が静かに目を閉じる。傍らに浮遊する幽霊は体勢を立て直す女に手を貸し、夏の生暖かい風が吹き抜ける外を見て、こう言った。
「契約者を見つけて今まで通りに戻るか、自力で呪縛を解くか。そろそろ嫌でも選んでもらうよ?」
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違う形で、同時進行で、ゆっくりと壊れていく。
もちろん本意ではない……はずなのに。
彼女は暗闇をひた走っていた。
何も見えない聞こえない触れない吸わない吹かない、停滞した時間の中を走っていた。
両の肺を潰しそうなほどに張り上げた声が、自分にとっての精一杯の叫びが、誰にも届かなかった。
“あのとき”の寒気を、息の詰まる苦しみを、力が抜けていく感覚を、どうしても思い出してしまう。
あれこそが絶望と呼ばれるものだと知ったのは後になってからだ。しかし知ったところでどうにもならないし、再びそれを感じたところで悦に入るようなものでもない。本当は考えたくもない。
なのに今、その痛みが胸の中から去っていく気配はない。
『助けて』
呼ぶ相手もなく、思いついても今ひとつ信用できず、頭に浮かんだ顔に×印をつけていく。
途中、うっかり昨夜カフェで遭遇したあの顔を思い出してしまい、奈落の底からわき上がるような強い怒りが気道を突き刺してきた。
考えることをやめ、走ることに専念した。
『壊さないで』
口から飛び出しそうになった言葉を改めて意識し、我に返った。
立ち止まるとそれまで暗かった視界が元に戻った。火山の麓。夕闇に染まる山頂は一見、いつもと同じ。しかし何か違うように一瞬だけ感じた。
行ってはいけない気がする。
自分の直感に逆らって、彼女は上り坂を駆け上がった。
男は血に染まってもいない口元を手の甲でゆっくりとぬぐった。
数匹のポケモンたちの悲鳴をバックに、足下に伏した緑髪の青年の横顔を見下ろす。片目がかろうじてこちらを見返してきたが、いずれ気を失うだろうと一目で分かった。
「今、一人喰われました。命に別状はなさそうですが、いかがなさいますか」
受話器を通して淡々と語る女と一瞬、目が合う。
額のを含めた三つの瞳は男を拒絶するようにそろって明後日の方向を向いた。視線に込められた金縛りの呪力をすんでの所で回避すると、女は背負った木刀を静かに抜いた。
「そうですね、ええ。一応訊いてみましょう。……意識はありますか?」
返答の代わりに椅子が飛んできた。
振り上げた木刀が椅子を、続いてそれを突き上げてきた数本の蔓を相次いで弾き飛ばす。間髪入れずに踏み込む次の一歩。女は受話器を放り出すと、浴衣の袖すら蔓に触れさせず男の懐へ飛び込み、胴への一突きをねじ込んだ。
鋼の装甲に阻まれる手応えを感じた。
真横へ転げるように跳ぶ女。木刀の先端がわずかに着衣を乱した痕跡、その正面に生じた空間へ、純白の弾丸と朱色の御札が連続で叩きつけられる。
白い轟音が森の一角を耳障りに照らした。
火山を下りる彼女の足取りは往路より重かった。
湖から上がった花火が火山を遥か越えて上空に花開く、その光を照り返す地面の色で感じながら、当てもなく歩く。温泉を迂回し、湖を避け、広場にはかすりもせず、そもそも森の散歩道自体を外れて。
――大丈夫ですよ。この島に来ている皆さんはいい人たちばかりですから。
かつて自分が誰かに言った言葉が、何故か今更脳裏に響く。どんな場面で誰に言ったことかは思い出せず、ただ盲目的に信じていた愚かしさだけが胸をえぐった。
――君たち、警戒心なさすぎ。
かつてどこかで聞いた嘲笑の記憶が、標的のない怒りを加速させる。やり場もなくそもそも意味も分からない感情を押さえきれず、腕力に任せて何かにぶつけようとして、周りに木しかないことに気づいた。
ここで八つ当たりに走れば間違いなく誰かが来る。
騒がれると面倒だし、誰にも絡まれたくない。
振り上げかけた手を静かに下ろし、足を止めた彼女は木々の合間の夜空を仰ぐ。その頬を涙が伝いそうになると、堅く目を閉じて耐えた。
土煙が晴れた後、床には割れた窓ガラスが散乱しているだけだった。
「逃げられたましたか……」
「大丈夫だよ。今の一撃は効いてるはずだから、そう遠くへは行かれないよ」
緑髪の青年を抱え上げた金髪の青年が静かに目を閉じる。傍らに浮遊する幽霊は体勢を立て直す女に手を貸し、夏の生暖かい風が吹き抜ける外を見て、こう言った。
「契約者を見つけて今まで通りに戻るか、自力で呪縛を解くか。そろそろ嫌でも選んでもらうよ?」
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もちろん本意ではない……はずなのに。
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プロフィール
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Rista
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性別:
非公開
自己紹介:
化屋月華堂(親サイト)&カフェ「パーティ」(子サイト)管理人。今のところ活動は後者の方が活発。
一応今は社会人なので控えめに動いてるつもりだが、その割に子供じみた言動も多々ある。自覚あり。
ちなみにブログ名は“カフェパにのめり込んで離れられなくなった人”を指す造語に由来。
あなたは大丈夫ですか?
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