Party Syndromeの現場に踊る足跡の記録。
久々のカフェパ話。
昨夜のログに加え、プロフィールとも前の記事(英語16問目)ともリンクしている。
自分にしては珍しいパターン。
昨夜のログに加え、プロフィールとも前の記事(英語16問目)ともリンクしている。
自分にしては珍しいパターン。
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「ついてきて!コッチだヨ!」
怪我人の肩を担いで通路を走り抜けた仮面の男は、遺跡から脱出するや足を止めた。一緒に走ってきた少女に片手を差し伸べ立ち止まらせると、後ろを振り返り、やや遅れて彼らを追いかけてきたプラスルとアンノーンが追いつくのを待つ。
ここまで来れば、あの不思議な力が及ぶ範囲からは確実に外れているだろう。
男はマントを大きく翻した。
「後は一本道。3名様、ご案ナ~イ!」
青年と少女と幼いポケモンを、広がったマントが一度にすっぽりと包む。
彼らの視界が完全な暗闇に閉ざされた瞬間――空間の底が、抜けた。
聖なる森の祠から見てやや南西。
かつてカフェのオーナーが暮らしていた家、今は焼け跡も片付けられ空地となったその場所の地下深くに、彼の“秘密基地”は隠されている。一見適当に、しかし綿密な計算の元に配置された廃材やがらくたは、地上を歩く者には密かに埋められた入口へ視線が向かないよう仕向けると同時に、島へ出入りする様々な“不思議な存在”がもたらす霊的・魔術的・ポケモン学的干渉を自然に退ける結界を形成していた。
故にその場所はほとんど誰の目にもとまらず、もちろん地図にも載らない。
そんな秘密の部屋の片隅に置かれたふかふかのベッドの上に、突然、人間2人とポケモン1匹が次々と降ってきた。
「……やっと来たか」
マックスは軽く肩を回しながら椅子から立ち上がり、数秒だけ空間の裂け目が現れていた天井を見上げた。「もうちょっと丁重に扱えよ」と声をかけた頃には既に、そこには何もない。
「だって時間ナかったし?」
暗闇の幕をめくるようにしてベッドの脇に現れた仮面の男が肩をすくめてみせる。その口調に反省の色はまったくない。
続けて何か言おうとしたマックスへ、少し離れた位置から声がかけられた。
「お説教は後でお願いします。それより怪我の具合を見ましょう、毒の技を食らったと聞いています」
「毒?」
「タマゴ爆弾多数にヘドロ爆弾。合計何発食らったかなァ」
「楽しそうに言うな。そういやタマゴ爆弾は何タイプの技?」
「ノーマルタイプです」
マックスが口にした疑問に即答したのは、怪しげな書物に囲まれて床に座るカラカラだった。開かれた一冊を見ながら乳鉢に木の実を入れ、それを丁寧にすりつぶし始め彼女の手つきには迷いがない。
黒いとんがり帽子と黒いマント。3名の客人が彼女をカフェで見かけたかどうかに関係なく、今この場で周囲と見比べたなら、仮面の男とこのポケモンの服装が持つ相似性に気づくのに時間はかからないことだろう。
「言い忘れておりましたが。……ようこそ、師匠の工房へ」
始められた治療の様子を一人、やや遠巻きに見ている半透明の姿があった。
朱月である。
彼は、何日か前、同じ場所で行われていた治療の光景を同じ場所から見ていた。そのときのことを思い出し、当事者の背中に重ね合わせる。
モンスターボールを大事に握りしめてこの部屋へ帰り、困惑と狼狽を叱咤されながら応急手当をする魔術師。
ポケモンの扱い方を根本から間違っていると怒りをむき出しにする、仕事帰りにここへ引っ張り込まれた配達員。
今日と同じような敵との戦いを経た後の、同じように緊迫した空気の中。互いに文句をぶつけ合う中に、それぞれ人前では滅多に言わない言葉が混ざっていたことを、幽霊は聞き逃さなかった。
『……ゴメンネ。ボクがもうちょっとポケモンのコト勉強してれば、キミも楽に戦えたのカナ?』
いつでも自分を一番可愛がる男が見せた、パートナーへの思い。
『勉強だけじゃダメだ、ポケモンはそう簡単じゃない。指示だけしてりゃいい人間とは違うんだよ』
常に人間側の立場でいようとする男が口走った、実際に戦う側としての実感。
結局その夜、二人はそれきり黙ってしまったのだけれど。
今夜の患者は身内でないだけまだ気楽なのだろうか。
状況を飲み込めていないらしい付き添いの1人と1匹を取り残し、青年の治療は途中からカラカラに任せて、2人は地図を広げた。
真新しい紙に遺跡内の情報を書き込んだ手作りの地図の上に、拾ってきたばかりの青い石が転がされる。
「ところで、ラキス。お前いいのか、そこのアンノーンほっといて」
「ア、忘れてたヨ。ゴメンネ。モンスターボールはドコへやったっけ?」
自分がボールから出してやったわけではないことを忘れ、仮面の魔術師は意味もないのに周囲を見回す。
「そっちじゃねーよ。敵の前で手の内を披露していいのかって聞いてんだ」
「全然問題ナシ。コレ1匹だけヒントにして全部見抜けるなら、アイツら今頃もっと上手に島を攻略してるハズだもん」
それにネ、と男は笑う。
「……アレを無効化するってコトは、アンノーンであるコトをやめちゃうコトになる。アイツらがそんなにプライドのない奴に見えル?」
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元々書こうとしてた話があった。
中身を考えているうちにカフェでいろいろ起きて、合わせてみたらこうなった。
本当ならこういうのは別茶でやるのがベストなんですけどね。そうしないと、巻き込んだ相手の方の発言が一切拾えませんし。
所在から分かる通り、治療さえ済めば地上に出て、その先はいつも通りに帰れます。
きっと祠までの道案内は幽霊が引き受けてくれることでしょう。
「ついてきて!コッチだヨ!」
怪我人の肩を担いで通路を走り抜けた仮面の男は、遺跡から脱出するや足を止めた。一緒に走ってきた少女に片手を差し伸べ立ち止まらせると、後ろを振り返り、やや遅れて彼らを追いかけてきたプラスルとアンノーンが追いつくのを待つ。
ここまで来れば、あの不思議な力が及ぶ範囲からは確実に外れているだろう。
男はマントを大きく翻した。
「後は一本道。3名様、ご案ナ~イ!」
青年と少女と幼いポケモンを、広がったマントが一度にすっぽりと包む。
彼らの視界が完全な暗闇に閉ざされた瞬間――空間の底が、抜けた。
聖なる森の祠から見てやや南西。
かつてカフェのオーナーが暮らしていた家、今は焼け跡も片付けられ空地となったその場所の地下深くに、彼の“秘密基地”は隠されている。一見適当に、しかし綿密な計算の元に配置された廃材やがらくたは、地上を歩く者には密かに埋められた入口へ視線が向かないよう仕向けると同時に、島へ出入りする様々な“不思議な存在”がもたらす霊的・魔術的・ポケモン学的干渉を自然に退ける結界を形成していた。
故にその場所はほとんど誰の目にもとまらず、もちろん地図にも載らない。
そんな秘密の部屋の片隅に置かれたふかふかのベッドの上に、突然、人間2人とポケモン1匹が次々と降ってきた。
「……やっと来たか」
マックスは軽く肩を回しながら椅子から立ち上がり、数秒だけ空間の裂け目が現れていた天井を見上げた。「もうちょっと丁重に扱えよ」と声をかけた頃には既に、そこには何もない。
「だって時間ナかったし?」
暗闇の幕をめくるようにしてベッドの脇に現れた仮面の男が肩をすくめてみせる。その口調に反省の色はまったくない。
続けて何か言おうとしたマックスへ、少し離れた位置から声がかけられた。
「お説教は後でお願いします。それより怪我の具合を見ましょう、毒の技を食らったと聞いています」
「毒?」
「タマゴ爆弾多数にヘドロ爆弾。合計何発食らったかなァ」
「楽しそうに言うな。そういやタマゴ爆弾は何タイプの技?」
「ノーマルタイプです」
マックスが口にした疑問に即答したのは、怪しげな書物に囲まれて床に座るカラカラだった。開かれた一冊を見ながら乳鉢に木の実を入れ、それを丁寧にすりつぶし始め彼女の手つきには迷いがない。
黒いとんがり帽子と黒いマント。3名の客人が彼女をカフェで見かけたかどうかに関係なく、今この場で周囲と見比べたなら、仮面の男とこのポケモンの服装が持つ相似性に気づくのに時間はかからないことだろう。
「言い忘れておりましたが。……ようこそ、師匠の工房へ」
始められた治療の様子を一人、やや遠巻きに見ている半透明の姿があった。
朱月である。
彼は、何日か前、同じ場所で行われていた治療の光景を同じ場所から見ていた。そのときのことを思い出し、当事者の背中に重ね合わせる。
モンスターボールを大事に握りしめてこの部屋へ帰り、困惑と狼狽を叱咤されながら応急手当をする魔術師。
ポケモンの扱い方を根本から間違っていると怒りをむき出しにする、仕事帰りにここへ引っ張り込まれた配達員。
今日と同じような敵との戦いを経た後の、同じように緊迫した空気の中。互いに文句をぶつけ合う中に、それぞれ人前では滅多に言わない言葉が混ざっていたことを、幽霊は聞き逃さなかった。
『……ゴメンネ。ボクがもうちょっとポケモンのコト勉強してれば、キミも楽に戦えたのカナ?』
いつでも自分を一番可愛がる男が見せた、パートナーへの思い。
『勉強だけじゃダメだ、ポケモンはそう簡単じゃない。指示だけしてりゃいい人間とは違うんだよ』
常に人間側の立場でいようとする男が口走った、実際に戦う側としての実感。
結局その夜、二人はそれきり黙ってしまったのだけれど。
今夜の患者は身内でないだけまだ気楽なのだろうか。
状況を飲み込めていないらしい付き添いの1人と1匹を取り残し、青年の治療は途中からカラカラに任せて、2人は地図を広げた。
真新しい紙に遺跡内の情報を書き込んだ手作りの地図の上に、拾ってきたばかりの青い石が転がされる。
「ところで、ラキス。お前いいのか、そこのアンノーンほっといて」
「ア、忘れてたヨ。ゴメンネ。モンスターボールはドコへやったっけ?」
自分がボールから出してやったわけではないことを忘れ、仮面の魔術師は意味もないのに周囲を見回す。
「そっちじゃねーよ。敵の前で手の内を披露していいのかって聞いてんだ」
「全然問題ナシ。コレ1匹だけヒントにして全部見抜けるなら、アイツら今頃もっと上手に島を攻略してるハズだもん」
それにネ、と男は笑う。
「……アレを無効化するってコトは、アンノーンであるコトをやめちゃうコトになる。アイツらがそんなにプライドのない奴に見えル?」
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元々書こうとしてた話があった。
中身を考えているうちにカフェでいろいろ起きて、合わせてみたらこうなった。
本当ならこういうのは別茶でやるのがベストなんですけどね。そうしないと、巻き込んだ相手の方の発言が一切拾えませんし。
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プロフィール
HN:
Rista
HP:
性別:
非公開
自己紹介:
化屋月華堂(親サイト)&カフェ「パーティ」(子サイト)管理人。今のところ活動は後者の方が活発。
一応今は社会人なので控えめに動いてるつもりだが、その割に子供じみた言動も多々ある。自覚あり。
ちなみにブログ名は“カフェパにのめり込んで離れられなくなった人”を指す造語に由来。
あなたは大丈夫ですか?
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