Party Syndromeの現場に踊る足跡の記録。
久しぶりにSSを書けた。書ききった!
最近はどうも断片しか浮かばなくて、途中で手が止まっていたから、一種の達成感にしばらく酔いしれよう。
(深く考えすぎなの?と考えてしまうこの頃。仕方ないので設定資料集を大幅改訂中、終わったら前ブログ投稿分の残りをアップする予定)
というわけでスタート。カフェパ話。
最近はどうも断片しか浮かばなくて、途中で手が止まっていたから、一種の達成感にしばらく酔いしれよう。
(深く考えすぎなの?と考えてしまうこの頃。仕方ないので設定資料集を大幅改訂中、終わったら前ブログ投稿分の残りをアップする予定)
というわけでスタート。カフェパ話。
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深夜から早朝へと移りゆく午前4時。
島の南西に建つ小屋の一つに、いまだ明かりがともっている。
統轄本部に属する通称「技術班」の拠点、オーナー宅の離れには、数時間前に戦いを終えて運び込まれたサーリグの“治療”を見ようと関係者が詰めかけていた。
作業台の上に横たえられた体を見るまでもない。傍らに置かれた白いコートの損傷、特に両袖の爪痕と背見頃に刻まれた無数の擦過傷が、戦いで受けたダメージの大きさを言葉よりも確かに語っている。
「いや、背中のは主にリアラが引きずってきたせいだろ」
「仕方なかったんだ。今の俺たちの腕力じゃ、兄貴の身体担ぐなんて絶っ対に無理だって」
自らの応急手当を終えたシイナが椅子の上で足をぶらつかせ、口先を曲げた。胸にはコダックを抱えている。そちらは最初に攻撃を受けたもののその場で応急処置を受けたのでたいした怪我にはならず、ショックが和らいだのと一気に疲れたのも手伝って、包帯代わりに使われた回復リボンを握ったまま熟睡していた。
そのシイナが上目遣いに見る先にマックスがいる。一報を受けたときは家にいたといい、カフェを訪れるときに着ている配達員の仕事服ではなく私服だった。隣には同じく私服のメープルと、いつもの黒いとんがり帽子とマントを着て仮面をかぶったラキス。作業台を挟んだ向かいには朱月、白い浴衣姿の京と共にパソコンの画面をのぞき込む後ろ姿がある。
サーリグを、そして死闘の相手をまとめて運んできたアリアドスは、天井に作った巣の真ん中で眠っている。そこにいることは室内にいる誰もが分かっているはずなのに、時折誰かが見上げては、必ずといっていいほど大仰に硬直していた。
「あ、まりもを助けてくれたワカシャモにちゃんとお礼言わないと」
「それはまた今度。問題はこいつ……生身の人間なら複雑骨折じゃ済まねぇだろこれ」
まりもの頭を軽く撫でたマックス、その間に応急箱を棚の上に戻してきたメープルが、相次いで作業台をのぞき込む。
黄金色の輝きを失った目は閉じられ、顔の形は崩れていないものの爆風で溶けかけた皮膚の変形が生々しい。衣服をはぎ取られた上半身も同様。ここまで見るなら重傷を負った人間にしか見えない。しかし手首から上腕にかけて切開された両腕に血の色は一滴もなく、原形をとどめないほど強く変形した金属部品が見え隠れしているさまは、痛々しさとはまた違った異様さを醸し出していた。
「配線(ハーネス)、人工筋肉、肘関節のモーター、全部やられてます。部品は全部予備があるので取り替えれば動きますけど……装甲が……」
「時間かかる?」
「ラキスさんの魔術と錬金術で手伝ってもらうことになったんですけど、十分戦えるコンディションにするには、急いでも一週間はかかると思います」
「ハサミギロチン怖ーい……」
相手の動きを封じにかかった矢先に食らった一撃必殺技の名を、メープルが小さく呟く。変形は両腕のそれぞれ2カ所に入った曲線を中心にしており、ポケモンの知識があれば、その形状がシザリガーの鋏と一致することを聞いただけで理解できただろう。
彼女が何かを尋ねようと顔を上げたその瞬間、ちょうどその背後に置かれたマシンが甲高いアラーム音を発した。
「ひえっ!?……ま、まさか、本当に死んじゃったの?」
「いえ、今のはバッテリーの充電完了の合図です」
「びっくりしたぁ……」
止めていた息をほうっと吐き出すメープル。答えたニーナは獣の耳があったら伏せていそうな表情で、充電器らしいマシンから円筒形の道具を取り出しテーブルの上に置いた電動ドライバーとドッキングさせる。スイッチを入れると先端のドリルが勢いよく回り出し、メープルとシイナが同時に肩を震わせた。
「サーリグさんは無事ですよ。爆発直前に、コアだけテレポートでこっちに転移してきまして」
「緊急脱出って奴か。それで中身は」
「……今、外にいるはずですけど」
「外?」
見舞いに来ていた面々の視線がそろってカーテンに注がれる。
問いかけへの答えはない。しかし生まれた沈黙の中でかすかに、拳が空を切る音が聞こえた。
「もう次に備えてるってか。珍しく必死だな」
「何でもいいから一つのことに集中したいんだよ。そうすれば、余計なことは考えないでしょ?」
「そういうことか。だったらちょっと冷やかしてこようぜ」
「え?」
マックスが唐突にそんなことを言うと、両手でメープルとシイナの肩を掴みさりげなく引き寄せた。軽く押してシイナを椅子から降りるよう仕向け、朱月の念力で扉を開けさせてから歩き出す。しかし部屋の外に出される寸前、メープルは何を思ったか、つま先に重心をかけて無理矢理踏みとどまった。
「ね、そういえばさ……シザリガーって、大爆発覚えられるの?」
振り返った先、作業台の一番端にガラスの水槽がある。水が張られない状態のままふたと重しを乗せられた水槽の中には、気絶しているヘイガニ1匹だけが入っている。
「さあ? 技マシンにあるんだからそれ使えばいいんじゃないの」
「でも覚えなかった気がする……」
「図鑑でも何でもいいから後で調べとけ。さあ行った行った」
少女のツインテールは終始納得いかない様子で揺れていたが、すぐ扉に隠され見えなくなった。
残ったのは重傷を負った男と弱気な技術者、そしてある種異様な面々。
「さーテ、張り切って直スぞー」
仮面の男はマントの中から試験管3本とフラスコを一度に取り出し、
「違う意味で混沌としてるね。異次元世界が絡んでるなら、例の凶刃と同じくらい怖いことになるんじゃないかな」
幽霊は画面の中、宇宙空間に浮かぶ残骸の集団を再現した3次元画像を指さし、
「この解析結果を基に次の作戦を構築します。石舟の設計も見直す必要がありますね」
女は鉢巻きを外し、閉じていた額のまぶたを見開いた。
統轄本部。
「護るための力」を束ねる異能の集団が、今日もまた静かに動き出す。
深夜から早朝へと移りゆく午前4時。
島の南西に建つ小屋の一つに、いまだ明かりがともっている。
統轄本部に属する通称「技術班」の拠点、オーナー宅の離れには、数時間前に戦いを終えて運び込まれたサーリグの“治療”を見ようと関係者が詰めかけていた。
作業台の上に横たえられた体を見るまでもない。傍らに置かれた白いコートの損傷、特に両袖の爪痕と背見頃に刻まれた無数の擦過傷が、戦いで受けたダメージの大きさを言葉よりも確かに語っている。
「いや、背中のは主にリアラが引きずってきたせいだろ」
「仕方なかったんだ。今の俺たちの腕力じゃ、兄貴の身体担ぐなんて絶っ対に無理だって」
自らの応急手当を終えたシイナが椅子の上で足をぶらつかせ、口先を曲げた。胸にはコダックを抱えている。そちらは最初に攻撃を受けたもののその場で応急処置を受けたのでたいした怪我にはならず、ショックが和らいだのと一気に疲れたのも手伝って、包帯代わりに使われた回復リボンを握ったまま熟睡していた。
そのシイナが上目遣いに見る先にマックスがいる。一報を受けたときは家にいたといい、カフェを訪れるときに着ている配達員の仕事服ではなく私服だった。隣には同じく私服のメープルと、いつもの黒いとんがり帽子とマントを着て仮面をかぶったラキス。作業台を挟んだ向かいには朱月、白い浴衣姿の京と共にパソコンの画面をのぞき込む後ろ姿がある。
サーリグを、そして死闘の相手をまとめて運んできたアリアドスは、天井に作った巣の真ん中で眠っている。そこにいることは室内にいる誰もが分かっているはずなのに、時折誰かが見上げては、必ずといっていいほど大仰に硬直していた。
「あ、まりもを助けてくれたワカシャモにちゃんとお礼言わないと」
「それはまた今度。問題はこいつ……生身の人間なら複雑骨折じゃ済まねぇだろこれ」
まりもの頭を軽く撫でたマックス、その間に応急箱を棚の上に戻してきたメープルが、相次いで作業台をのぞき込む。
黄金色の輝きを失った目は閉じられ、顔の形は崩れていないものの爆風で溶けかけた皮膚の変形が生々しい。衣服をはぎ取られた上半身も同様。ここまで見るなら重傷を負った人間にしか見えない。しかし手首から上腕にかけて切開された両腕に血の色は一滴もなく、原形をとどめないほど強く変形した金属部品が見え隠れしているさまは、痛々しさとはまた違った異様さを醸し出していた。
「配線(ハーネス)、人工筋肉、肘関節のモーター、全部やられてます。部品は全部予備があるので取り替えれば動きますけど……装甲が……」
「時間かかる?」
「ラキスさんの魔術と錬金術で手伝ってもらうことになったんですけど、十分戦えるコンディションにするには、急いでも一週間はかかると思います」
「ハサミギロチン怖ーい……」
相手の動きを封じにかかった矢先に食らった一撃必殺技の名を、メープルが小さく呟く。変形は両腕のそれぞれ2カ所に入った曲線を中心にしており、ポケモンの知識があれば、その形状がシザリガーの鋏と一致することを聞いただけで理解できただろう。
彼女が何かを尋ねようと顔を上げたその瞬間、ちょうどその背後に置かれたマシンが甲高いアラーム音を発した。
「ひえっ!?……ま、まさか、本当に死んじゃったの?」
「いえ、今のはバッテリーの充電完了の合図です」
「びっくりしたぁ……」
止めていた息をほうっと吐き出すメープル。答えたニーナは獣の耳があったら伏せていそうな表情で、充電器らしいマシンから円筒形の道具を取り出しテーブルの上に置いた電動ドライバーとドッキングさせる。スイッチを入れると先端のドリルが勢いよく回り出し、メープルとシイナが同時に肩を震わせた。
「サーリグさんは無事ですよ。爆発直前に、コアだけテレポートでこっちに転移してきまして」
「緊急脱出って奴か。それで中身は」
「……今、外にいるはずですけど」
「外?」
見舞いに来ていた面々の視線がそろってカーテンに注がれる。
問いかけへの答えはない。しかし生まれた沈黙の中でかすかに、拳が空を切る音が聞こえた。
「もう次に備えてるってか。珍しく必死だな」
「何でもいいから一つのことに集中したいんだよ。そうすれば、余計なことは考えないでしょ?」
「そういうことか。だったらちょっと冷やかしてこようぜ」
「え?」
マックスが唐突にそんなことを言うと、両手でメープルとシイナの肩を掴みさりげなく引き寄せた。軽く押してシイナを椅子から降りるよう仕向け、朱月の念力で扉を開けさせてから歩き出す。しかし部屋の外に出される寸前、メープルは何を思ったか、つま先に重心をかけて無理矢理踏みとどまった。
「ね、そういえばさ……シザリガーって、大爆発覚えられるの?」
振り返った先、作業台の一番端にガラスの水槽がある。水が張られない状態のままふたと重しを乗せられた水槽の中には、気絶しているヘイガニ1匹だけが入っている。
「さあ? 技マシンにあるんだからそれ使えばいいんじゃないの」
「でも覚えなかった気がする……」
「図鑑でも何でもいいから後で調べとけ。さあ行った行った」
少女のツインテールは終始納得いかない様子で揺れていたが、すぐ扉に隠され見えなくなった。
残ったのは重傷を負った男と弱気な技術者、そしてある種異様な面々。
「さーテ、張り切って直スぞー」
仮面の男はマントの中から試験管3本とフラスコを一度に取り出し、
「違う意味で混沌としてるね。異次元世界が絡んでるなら、例の凶刃と同じくらい怖いことになるんじゃないかな」
幽霊は画面の中、宇宙空間に浮かぶ残骸の集団を再現した3次元画像を指さし、
「この解析結果を基に次の作戦を構築します。石舟の設計も見直す必要がありますね」
女は鉢巻きを外し、閉じていた額のまぶたを見開いた。
統轄本部。
「護るための力」を束ねる異能の集団が、今日もまた静かに動き出す。
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プロフィール
HN:
Rista
HP:
性別:
非公開
自己紹介:
化屋月華堂(親サイト)&カフェ「パーティ」(子サイト)管理人。今のところ活動は後者の方が活発。
一応今は社会人なので控えめに動いてるつもりだが、その割に子供じみた言動も多々ある。自覚あり。
ちなみにブログ名は“カフェパにのめり込んで離れられなくなった人”を指す造語に由来。
あなたは大丈夫ですか?
一応今は社会人なので控えめに動いてるつもりだが、その割に子供じみた言動も多々ある。自覚あり。
ちなみにブログ名は“カフェパにのめり込んで離れられなくなった人”を指す造語に由来。
あなたは大丈夫ですか?
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