Party Syndromeの現場に踊る足跡の記録。
続き。
物語を規定された路線に乗せてはいけない。取扱注意。
おかげでSSと即興会話は別の意味で難易度を増している。
……あ、よく考えたら自分のせいだ。
物語を規定された路線に乗せてはいけない。取扱注意。
おかげでSSと即興会話は別の意味で難易度を増している。
……あ、よく考えたら自分のせいだ。
----------
「寄贈。……やっぱり、……私が戻らない方がここはうまく回るのね」
口調も態度も思考の指向性も変わってしまった彼女が呟いたのは、聞く人が聞けば懐かしさを覚えるかもしれない、昔のままの弱音だった。
聞き返されて答えた一言に対して何かを言われ、それに彼女もまた返答した。しかしドーブルが一言発した瞬間、数分前までの会話が全部頭の中から蒸発した。
(結局それか! 目的はあくまでポケモンの機嫌で、私のことなんかどうだっていいんだ!)
自分を利用した「あの人」の邪な笑みを誰かの背後に幻視した。
集団攻撃が身体を貫いたときの感触が生々しく腹部によみがえった。
存在しないはずの痛みに耐えきれなくなり、リスタは迷わずカフェを飛び出していた。
思い起こされる記憶。
琴牙に案内される形で改めて訪れた彼の部屋はほとんどの家具がモノクロカラーで統一され、書斎ほどではないが様々な本が棚に並んでいた。真面目な指南書から趣味らしいコミックまで。パソコンの傍らには調べ物でもしていたのかメモが置いてある。そして机の引き出しの中に、3つのケースが保管されていた。
カントーのジムバッジ8種類。
ジョウトのジムバッジ8種類。
コンテストリボン4個――本当は5個あったが、最初の1つをある人にお守りとして譲ったという。
「ジム制覇のころとトップコーディネーターの道のり。いまはトップブリーダーとして、将来は…研究者かなぁ?」
研究。それは彼の兄や姉と同じ道である。しかし疑問符がついたあたり、堅く心に決めたわけではないらしい。
「でも、ちょっぴり育て屋なんてのも、いいかなーって考えてたり。」
本棚から育て屋についての本を取り出しながら琴牙は笑う。
「だって、いろんなポケモンと触れ合えるチャンスじゃないですかw」
そんな風に笑う。
ジム戦に挑むトレーナーとして、頂点を目指すコーディネーターとして、ポケモンを愛でるブリーダーとして、彼は仲間に囲まれて過ごしてきた。もちろん苦悩する日々もあっただろう、しかしそれは自分が見てきたような空虚ではなかったはずだ。
望んだ道を絶対的に断たれる瞬間など彼にはなかったはずだ。
歩いてきた世界はきっと……いつも暖かくて、常に幸せに満ちあふれているのだろう。
(同情は要らない。でも、私のこの苦しみまで、そんな簡単なことのように思われるのはもっと耐えられない……どうして?)
駆け込んだ場所で――今の自分が借りている一室で――彼女は右腕の刃を床に突き立てていた。
本当はこの刃をあの場所で振るいたかったのだけど。
何もかもを引き裂いて、切り刻んでしまいたかったのだけど。
衝動を素直に口にしたところで、続くのは「そんな怖いこと言わないで」などと軽く流すだけの言葉だ。そういうことを口にする人こそ、たびたび見せつける幸せそうな顔こそを、斬りたかった。
それは僻みと言うのだろう。
それを妬みと言うのだろう。
恨んだって憎んだって空しいだけだと頭で分かってはいても、他には何も浮かばなかった。
望んだところで手に入らないものばかり見せつけられていることに苛立っているのに、いざ自分が欲しいものを問われると何もないことに気づかされる。唯一といってよかったものが既に失われたことは確かめるまでもない。
人にすがることが今は何よりも怖かった。
抱きしめられた瞬間にすべてが暗転しそうで怖かった。
カフェに入ることを躊躇していたとき、声をかけられたことを思い出す。
杖を差し出されたことを、頭を撫でられたことを思い出す。
冷静になって思い返せばあのときは確かに何も起きなかった。本心は分からないが、もし自分が少しでも身をゆだねていたら、彼らは素直に受け入れてくれたのだろうか。
「今だけいい顔しないでよ……どうせ、私を置いて皆いなくなるのに……」
刃を静かに引き抜きながら呟いた彼女は。
ドアが少しだけ開いていることに気づいていなかった。
----------
6/15の深夜、カフェから帰ってきた彼女のその後を一つの軸として。
大切にしていた場所は同時に事件現場でもある。
思い出させようとする横やりも苦しいけど、思い出させまいとする気遣いもまた苦しい。
向き合うことと背を向けること、どちらが彼女を痛みから救うのだろうか?
「寄贈。……やっぱり、……私が戻らない方がここはうまく回るのね」
口調も態度も思考の指向性も変わってしまった彼女が呟いたのは、聞く人が聞けば懐かしさを覚えるかもしれない、昔のままの弱音だった。
聞き返されて答えた一言に対して何かを言われ、それに彼女もまた返答した。しかしドーブルが一言発した瞬間、数分前までの会話が全部頭の中から蒸発した。
(結局それか! 目的はあくまでポケモンの機嫌で、私のことなんかどうだっていいんだ!)
自分を利用した「あの人」の邪な笑みを誰かの背後に幻視した。
集団攻撃が身体を貫いたときの感触が生々しく腹部によみがえった。
存在しないはずの痛みに耐えきれなくなり、リスタは迷わずカフェを飛び出していた。
思い起こされる記憶。
琴牙に案内される形で改めて訪れた彼の部屋はほとんどの家具がモノクロカラーで統一され、書斎ほどではないが様々な本が棚に並んでいた。真面目な指南書から趣味らしいコミックまで。パソコンの傍らには調べ物でもしていたのかメモが置いてある。そして机の引き出しの中に、3つのケースが保管されていた。
カントーのジムバッジ8種類。
ジョウトのジムバッジ8種類。
コンテストリボン4個――本当は5個あったが、最初の1つをある人にお守りとして譲ったという。
「ジム制覇のころとトップコーディネーターの道のり。いまはトップブリーダーとして、将来は…研究者かなぁ?」
研究。それは彼の兄や姉と同じ道である。しかし疑問符がついたあたり、堅く心に決めたわけではないらしい。
「でも、ちょっぴり育て屋なんてのも、いいかなーって考えてたり。」
本棚から育て屋についての本を取り出しながら琴牙は笑う。
「だって、いろんなポケモンと触れ合えるチャンスじゃないですかw」
そんな風に笑う。
ジム戦に挑むトレーナーとして、頂点を目指すコーディネーターとして、ポケモンを愛でるブリーダーとして、彼は仲間に囲まれて過ごしてきた。もちろん苦悩する日々もあっただろう、しかしそれは自分が見てきたような空虚ではなかったはずだ。
望んだ道を絶対的に断たれる瞬間など彼にはなかったはずだ。
歩いてきた世界はきっと……いつも暖かくて、常に幸せに満ちあふれているのだろう。
(同情は要らない。でも、私のこの苦しみまで、そんな簡単なことのように思われるのはもっと耐えられない……どうして?)
駆け込んだ場所で――今の自分が借りている一室で――彼女は右腕の刃を床に突き立てていた。
本当はこの刃をあの場所で振るいたかったのだけど。
何もかもを引き裂いて、切り刻んでしまいたかったのだけど。
衝動を素直に口にしたところで、続くのは「そんな怖いこと言わないで」などと軽く流すだけの言葉だ。そういうことを口にする人こそ、たびたび見せつける幸せそうな顔こそを、斬りたかった。
それは僻みと言うのだろう。
それを妬みと言うのだろう。
恨んだって憎んだって空しいだけだと頭で分かってはいても、他には何も浮かばなかった。
望んだところで手に入らないものばかり見せつけられていることに苛立っているのに、いざ自分が欲しいものを問われると何もないことに気づかされる。唯一といってよかったものが既に失われたことは確かめるまでもない。
人にすがることが今は何よりも怖かった。
抱きしめられた瞬間にすべてが暗転しそうで怖かった。
カフェに入ることを躊躇していたとき、声をかけられたことを思い出す。
杖を差し出されたことを、頭を撫でられたことを思い出す。
冷静になって思い返せばあのときは確かに何も起きなかった。本心は分からないが、もし自分が少しでも身をゆだねていたら、彼らは素直に受け入れてくれたのだろうか。
「今だけいい顔しないでよ……どうせ、私を置いて皆いなくなるのに……」
刃を静かに引き抜きながら呟いた彼女は。
ドアが少しだけ開いていることに気づいていなかった。
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6/15の深夜、カフェから帰ってきた彼女のその後を一つの軸として。
大切にしていた場所は同時に事件現場でもある。
思い出させようとする横やりも苦しいけど、思い出させまいとする気遣いもまた苦しい。
向き合うことと背を向けること、どちらが彼女を痛みから救うのだろうか?
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性別:
非公開
自己紹介:
化屋月華堂(親サイト)&カフェ「パーティ」(子サイト)管理人。今のところ活動は後者の方が活発。
一応今は社会人なので控えめに動いてるつもりだが、その割に子供じみた言動も多々ある。自覚あり。
ちなみにブログ名は“カフェパにのめり込んで離れられなくなった人”を指す造語に由来。
あなたは大丈夫ですか?
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