Party Syndromeの現場に踊る足跡の記録。
続き。
昨日、やろうとして挫折したことがある。
一つ二つじゃないそれを思い返して反省しつつ。
昨日、やろうとして挫折したことがある。
一つ二つじゃないそれを思い返して反省しつつ。
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何をしてほしいのか。
問われ、一つ答えてみた、その翌日。リスタは響音家の書斎に呼び出された。
「アーメスター、ウチの歴史どこー?」
「どこの年代からいってや。最初っからか?」
(そこから!?)
ドーブルの呼びかけに応じ、眼鏡を掛けたミロカロスが本棚の一つから古文書らしき書籍を取り出してきたのを見た彼女は、自分が投げた球がまたしても思わぬ方向に飛ばされてしまったことを悟った。
響音家は数百年の歴史を誇る名家であるという。琴牙は彼らの祖先がシオンの地に祭られる稲荷神と共に悪霊を封じ繁栄の礎を築いた話に始まり、子孫が受け継いだもの、残された名の意味をつらつらと語っていった。
悪霊の長は今もポケモンタワーの地下に眠っているという。確か農耕や商業の神であるはずの稲荷神がその管理を任されているのは、おそらく単にその土地に住まう神格だったからという理由だろう。琴牙はそのあたりについては詳しく説明しなかったので聞き手はそんな風に見当をつけ、先日訪れた慰霊塔のことも思い出したが、さすがに手を出そうとは思わなかった。
「そこへのルートは主人らとわいしか知らん。鍵はさぁ、どこやろね。」
という発言は聞く人が聞けば十分な挑発になるんじゃないか、とは感じたが。
さて、紐解かれた歴史の本が本棚へ戻された後、二人の語り手はその片割れの名前についての話を始めた。ホウエン出身というこのミロカロスは、先代からの指名で響音家の後見人に選ばれ、『天星(アマボシ)』の名を受け継いだという。
「ただそのままだと15代目とかぶっちゃうんで、あまの漢字…天を雨に。星を英語にして語呂合わせしてアーメスタにしたんです。どう思います?」
「アメスターってなんかかっこわるぅないか?」
琴牙は自分で作ったらしい名の感想を問い、アーメスタも同意を求めてきた。
「……それは、まあ……直訳だと確かに語呂は悪いけど……」
思ったことはあったが本人たちの前で言うことはためらわれたので、リスタは適当に言葉を濁した。
その後、一同はリビングに場所を移し、巳琴も交えて話の続きが披露された。この家に滞在中というブラッキーもその場に同席していたが、直接会話を交わすことはなかった。
祖先の遺したものを守る子孫たちが今していること。研究所を構えた所以。ホテルを引き取った経緯。琴牙自身の経歴。ようやく近年の話に近づいてきたことに内心安堵しつつ、リスタは思う。
自分にはこういった、誇らしく語れるような過去はあっただろうか。
かつて自分が共に過ごしていた仲間たちはこういうとき何と言っただろう。
あるいは……あのリザードンだったら、さっきの質問に対して何かもっときついことをストレートに言っていたのだろうか、と。
『せっかく由緒ある名前を譲られてるのにわざわざ先代に遠慮して通称なんか考えるなら襲名した意味ないとは思わないわけ? かぶっちゃうの気にするってことは15代目は継いだ名前そのままで呼ばれてたんだよね、じゃあ歴代の14匹はどう呼び分けてたわけ?』
もしその書斎に居合わせていたら、そんなことを立て板に水のごとくしゃべっていたかもしれない、そのリザードンは。
ヒロは、またしても単独でハクタイシティを訪れていた。先週以来の訪問となった今回はちょうど非ポケモンの住人もいるタイミングで、彼は留守番のポケモンには語らなかった目的を今度こそ正直に話した。
「あんたたち、リスタが置いてった分体を捕まえて保存してるんだってね。『ある』ことは確認してるからごまかしても無駄だから。で、それに会わせてほしいんだけど」
「……どうして?」
応答した住人――エリーは目を丸くした。
そして返ってきた答えに口も丸く開けることになる。
「話がしたい。あれが残留思念の実体化した塊だっていうなら、ちょっとはリスタの気持ちを知ってるってことだから」
「話、って……会話になるかどうかも分からないのに?」
「口がきけない相手とでも意思疎通できる奴なら統轄本部に何人もいるじゃない。誰も協力してくれないっていうなら組織的な隠蔽を疑ってカフェにでも訴えてみることにするけど」
「脅さなくたって協力はするわよ……もう、トレーナーのこととなると急に燃え始めるんだからぁ」
エリーはわずかに肩をすくめ、それからヒロの眼前まで近づいてその頬を軽くつついた。
柔らかい声音と共にこぼれる吐息は甘く不思議な香りを含んでいる。ヒロは一瞬ふらつきそうになったが、すぐに相手の体質を思い出して自分の体に爪を立て、正気に返った。メロメロに等しい効果に惑わされている場合じゃない。
「……で、具体的には誰だったら一番早く協力してくれるわけ?」
「順番間違えてるわよ、ヒロちゃん。そういうときは先に協力取り付けて、それから物を取りに来るんでしょ?」
「協力を申し出てる間に肝心の物を隠さないとも限らないし。とりあえず先にその分体を渡してよ」
睨みつけてくるヒロの表情には明らかな警戒と疑念が浮かんでいる。
エリーは組織が抱える問題――自分たちで“彼女”の更正プログラムを組めない重大な理由――を内心思い起こし、それでも笑顔を作り続けるしかなかった。
ある夜、就寝前の時間にリスタは一人、家の外へ抜け出した。
彼女は前日にも同じように外へ出ていたが、そのときは庭の散歩と偽って玄関を出てから例の手段で姿を隠し、「本物の」カフェを有するあの島へ足を運んでいた。前にカフェだかで聞いた言葉をふと思い出し、真意を確かめてみたくなったのだ。
しかし目的は達成できなかった。言葉が指し示す舞台、秘湯へとたどりついたまでは良かったが、程なく他の誰かが近づいてきたのに気づいて反射的に姿を隠してしまったからだ。
そのまま逃げ出していたのは、現れた人物の声につい最近聞いた覚えがあったからか。それとも……その人と、一緒に来たらしい人の声に、何かを感じたからだろうか。
自分が間に割って入るどころか、触れることさえ許されなさそうな、妙な寂しさを感じさせるもの。
それこそまさに「幸せな空気」だったのだろう。
リスタが自ら島へ足を運んだと知った響音家の住人たちは、もう彼女のことを止めはしなかった。たとえ行き先を聞いて適当にごまかされても。
たとえ彼女が誰とも仲良くしていないとしても。
----------
ヒロの長台詞は予想であって実際には発されてないことを念のため補足しつつ。
今日までの話を書いていくのだけれど、本当は書こうと思って暖めていた一場面のことをすっかり思い出せなくなったことに軽く焦った。
メモすると逆にそのまま使いづらくなることも多いけど、頭の中にとどめておくとそれはそれで忘れるから難しい。
何をしてほしいのか。
問われ、一つ答えてみた、その翌日。リスタは響音家の書斎に呼び出された。
「アーメスター、ウチの歴史どこー?」
「どこの年代からいってや。最初っからか?」
(そこから!?)
ドーブルの呼びかけに応じ、眼鏡を掛けたミロカロスが本棚の一つから古文書らしき書籍を取り出してきたのを見た彼女は、自分が投げた球がまたしても思わぬ方向に飛ばされてしまったことを悟った。
響音家は数百年の歴史を誇る名家であるという。琴牙は彼らの祖先がシオンの地に祭られる稲荷神と共に悪霊を封じ繁栄の礎を築いた話に始まり、子孫が受け継いだもの、残された名の意味をつらつらと語っていった。
悪霊の長は今もポケモンタワーの地下に眠っているという。確か農耕や商業の神であるはずの稲荷神がその管理を任されているのは、おそらく単にその土地に住まう神格だったからという理由だろう。琴牙はそのあたりについては詳しく説明しなかったので聞き手はそんな風に見当をつけ、先日訪れた慰霊塔のことも思い出したが、さすがに手を出そうとは思わなかった。
「そこへのルートは主人らとわいしか知らん。鍵はさぁ、どこやろね。」
という発言は聞く人が聞けば十分な挑発になるんじゃないか、とは感じたが。
さて、紐解かれた歴史の本が本棚へ戻された後、二人の語り手はその片割れの名前についての話を始めた。ホウエン出身というこのミロカロスは、先代からの指名で響音家の後見人に選ばれ、『天星(アマボシ)』の名を受け継いだという。
「ただそのままだと15代目とかぶっちゃうんで、あまの漢字…天を雨に。星を英語にして語呂合わせしてアーメスタにしたんです。どう思います?」
「アメスターってなんかかっこわるぅないか?」
琴牙は自分で作ったらしい名の感想を問い、アーメスタも同意を求めてきた。
「……それは、まあ……直訳だと確かに語呂は悪いけど……」
思ったことはあったが本人たちの前で言うことはためらわれたので、リスタは適当に言葉を濁した。
その後、一同はリビングに場所を移し、巳琴も交えて話の続きが披露された。この家に滞在中というブラッキーもその場に同席していたが、直接会話を交わすことはなかった。
祖先の遺したものを守る子孫たちが今していること。研究所を構えた所以。ホテルを引き取った経緯。琴牙自身の経歴。ようやく近年の話に近づいてきたことに内心安堵しつつ、リスタは思う。
自分にはこういった、誇らしく語れるような過去はあっただろうか。
かつて自分が共に過ごしていた仲間たちはこういうとき何と言っただろう。
あるいは……あのリザードンだったら、さっきの質問に対して何かもっときついことをストレートに言っていたのだろうか、と。
『せっかく由緒ある名前を譲られてるのにわざわざ先代に遠慮して通称なんか考えるなら襲名した意味ないとは思わないわけ? かぶっちゃうの気にするってことは15代目は継いだ名前そのままで呼ばれてたんだよね、じゃあ歴代の14匹はどう呼び分けてたわけ?』
もしその書斎に居合わせていたら、そんなことを立て板に水のごとくしゃべっていたかもしれない、そのリザードンは。
ヒロは、またしても単独でハクタイシティを訪れていた。先週以来の訪問となった今回はちょうど非ポケモンの住人もいるタイミングで、彼は留守番のポケモンには語らなかった目的を今度こそ正直に話した。
「あんたたち、リスタが置いてった分体を捕まえて保存してるんだってね。『ある』ことは確認してるからごまかしても無駄だから。で、それに会わせてほしいんだけど」
「……どうして?」
応答した住人――エリーは目を丸くした。
そして返ってきた答えに口も丸く開けることになる。
「話がしたい。あれが残留思念の実体化した塊だっていうなら、ちょっとはリスタの気持ちを知ってるってことだから」
「話、って……会話になるかどうかも分からないのに?」
「口がきけない相手とでも意思疎通できる奴なら統轄本部に何人もいるじゃない。誰も協力してくれないっていうなら組織的な隠蔽を疑ってカフェにでも訴えてみることにするけど」
「脅さなくたって協力はするわよ……もう、トレーナーのこととなると急に燃え始めるんだからぁ」
エリーはわずかに肩をすくめ、それからヒロの眼前まで近づいてその頬を軽くつついた。
柔らかい声音と共にこぼれる吐息は甘く不思議な香りを含んでいる。ヒロは一瞬ふらつきそうになったが、すぐに相手の体質を思い出して自分の体に爪を立て、正気に返った。メロメロに等しい効果に惑わされている場合じゃない。
「……で、具体的には誰だったら一番早く協力してくれるわけ?」
「順番間違えてるわよ、ヒロちゃん。そういうときは先に協力取り付けて、それから物を取りに来るんでしょ?」
「協力を申し出てる間に肝心の物を隠さないとも限らないし。とりあえず先にその分体を渡してよ」
睨みつけてくるヒロの表情には明らかな警戒と疑念が浮かんでいる。
エリーは組織が抱える問題――自分たちで“彼女”の更正プログラムを組めない重大な理由――を内心思い起こし、それでも笑顔を作り続けるしかなかった。
ある夜、就寝前の時間にリスタは一人、家の外へ抜け出した。
彼女は前日にも同じように外へ出ていたが、そのときは庭の散歩と偽って玄関を出てから例の手段で姿を隠し、「本物の」カフェを有するあの島へ足を運んでいた。前にカフェだかで聞いた言葉をふと思い出し、真意を確かめてみたくなったのだ。
しかし目的は達成できなかった。言葉が指し示す舞台、秘湯へとたどりついたまでは良かったが、程なく他の誰かが近づいてきたのに気づいて反射的に姿を隠してしまったからだ。
そのまま逃げ出していたのは、現れた人物の声につい最近聞いた覚えがあったからか。それとも……その人と、一緒に来たらしい人の声に、何かを感じたからだろうか。
自分が間に割って入るどころか、触れることさえ許されなさそうな、妙な寂しさを感じさせるもの。
それこそまさに「幸せな空気」だったのだろう。
リスタが自ら島へ足を運んだと知った響音家の住人たちは、もう彼女のことを止めはしなかった。たとえ行き先を聞いて適当にごまかされても。
たとえ彼女が誰とも仲良くしていないとしても。
----------
ヒロの長台詞は予想であって実際には発されてないことを念のため補足しつつ。
今日までの話を書いていくのだけれど、本当は書こうと思って暖めていた一場面のことをすっかり思い出せなくなったことに軽く焦った。
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プロフィール
HN:
Rista
HP:
性別:
非公開
自己紹介:
化屋月華堂(親サイト)&カフェ「パーティ」(子サイト)管理人。今のところ活動は後者の方が活発。
一応今は社会人なので控えめに動いてるつもりだが、その割に子供じみた言動も多々ある。自覚あり。
ちなみにブログ名は“カフェパにのめり込んで離れられなくなった人”を指す造語に由来。
あなたは大丈夫ですか?
一応今は社会人なので控えめに動いてるつもりだが、その割に子供じみた言動も多々ある。自覚あり。
ちなみにブログ名は“カフェパにのめり込んで離れられなくなった人”を指す造語に由来。
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