Party Syndromeの現場に踊る足跡の記録。
続き。
自分でも具体的なゴールがいまいち見えていない。
でも前のようなぐだぐだにはしたくないので、毎回、テーマだけは考えるようにしている。
自分でも具体的なゴールがいまいち見えていない。
でも前のようなぐだぐだにはしたくないので、毎回、テーマだけは考えるようにしている。
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日々は今日も平穏に過ぎる。
強い日差しはほとんど夏のそれに等しい、そんな空の下、リスタは琴牙とそのポケモンたちに誘われバドミントンに参加した。
といっても彼女の動きは鈍く、間違いなく彼らの足を引っ張っていた。日頃から走り回り遊んでいるポケモンたちとの比較は野暮としても、島やその外で騒ぎを起こしていたときの彼女自身に比べても、明らかに精彩を欠いている。
思えば当時はほとんど気合い(というか殺意)に突き動かされるまま走っていた。自身の身体能力など気にしていなかったが、時折は自分のスペックをも無視した無茶な動きを平気でこなしていたような気もする。
だとしたら、今の私を動かしているのは何?
思っている間にシャトルは急角度で打ち上げられる軌道を描き、無情にもリスタの頭上を通り過ぎて背後へ落ちていった。よそ見しないでと横から言われたことでようやく彼女は余計なことを考えていたと気づき、体の動きが頭で考える動きに追いつかないことも諦めることにした。
そうした途端、多少マシに動けるようになった。
「で、です。」
琴牙がリスタに話しかけてきたのは夕食後のことだった。
それまでの話題から何かを思い出して振ってきたわけではない。皿を下げ終わって手が空いた頃、単純に良いタイミングだったというだけだろう。
「この前、リスタさんは『ボクも自分の気持ちを知ろうともしてない。』っていってましたよね?」
「……そうね、言ったわね……」
ここからまた、違う方向に話を流されて持論の主張に持って行かれるのか。リスタは思わず身構えていたが、琴牙は彼なりの真面目な表情らしい顔――何しろドーブルの姿だ、同じ表情でも人間とは印象が違ってくる――で、こう言った。
「そういうわけでして…リスタさん。リスタさんはどうしてほしいですか?」
すぐに返事が出来なかった。
それは予想だにしない言葉だったが、しかし不思議と困惑は覚えなかった。彼女はこうも思った……「もっと早くそれを聞いてくれれば」と。
もしかしたら心のどこかで、そう言ってくれる人を待っていたのかもしれない。
「だーってボクサイキッカーじゃないですから、リスタさんの気持ちを知れないですもの!w」
アッハッハ、と笑いながら断言する琴牙を見下ろし、リスタは思わず呟いた。
「……ポケモンのコンディションは一目で分かるのに?」
人間の顔からは何も読み取れないの?
口に出した直後に後悔した。多分読み取れないのは自分も同じで、だからこそ二度も同じ轍を踏んで大事なものを失ったというのに。
何か言われる前にと、まず今の発言を取り消してから、こう続ける。
「そうね……あなた自身の話を聞かせてほしい。どういうポケモンが好きなのかは散々聞いたけど、考えてみたらそこしか知らないもの」
今までの逃走と闘争を繰り返す生活と何が違うって。
一人の人間として扱われた。事情を聞かずに迎えてくれた。家族の一員と等しい形で接してくれた。それはもしかしたら幸せなことなのかもしれない。喜ぶべきことなのかもしれない――前に同じような形で自分を招き入れた「あの人たち」を思い出しさえしなければ。
望むものはすべて与えても、自分のことは何一つ教えてくれなかった、あの男の姿がそこに重ならなければ。
「私だけ何も知らないまま踊らされるのはもう嫌なのよ」
テーブルの上に整然と並んだトランプのカードたち。
絵札に限らず数字の札にもすべてノーマルタイプのポケモンが描かれている手の込んだカードを使って、マグとタナトスは一対一の勝負をしていた。種目は神経衰弱。両者ともエスパーだがもちろん超能力は使用禁止だ。
「よし、もらった」
マグの手が裏返しのカードをテンポ良くめくっていく。3連続でペアを引き当て、まとめて手元に納めていった。
「なかなかやりますね」
「あんたこそいい線いってるじゃないか」
彼女が連れてきた黒いヒノアラシ、陽春は少し離れた場所でピカチュウのトキと遊んでいる。最初は勝負を見守っていたが、一度応援のつもりでマグにヒントを与えてしまったのでテーブルから外された。しかしやはり気になるのだろう。時折積み木遊びの手を止めては親の姿をじっと見ていた。
「前はこうやってみんなで遊んでたっけな」
「そうですね。今は皆さん忙しいですし、分かれて住むようになってからは会うこともなくなりましたし」
「行き来の制限は解除されたんだろ?」
「ええ、何でも例の異常現象は収束したと判定されたそうです。前のように一緒に暮らすのはさすがに難しいと思いますが、今度の夏にはカントーの方々が休みを取ってこちらへ遊びに来る予定になってます」
「そうなると、メアリーたちもそろそろ引き取る頃か」
「カインは最初からそのつもりで動いてますよ」
「やっぱり……ちっ、外した」
悩んだ末にめくった札には違う数字が書かれていた。
「私の番ですね。……結局面会できたのは新年の一度だけでしたから。人間と違ってポケモンは手続きなしで敷地に入っても怒られませんが、まずポケモンだけでホウエンまで行くのが難しいですからねぇ」
「あいつのことだから陸路は難なく走り抜けるだろうけど、問題は海だからな」
「草ポケモンは水に強いといってもさすがに海水は無理でしょう……ああ、分かりました。いただいていきますよ」
1枚目をめくった直後にタナトスは宣言し、
「え」
聞き返そうとしたマグの言葉を待たず、細い指が次々とカードを表に返していった。一気に4ペア。
----------
全部の筋書きが見えてないと書けない人と、見えてない方が書き進められる人がいる……という話をどこかで聞いていた気がする。
ちなみにノーマルタイプのポケモンはシンオウ図鑑までで80種類います。
水が92種類。飛行が64種類。草が55種類。エスパーが53種類。
単一タイプでトランプのデッキ(世界標準で52枚+ジョーカー)を作れるのはこの5タイプだけです。
日々は今日も平穏に過ぎる。
強い日差しはほとんど夏のそれに等しい、そんな空の下、リスタは琴牙とそのポケモンたちに誘われバドミントンに参加した。
といっても彼女の動きは鈍く、間違いなく彼らの足を引っ張っていた。日頃から走り回り遊んでいるポケモンたちとの比較は野暮としても、島やその外で騒ぎを起こしていたときの彼女自身に比べても、明らかに精彩を欠いている。
思えば当時はほとんど気合い(というか殺意)に突き動かされるまま走っていた。自身の身体能力など気にしていなかったが、時折は自分のスペックをも無視した無茶な動きを平気でこなしていたような気もする。
だとしたら、今の私を動かしているのは何?
思っている間にシャトルは急角度で打ち上げられる軌道を描き、無情にもリスタの頭上を通り過ぎて背後へ落ちていった。よそ見しないでと横から言われたことでようやく彼女は余計なことを考えていたと気づき、体の動きが頭で考える動きに追いつかないことも諦めることにした。
そうした途端、多少マシに動けるようになった。
「で、です。」
琴牙がリスタに話しかけてきたのは夕食後のことだった。
それまでの話題から何かを思い出して振ってきたわけではない。皿を下げ終わって手が空いた頃、単純に良いタイミングだったというだけだろう。
「この前、リスタさんは『ボクも自分の気持ちを知ろうともしてない。』っていってましたよね?」
「……そうね、言ったわね……」
ここからまた、違う方向に話を流されて持論の主張に持って行かれるのか。リスタは思わず身構えていたが、琴牙は彼なりの真面目な表情らしい顔――何しろドーブルの姿だ、同じ表情でも人間とは印象が違ってくる――で、こう言った。
「そういうわけでして…リスタさん。リスタさんはどうしてほしいですか?」
すぐに返事が出来なかった。
それは予想だにしない言葉だったが、しかし不思議と困惑は覚えなかった。彼女はこうも思った……「もっと早くそれを聞いてくれれば」と。
もしかしたら心のどこかで、そう言ってくれる人を待っていたのかもしれない。
「だーってボクサイキッカーじゃないですから、リスタさんの気持ちを知れないですもの!w」
アッハッハ、と笑いながら断言する琴牙を見下ろし、リスタは思わず呟いた。
「……ポケモンのコンディションは一目で分かるのに?」
人間の顔からは何も読み取れないの?
口に出した直後に後悔した。多分読み取れないのは自分も同じで、だからこそ二度も同じ轍を踏んで大事なものを失ったというのに。
何か言われる前にと、まず今の発言を取り消してから、こう続ける。
「そうね……あなた自身の話を聞かせてほしい。どういうポケモンが好きなのかは散々聞いたけど、考えてみたらそこしか知らないもの」
今までの逃走と闘争を繰り返す生活と何が違うって。
一人の人間として扱われた。事情を聞かずに迎えてくれた。家族の一員と等しい形で接してくれた。それはもしかしたら幸せなことなのかもしれない。喜ぶべきことなのかもしれない――前に同じような形で自分を招き入れた「あの人たち」を思い出しさえしなければ。
望むものはすべて与えても、自分のことは何一つ教えてくれなかった、あの男の姿がそこに重ならなければ。
「私だけ何も知らないまま踊らされるのはもう嫌なのよ」
テーブルの上に整然と並んだトランプのカードたち。
絵札に限らず数字の札にもすべてノーマルタイプのポケモンが描かれている手の込んだカードを使って、マグとタナトスは一対一の勝負をしていた。種目は神経衰弱。両者ともエスパーだがもちろん超能力は使用禁止だ。
「よし、もらった」
マグの手が裏返しのカードをテンポ良くめくっていく。3連続でペアを引き当て、まとめて手元に納めていった。
「なかなかやりますね」
「あんたこそいい線いってるじゃないか」
彼女が連れてきた黒いヒノアラシ、陽春は少し離れた場所でピカチュウのトキと遊んでいる。最初は勝負を見守っていたが、一度応援のつもりでマグにヒントを与えてしまったのでテーブルから外された。しかしやはり気になるのだろう。時折積み木遊びの手を止めては親の姿をじっと見ていた。
「前はこうやってみんなで遊んでたっけな」
「そうですね。今は皆さん忙しいですし、分かれて住むようになってからは会うこともなくなりましたし」
「行き来の制限は解除されたんだろ?」
「ええ、何でも例の異常現象は収束したと判定されたそうです。前のように一緒に暮らすのはさすがに難しいと思いますが、今度の夏にはカントーの方々が休みを取ってこちらへ遊びに来る予定になってます」
「そうなると、メアリーたちもそろそろ引き取る頃か」
「カインは最初からそのつもりで動いてますよ」
「やっぱり……ちっ、外した」
悩んだ末にめくった札には違う数字が書かれていた。
「私の番ですね。……結局面会できたのは新年の一度だけでしたから。人間と違ってポケモンは手続きなしで敷地に入っても怒られませんが、まずポケモンだけでホウエンまで行くのが難しいですからねぇ」
「あいつのことだから陸路は難なく走り抜けるだろうけど、問題は海だからな」
「草ポケモンは水に強いといってもさすがに海水は無理でしょう……ああ、分かりました。いただいていきますよ」
1枚目をめくった直後にタナトスは宣言し、
「え」
聞き返そうとしたマグの言葉を待たず、細い指が次々とカードを表に返していった。一気に4ペア。
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全部の筋書きが見えてないと書けない人と、見えてない方が書き進められる人がいる……という話をどこかで聞いていた気がする。
ちなみにノーマルタイプのポケモンはシンオウ図鑑までで80種類います。
水が92種類。飛行が64種類。草が55種類。エスパーが53種類。
単一タイプでトランプのデッキ(世界標準で52枚+ジョーカー)を作れるのはこの5タイプだけです。
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HN:
Rista
HP:
性別:
非公開
自己紹介:
化屋月華堂(親サイト)&カフェ「パーティ」(子サイト)管理人。今のところ活動は後者の方が活発。
一応今は社会人なので控えめに動いてるつもりだが、その割に子供じみた言動も多々ある。自覚あり。
ちなみにブログ名は“カフェパにのめり込んで離れられなくなった人”を指す造語に由来。
あなたは大丈夫ですか?
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