Party Syndromeの現場に踊る足跡の記録。
続き。
混在するいろんな記憶。
混在するいろんな記憶。
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今日もまた、例のカフェバーに連れて行かれた。
そこには仲間と一緒にはしゃぎまわるポケモンたちがいて、いろんなポケモンとのスキンシップを勧めてくるドーブルがいて、町の人たちも普通に出入りしていて。最近来た3匹の客人たちの姿もある。
こうやって一方的につきあわされるのにも慣れてきた。黙っていればきっと何事もなく一日が終わるだろう。
しかし顔を上げた瞬間、無難でいようとする思考は吹き飛ばされた。
武装した物々しい集団が店になだれ込んでくる。
そこかしこで攻撃の火花が散り、耳を裂くような轟音が空間を蹂躙する、その中ではっきりと聞こえる声があった。
――大人しくしていれば安全でいられるとでも思ってた?
気がつくと、周囲にいた客が全員、集団の側に回っていた。もちろんドーブルとその仲間も。
彼らの後ろに誰かの影を見たような気がしたがはっきりとは見えない。
見る暇がない。
――勝手に信用する方が悪いんだよ。
ポケモンたちがその口に、前足に、尻尾に、力を溜めて。
人間たちも武器を構えて。
一斉に放たれた攻撃が、光の束となって……自分の身体を 貫いて … …
彼女は飛び跳ねるように起き上がった。
1ヶ月前から寝泊まりの場所としている元ホテルの一室。誰が開けたのか窓辺のカーテンが揺れていて、外にはいつもと変わらない朝が訪れている。
「……夢……」
ため息に近い呟きをこぼす。自分の息がかなり上がっていることに気がついた直後、冷たい感触が左の頬を滑り落ちた。
手元に視線を落とすと、黒いしずくが袖の上に落ちてシミと腐臭を広げていた。
「………………」
気づけば枕もシーツも真っ黒に染まっている。
したたり落ちるしずくの経路をたどって頭に触れ、ぐちゃり、とした感触を覚えて手を止める。ここでようやく呼吸が落ち着き、身体全体に感覚が戻ってきた。
顔の左半分、さらに首から肩にかけて、体の表面が溶けかかっていた。
ろうそくを火であぶったように。
生命活動を止めた個体が分解されゆくように。
ベッドを降りようと体を動かすと、自分を起こしに来たポケモンと視線が合った。
「………………」
相手が何と言ったのか。そもそも何か言ったのか、彼女は気にもとめない。
しかし逃げることはしなかった。
空いている右手をハサミに変えて距離を作りながら、崩れた顔を添えた左手でゆっくりとなぞる。粘土を固めるように力を込めると色だけは元通りになったが、減った体積と染みついた悪臭はすぐには消えてくれなかった。
どちらも水で洗い流せば落ちるのだけれど。
厄介な怪物を他人に預けてちょうど一ヶ月を迎えた日。
ハクタイシティ郊外、統轄本部の拠点は珍しい客人を迎えた。
「ヒロさん? もう大丈夫なんですか?」
「怪我ならとっくに治った。もう仕事にも復帰してるし、全然平気。それよりこっちの用件なんだけど」
訪ねてきたリザードンを出迎えたのは1匹のエーフィだった。いきなり本題に入ろうとするせっかちな彼をどうにかなだめ、この家に住む人間たちが全員不在であることを伝えると、それでもいいからと頼み事を切り出された。
「見せてほしいものがあるんだ。今は“それ”があるかどうか確かめるだけでいいから」
一時間後。
エーフィは最初に帰宅した住人に来客からの伝言をそのまま伝えた。反応は渋い顔と疑問符を伴うものだった。
「そんなもの、何に使うんでしょう……」
指定の“それ”を現在預かっている立場として、ニーナは首をかしげる。伝言をヒントに推測できる目的はとても不可解で、彼女が知る限り、その客が置かれる立場から考えそうな手段とは全く結びつかないはずだった。
この弱気な技術者の仕事場、大きな作業台と物々しい機械が幅を利かせる空間の一室。隅に置かれた冷蔵庫を開けると種々雑多な薬瓶の中に一つだけ目立つ箱。厳重に密封されたその箱をニーナは慎重に取り出したが、数秒とせず思い直して元に戻した。
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転換点を探っている。
打開策をたぐり寄せようと糸の先端を探している。
頑張ってるのは人間たちだけじゃない。
今日もまた、例のカフェバーに連れて行かれた。
そこには仲間と一緒にはしゃぎまわるポケモンたちがいて、いろんなポケモンとのスキンシップを勧めてくるドーブルがいて、町の人たちも普通に出入りしていて。最近来た3匹の客人たちの姿もある。
こうやって一方的につきあわされるのにも慣れてきた。黙っていればきっと何事もなく一日が終わるだろう。
しかし顔を上げた瞬間、無難でいようとする思考は吹き飛ばされた。
武装した物々しい集団が店になだれ込んでくる。
そこかしこで攻撃の火花が散り、耳を裂くような轟音が空間を蹂躙する、その中ではっきりと聞こえる声があった。
――大人しくしていれば安全でいられるとでも思ってた?
気がつくと、周囲にいた客が全員、集団の側に回っていた。もちろんドーブルとその仲間も。
彼らの後ろに誰かの影を見たような気がしたがはっきりとは見えない。
見る暇がない。
――勝手に信用する方が悪いんだよ。
ポケモンたちがその口に、前足に、尻尾に、力を溜めて。
人間たちも武器を構えて。
一斉に放たれた攻撃が、光の束となって……自分の身体を 貫いて … …
彼女は飛び跳ねるように起き上がった。
1ヶ月前から寝泊まりの場所としている元ホテルの一室。誰が開けたのか窓辺のカーテンが揺れていて、外にはいつもと変わらない朝が訪れている。
「……夢……」
ため息に近い呟きをこぼす。自分の息がかなり上がっていることに気がついた直後、冷たい感触が左の頬を滑り落ちた。
手元に視線を落とすと、黒いしずくが袖の上に落ちてシミと腐臭を広げていた。
「………………」
気づけば枕もシーツも真っ黒に染まっている。
したたり落ちるしずくの経路をたどって頭に触れ、ぐちゃり、とした感触を覚えて手を止める。ここでようやく呼吸が落ち着き、身体全体に感覚が戻ってきた。
顔の左半分、さらに首から肩にかけて、体の表面が溶けかかっていた。
ろうそくを火であぶったように。
生命活動を止めた個体が分解されゆくように。
ベッドを降りようと体を動かすと、自分を起こしに来たポケモンと視線が合った。
「………………」
相手が何と言ったのか。そもそも何か言ったのか、彼女は気にもとめない。
しかし逃げることはしなかった。
空いている右手をハサミに変えて距離を作りながら、崩れた顔を添えた左手でゆっくりとなぞる。粘土を固めるように力を込めると色だけは元通りになったが、減った体積と染みついた悪臭はすぐには消えてくれなかった。
どちらも水で洗い流せば落ちるのだけれど。
厄介な怪物を他人に預けてちょうど一ヶ月を迎えた日。
ハクタイシティ郊外、統轄本部の拠点は珍しい客人を迎えた。
「ヒロさん? もう大丈夫なんですか?」
「怪我ならとっくに治った。もう仕事にも復帰してるし、全然平気。それよりこっちの用件なんだけど」
訪ねてきたリザードンを出迎えたのは1匹のエーフィだった。いきなり本題に入ろうとするせっかちな彼をどうにかなだめ、この家に住む人間たちが全員不在であることを伝えると、それでもいいからと頼み事を切り出された。
「見せてほしいものがあるんだ。今は“それ”があるかどうか確かめるだけでいいから」
一時間後。
エーフィは最初に帰宅した住人に来客からの伝言をそのまま伝えた。反応は渋い顔と疑問符を伴うものだった。
「そんなもの、何に使うんでしょう……」
指定の“それ”を現在預かっている立場として、ニーナは首をかしげる。伝言をヒントに推測できる目的はとても不可解で、彼女が知る限り、その客が置かれる立場から考えそうな手段とは全く結びつかないはずだった。
この弱気な技術者の仕事場、大きな作業台と物々しい機械が幅を利かせる空間の一室。隅に置かれた冷蔵庫を開けると種々雑多な薬瓶の中に一つだけ目立つ箱。厳重に密封されたその箱をニーナは慎重に取り出したが、数秒とせず思い直して元に戻した。
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頑張ってるのは人間たちだけじゃない。
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性別:
非公開
自己紹介:
化屋月華堂(親サイト)&カフェ「パーティ」(子サイト)管理人。今のところ活動は後者の方が活発。
一応今は社会人なので控えめに動いてるつもりだが、その割に子供じみた言動も多々ある。自覚あり。
ちなみにブログ名は“カフェパにのめり込んで離れられなくなった人”を指す造語に由来。
あなたは大丈夫ですか?
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