Party Syndromeの現場に踊る足跡の記録。
続き。
案の定帰りが遅くなってきた。カフェに顔を出せないどころか夜はほとんど何も出来ない(早く寝ろとプレッシャーをかけられる)ことが残念でならない。
でもメールチェックする余裕は出てきたので、時間内にもう一つ何かできるだけの手際の良さが欲しいところ。
……今日は多分、行ける。
案の定帰りが遅くなってきた。カフェに顔を出せないどころか夜はほとんど何も出来ない(早く寝ろとプレッシャーをかけられる)ことが残念でならない。
でもメールチェックする余裕は出てきたので、時間内にもう一つ何かできるだけの手際の良さが欲しいところ。
……今日は多分、行ける。
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「この状況で迎えに行くのは無理そうだねー」
朱月は両まぶたを閉じ、壁の方を向いて浮遊した姿勢で、そんなことを言った。
彼は今、外にいる三眼の女が見ているという景色を共有して楽しんでいる。焦点を合わせたのは島の中から霧を飛び越え遙か彼方。シオンタウンの一角に渦巻く異様なエネルギーをつぶさに“観察”しているらしい。
「狐君なんかきっとすぐ目をつけられて、もみくちゃにされちゃうよ」
「ソんなに酷イの?」
「何人かと話をしてるんだけど、揃いも揃って相当強いこだわりを持ってる。うちであれに対抗できるのは葵ちゃんくらいかなぁ」
「アレの同類かよ……」
ふーん、とあまり興味のなさそうな相づちを返す仮面男ラキスに対し、マックスはげんなりした顔で紅茶のカップに口をつけた。
島の地下に密かに建造された秘密基地。現在はラキスが占領し魔術師の工房と化しているその場所で、3人は隅っこに置かれたローテーブルを囲んでいた。2人までは普段通りの格好だが、マックスだけは仕事がオフなので私服姿である。
「こだわりの内容はみんな違うみたいだけどね?」
「あんな奴がたくさんいてたまるか!」
この場の全員に分かり切っていることでも叫ばずにいられなかった。
引き合いに出された葵は長いこと夜の仕事をしているが、その職歴以上に長いキャリアを持つ昆虫マニアでもある。最近ではアリアドスのリアラを巡ってサーリグと対立しており、トレーナー権を譲るようたびたび要求していること、そのたびに邪視で返り討ちに遭っていることも本部長は当然把握していた。
そんな女に虫ポケモンの愛で方など聞いてみようものなら、話が長引かないわけがない。どこぞのドーブルと比較するまでもなくその光景は自然と頭に浮かんだ。
「……そレで、ドれを選ンだ?」
ラキスがのんびりした声で口を挟む。空になったカップを弟子に差し出し、2杯目の紅茶をついでもらいながら。
「んー…………」
朱月は閉じた目をこらし、意味がないことを承知で身を乗り出した。
「……固まってるね。完璧に気圧されちゃってて、選ぶどころじゃないみたい」
扱いが変わって数日が経った日の夜中。
彼女が琴牙から呼び出しを受けた場所は、今度は例の「偽物」ではなかった。
ポケモンタワー。
以前の生活をしていた頃も含め、一度も足を踏み入れたことのない、慰霊塔の屋上。
「ねぇリスタさん。」
集まってきたゴーストたちにヴァイオリンの音色を聞かせながら、琴牙は提案してくる。
「今カフェがどうなっているか、見に行ってみたいですか?」
手元が狂ったのか奏でていたメロディに変な音が混じった。聴衆の抗議に軽い謝罪で答えてから演奏を再開し、話も続ける。
「…ええ、と、どこまで話したっけ……あ、あ、そうそう。」
ヴァイオリンによる演奏に一区切りをつけ、同じく持ってきたリュートに持ち替えながら、ドーブルはこう言った。
「…行ってみたいのなら、リスタとして、じゃなくて、別の誰かとしていってみたらどうですか?」
その、正面で。
「無駄よ。」
彼女は、頭に角を生やした人型の怪物は、きっぱりと否定した。
「そんなことに何の意味があるの。今カフェがどうなってるかなんて見るまでもないわ」
どんな形で在ったとしても、見たらきっと壊したくなる。
「それに、私がおとなしく息を潜めていられると思ってるの?」
今この瞬間もあなたの顔を切り刻みたくてしょうがないのに。
……思ったことを素直に言ったら、このポケモンは何と言うだろう。怯えはしないけど、やっぱり怒るんだろうか。あの人たちみたいに。
それ以前の問題として。
自分にバケモノの血を与えた人物が「何」であるかを考えれば、別人になりすましたところで恐らく無意味だろう。
そんな、先に頭をよぎった推測の方は、敢えて言わなかった。
それから数日の間、彼女は一見、おとなしくしていた。
しかしカフェの話題に限ってはその一切を無視し、恐怖心を見せることも、興味を示すこともなかった。
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講座の面々と統轄本部サイドで守備範囲が重複しなかったのは幸運な偶然。
でも似たような連中が身内にいるってだけで、きっと本部長にとっては頭痛の種だろうな。
「この状況で迎えに行くのは無理そうだねー」
朱月は両まぶたを閉じ、壁の方を向いて浮遊した姿勢で、そんなことを言った。
彼は今、外にいる三眼の女が見ているという景色を共有して楽しんでいる。焦点を合わせたのは島の中から霧を飛び越え遙か彼方。シオンタウンの一角に渦巻く異様なエネルギーをつぶさに“観察”しているらしい。
「狐君なんかきっとすぐ目をつけられて、もみくちゃにされちゃうよ」
「ソんなに酷イの?」
「何人かと話をしてるんだけど、揃いも揃って相当強いこだわりを持ってる。うちであれに対抗できるのは葵ちゃんくらいかなぁ」
「アレの同類かよ……」
ふーん、とあまり興味のなさそうな相づちを返す仮面男ラキスに対し、マックスはげんなりした顔で紅茶のカップに口をつけた。
島の地下に密かに建造された秘密基地。現在はラキスが占領し魔術師の工房と化しているその場所で、3人は隅っこに置かれたローテーブルを囲んでいた。2人までは普段通りの格好だが、マックスだけは仕事がオフなので私服姿である。
「こだわりの内容はみんな違うみたいだけどね?」
「あんな奴がたくさんいてたまるか!」
この場の全員に分かり切っていることでも叫ばずにいられなかった。
引き合いに出された葵は長いこと夜の仕事をしているが、その職歴以上に長いキャリアを持つ昆虫マニアでもある。最近ではアリアドスのリアラを巡ってサーリグと対立しており、トレーナー権を譲るようたびたび要求していること、そのたびに邪視で返り討ちに遭っていることも本部長は当然把握していた。
そんな女に虫ポケモンの愛で方など聞いてみようものなら、話が長引かないわけがない。どこぞのドーブルと比較するまでもなくその光景は自然と頭に浮かんだ。
「……そレで、ドれを選ンだ?」
ラキスがのんびりした声で口を挟む。空になったカップを弟子に差し出し、2杯目の紅茶をついでもらいながら。
「んー…………」
朱月は閉じた目をこらし、意味がないことを承知で身を乗り出した。
「……固まってるね。完璧に気圧されちゃってて、選ぶどころじゃないみたい」
扱いが変わって数日が経った日の夜中。
彼女が琴牙から呼び出しを受けた場所は、今度は例の「偽物」ではなかった。
ポケモンタワー。
以前の生活をしていた頃も含め、一度も足を踏み入れたことのない、慰霊塔の屋上。
「ねぇリスタさん。」
集まってきたゴーストたちにヴァイオリンの音色を聞かせながら、琴牙は提案してくる。
「今カフェがどうなっているか、見に行ってみたいですか?」
手元が狂ったのか奏でていたメロディに変な音が混じった。聴衆の抗議に軽い謝罪で答えてから演奏を再開し、話も続ける。
「…ええ、と、どこまで話したっけ……あ、あ、そうそう。」
ヴァイオリンによる演奏に一区切りをつけ、同じく持ってきたリュートに持ち替えながら、ドーブルはこう言った。
「…行ってみたいのなら、リスタとして、じゃなくて、別の誰かとしていってみたらどうですか?」
その、正面で。
「無駄よ。」
彼女は、頭に角を生やした人型の怪物は、きっぱりと否定した。
「そんなことに何の意味があるの。今カフェがどうなってるかなんて見るまでもないわ」
どんな形で在ったとしても、見たらきっと壊したくなる。
「それに、私がおとなしく息を潜めていられると思ってるの?」
今この瞬間もあなたの顔を切り刻みたくてしょうがないのに。
……思ったことを素直に言ったら、このポケモンは何と言うだろう。怯えはしないけど、やっぱり怒るんだろうか。あの人たちみたいに。
それ以前の問題として。
自分にバケモノの血を与えた人物が「何」であるかを考えれば、別人になりすましたところで恐らく無意味だろう。
そんな、先に頭をよぎった推測の方は、敢えて言わなかった。
それから数日の間、彼女は一見、おとなしくしていた。
しかしカフェの話題に限ってはその一切を無視し、恐怖心を見せることも、興味を示すこともなかった。
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HN:
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性別:
非公開
自己紹介:
化屋月華堂(親サイト)&カフェ「パーティ」(子サイト)管理人。今のところ活動は後者の方が活発。
一応今は社会人なので控えめに動いてるつもりだが、その割に子供じみた言動も多々ある。自覚あり。
ちなみにブログ名は“カフェパにのめり込んで離れられなくなった人”を指す造語に由来。
あなたは大丈夫ですか?
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