Party Syndromeの現場に踊る足跡の記録。
続き。
やっとまとまってきた。
やっとまとまってきた。
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『なぁなぁ。そのおやつすこしわけてくれないか?』
『嫌!!』
ポケモンたちがテーブルを囲んではしゃぐ様子を、彼女は黙って見ている。
おやつに気を取られている隙に逃げようとしても、今座っている場所からではどう動こうと目立ってしまう。大人しくしているのが得策だろう――などと考えられる程度には、ようやく落ち着きを取り戻したようだった。
響音家に連れてこられてから2週間。
火傷の痛々しい痕こそ残っているが、体のふらつきや痛みは徐々に改善されていた。
着替えさせられるときにいちいち痛がらなくなった。
人の手を借りるか手すりを使えば歩けるようになった。
顔の傷も目をそらされるほどひどい状態ではなくなった。
絡まり放題だった髪にもようやく櫛が通るようになり、きれいに整えられていた。
その髪に埋もれるようにして生えていた2本の角は……余計に目立つようになっていた。
黙って見ている間に隣から手が伸びてきて、自分の分を横取りされた。それでも彼女はハサミを振り回すどころか文句一つ言わない。周りの誰かが代わりに叱る声も、実のところ、ほとんど耳に届いていなかった。
「例の件、うまく行きそうなの?」
「どうだか。何企んでんのかは敢えて訊かないようにしてるけど……」
ベッドの上に寝そべってため息をつくマックスの額を、細い指がゆっくりと撫でた。
見上げればツヤのある唇がすぐそこにある。吐息は甘い香り。油断すれば触れそうな近さを避けるように軽く身をよじると、肩にかかっていた相手の腕が逆に抱き寄せてきた。
「……やけに“真剣な”企みだから心配なんだよ」
「企まないことを期待してたみたいな言い方ね」
エリーは横になって枕に頭を乗せ、片手でマックスを押さえ込んだ姿勢のまま、自分たちの上に布団をかぶせた。視線と視線の間に布が割って入り、互いの表情が見えなくなる。
「実際そうだった。ヒロの話聞いて考えてたのはあくまで、あいつらだったらアレにも変な偏見持たずに扱ってくれるだろうってとこまでだ。俺たちと違って物騒な事件にも無縁だし、世話焼きがいっぱいいれば一人くらいには心を開くだろうと思ってたんだが」
「ところが蓋を開けてみたら?」
「お得意の神速で地雷原を爆走してるらしい。しかも故意に」
「それは……不安がる声も出るわね」
「だろ。ちなみに本人は大丈夫だと自信満々に主張してる」
エリーの胸元のあたりで布団がもぞもぞ動いた。マックスが胸を張るドーブルの姿を脳裏に思い浮かべ、首を振ったらしい。
それから遠慮がちな声が続いた。
「……なぁ、エリー。もうそろそろ行っていいよな?」
「ダメ。もうちょっと」
布団の中でぐねぐねと体を動かすマックスを、エリーは両腕で押さえにかかる。
「暑苦しいだろ」
「ぜーんぜん。むしろもっと密着したい」
「俺が暑苦しいんだよ!」
ついにマックスが吠えた。
9本の尻尾が一斉に跳ね上げられ、布団に波を起こしてエリーを襲わせた。彼女の腕が自分の顔を守ろうと交差した、その隙を逃さず、電光石火の加速でベッドから飛び降りる。その勢いのまま離れた位置にある化粧台まで一気に走って飛び乗った。
「あーっ、技使うなんてずるい! 一晩くらい別にいいじゃない、もふもふしたって減るもんじゃないでしょー!?」
エリーが頭に被さった布団をはぎ取る間に、御札をくわえたキュウコンの姿は窓の外に消えていた。
今日も集められたポケモンたちはかいがいしく身の回りの世話をする。
彼女は既にある程度は割り切って考えるようにしていたので、前ほど違和感や既視感に悩むことはなくなっていた。考えることはむしろ今後のことへとシフトする。
仮にここから逃げ出したとして、自分には帰る場所などない。
半月前に考えていたように島を奪い返すのも良いが、そうなれば入念な準備がいる。実行しようにも『 』がいたのではどうしようもない。
かといって、今更元の場所へ舞い戻ったところで、そこにいるのは自分の敵か邪魔者か障害物でしかない。
閉じたハサミの手を自分の喉元に添えた。
ここの痛みも十分に引いた。そろそろ声を出してみても良い頃だろう。
(どうせ何言ったって、肝心な部分には答えてくれないんだろうけど……、……?)
……何を勘違いしたのか、ポケモンたちが飛んできてその腕を首から引きはがした。
そして何故か怒られた。
----------
当事者視点一本では描写の広げ方に限界があったので、そろそろ次の段階へ踏み出すつもりでいる。
でもこの調子で次へ進める……のかな。本当に。
登場人物が二人いて会話が成り立つって本当に大きい、と行数の違いを見ながら思う。
『なぁなぁ。そのおやつすこしわけてくれないか?』
『嫌!!』
ポケモンたちがテーブルを囲んではしゃぐ様子を、彼女は黙って見ている。
おやつに気を取られている隙に逃げようとしても、今座っている場所からではどう動こうと目立ってしまう。大人しくしているのが得策だろう――などと考えられる程度には、ようやく落ち着きを取り戻したようだった。
響音家に連れてこられてから2週間。
火傷の痛々しい痕こそ残っているが、体のふらつきや痛みは徐々に改善されていた。
着替えさせられるときにいちいち痛がらなくなった。
人の手を借りるか手すりを使えば歩けるようになった。
顔の傷も目をそらされるほどひどい状態ではなくなった。
絡まり放題だった髪にもようやく櫛が通るようになり、きれいに整えられていた。
その髪に埋もれるようにして生えていた2本の角は……余計に目立つようになっていた。
黙って見ている間に隣から手が伸びてきて、自分の分を横取りされた。それでも彼女はハサミを振り回すどころか文句一つ言わない。周りの誰かが代わりに叱る声も、実のところ、ほとんど耳に届いていなかった。
「例の件、うまく行きそうなの?」
「どうだか。何企んでんのかは敢えて訊かないようにしてるけど……」
ベッドの上に寝そべってため息をつくマックスの額を、細い指がゆっくりと撫でた。
見上げればツヤのある唇がすぐそこにある。吐息は甘い香り。油断すれば触れそうな近さを避けるように軽く身をよじると、肩にかかっていた相手の腕が逆に抱き寄せてきた。
「……やけに“真剣な”企みだから心配なんだよ」
「企まないことを期待してたみたいな言い方ね」
エリーは横になって枕に頭を乗せ、片手でマックスを押さえ込んだ姿勢のまま、自分たちの上に布団をかぶせた。視線と視線の間に布が割って入り、互いの表情が見えなくなる。
「実際そうだった。ヒロの話聞いて考えてたのはあくまで、あいつらだったらアレにも変な偏見持たずに扱ってくれるだろうってとこまでだ。俺たちと違って物騒な事件にも無縁だし、世話焼きがいっぱいいれば一人くらいには心を開くだろうと思ってたんだが」
「ところが蓋を開けてみたら?」
「お得意の神速で地雷原を爆走してるらしい。しかも故意に」
「それは……不安がる声も出るわね」
「だろ。ちなみに本人は大丈夫だと自信満々に主張してる」
エリーの胸元のあたりで布団がもぞもぞ動いた。マックスが胸を張るドーブルの姿を脳裏に思い浮かべ、首を振ったらしい。
それから遠慮がちな声が続いた。
「……なぁ、エリー。もうそろそろ行っていいよな?」
「ダメ。もうちょっと」
布団の中でぐねぐねと体を動かすマックスを、エリーは両腕で押さえにかかる。
「暑苦しいだろ」
「ぜーんぜん。むしろもっと密着したい」
「俺が暑苦しいんだよ!」
ついにマックスが吠えた。
9本の尻尾が一斉に跳ね上げられ、布団に波を起こしてエリーを襲わせた。彼女の腕が自分の顔を守ろうと交差した、その隙を逃さず、電光石火の加速でベッドから飛び降りる。その勢いのまま離れた位置にある化粧台まで一気に走って飛び乗った。
「あーっ、技使うなんてずるい! 一晩くらい別にいいじゃない、もふもふしたって減るもんじゃないでしょー!?」
エリーが頭に被さった布団をはぎ取る間に、御札をくわえたキュウコンの姿は窓の外に消えていた。
今日も集められたポケモンたちはかいがいしく身の回りの世話をする。
彼女は既にある程度は割り切って考えるようにしていたので、前ほど違和感や既視感に悩むことはなくなっていた。考えることはむしろ今後のことへとシフトする。
仮にここから逃げ出したとして、自分には帰る場所などない。
半月前に考えていたように島を奪い返すのも良いが、そうなれば入念な準備がいる。実行しようにも『 』がいたのではどうしようもない。
かといって、今更元の場所へ舞い戻ったところで、そこにいるのは自分の敵か邪魔者か障害物でしかない。
閉じたハサミの手を自分の喉元に添えた。
ここの痛みも十分に引いた。そろそろ声を出してみても良い頃だろう。
(どうせ何言ったって、肝心な部分には答えてくれないんだろうけど……、……?)
……何を勘違いしたのか、ポケモンたちが飛んできてその腕を首から引きはがした。
そして何故か怒られた。
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当事者視点一本では描写の広げ方に限界があったので、そろそろ次の段階へ踏み出すつもりでいる。
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プロフィール
HN:
Rista
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性別:
非公開
自己紹介:
化屋月華堂(親サイト)&カフェ「パーティ」(子サイト)管理人。今のところ活動は後者の方が活発。
一応今は社会人なので控えめに動いてるつもりだが、その割に子供じみた言動も多々ある。自覚あり。
ちなみにブログ名は“カフェパにのめり込んで離れられなくなった人”を指す造語に由来。
あなたは大丈夫ですか?
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