Party Syndromeの現場に踊る足跡の記録。
カフェパ話。
FTP方面の調子が悪い。身内SSの過去ログについて、今後のあり方を検討中。
でもブログのまま残すことだけはしないつもり。これは去年の教訓。
FTP方面の調子が悪い。身内SSの過去ログについて、今後のあり方を検討中。
でもブログのまま残すことだけはしないつもり。これは去年の教訓。
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傷口を突き刺してくるように染み渡る痛みは、人を気絶から覚まさせるのに十分な威力を持っていた。しかしその瞬間にどんな悲鳴を上げたのかは直後に忘れた。最初に目に入ったものが思考を丸ごと吹っ飛ばす。
首のないバシャーモが枕元に立っていた。
「………………」
状況を飲み込めない。光景の異様さも重なり、声を出す前に息を呑んだ。
「やっと目覚めたか」
声は視界を定めていた方向の反対側から聞こえてくる。両目だけを動かしてようやく見えたのは、サイドテーブルに置かれたバシャーモの頭部。
こちらの左腕をがっちり押さえつけて包帯を巻いている首なしの体と見比べてみると、ちらっと見えた首の切断面が金属のフレームと色とりどりのコードで出来ていることに気づいた。
「……お前か……よく、それで、動けるな……」
出した声は自分でも驚くほどに弱く、かすれていた。
それでも相手には問題なく聞こえたらしい。感情の薄い答えが返される。
「こういった事態には初期の改造の段階で対処している。バッテリーが維持される限り、何ら問題はない」
「そういう問題じゃ……痛いっ、もうちょっと、丁寧に、扱えねーのかっ」
「安心しろ、傷は深くない。神経も無事のようだな」
逆に言うとそこまで深く到達していたようにも見える傷だった、ということなのか。
痛みは肩口から骨の上をなぞるようにして手首近くまで至っている。途切れのない一直線。確かに見た目はひどい怪我かもしれないが、それにしても包帯の巻き方がきつすぎるのはわざとだろうか。
「少しでも受け身が遅れていれば、腕を失っていた可能性もある。自分の強運にでも感謝しておけ」
そうだ。
あのとき。
“あれ”に斬られたことは覚えている。しかしその後、急に意識が遠のいた気がする。自分はいったいどうなったのか。
「貴様が倒れる直前、後ろから麻酔弾を撃たせた。奴は自分の攻撃で倒したものと誤解しているはずだ」
心を読まれたかのようにバシャーモが口を開いた。
撃たせた、のあたりで一人の顔を思い浮かべる。最近ある意味でたくましくなったと評判の狙撃手は、今の言葉が本当なら自分より長く“あれ”の猛攻にさらされていたはずだ。
次の言葉はたいした考えもなく、口をついて出てきた。
「……アルは……他のみんなは、無事か?」
ハクタイの拠点は1月の暗殺未遂に続き、3月の終わりにも同じ犯人の襲撃を受けている。“あれ”は馬鹿にでかい高枝切りバサミのようなものを振り回し、家の中をめちゃくちゃに破壊し、暴風のように去っていった。
それから一月も経たないうちに、災難は三度降りかかった。前回と同じく唐突に。しかも以前より大きな刃物を持参した相手と、先月の余韻を引きずるこちら側で、いずれが有利かなど聞くまでもない。
ただ、今回は今までの襲撃とは少し違った点を一つだけ持っていた。
『島を取り返しに来たの。「霧」を渡しなさい』
“あれ”は高らかにそう宣言した。一見意味不明なそれはつまり、島の根幹、セレビィたちが鍵を握ると噂される多次元間ワープゲートの支配権を引き渡せという脅迫。
統轄本部がそれの構築に初期から関わり、一度は某世界の安定を図るためにシステム管理者権限を行使していること、それを承知した上で突きつけてきた要求。
決定的な宣戦布告だった。
島を物理的に蹂躙しようと、あるいは乗っ取ろうとする連中とは違った方面からの攻略法ではあるが、こちらにとって見過ごせない要求であることに変わりはない。選べる回答は事実上一つしかなかった。
『断る』
本部長がたった一言そう呟き、次の瞬間には敵の攻撃が再開された。居合わせた仲間たちは具体的な作戦を告げられなくても自ら散開し戦闘態勢に入った。
島で交わした約束――命までは奪わない――が一種の足かせになってはいたが、単独で乗り込んできた相手を集団で追い詰めることに躊躇はなく、効果もあった。
司令塔となるべき人物が真っ先に味方の弾丸で気絶させられる、という想定外もあったものの。
結局、彼らは猛攻を耐えしのぎ敵を撤退させた。結果だけ見れば十分な勝利だった。
問いかけへの返答は一言だけだった。
それを聞いて、考えた末に、彼は包帯の端を縛っているバシャーモへ手を伸ばした。
「……サーリグ」
「何だ」
相手がこちらを見下ろす。もちろん視線は後頭部の方から降ってくる。
「メープルを呼んでくれ。話がしたい」
「代役を立てるのか?」
「ま、確かに俺の仕事は、モノムーに頼まなきゃなんねーよな。でも今回はそれだけじゃない……こっちを手伝ってくれ、って言ったらあいつ、喜んで飛んでくるから。それも言っとけ」
「承知した。存分に罵られろ」
治療を終えたバシャーモはサイドテーブルから自分の首を手に取り、片腕に抱えるという奇妙な格好でベッド脇を後にした。痛い一言を置き土産にして。
一人になった彼は、ようやく自分の身の回りを見た。ここはどうやら自分の部屋であるらしい。
左の肘は問題なく曲げられるし、痺れも感じないが、動かすとやはり痛い。ぼんやりと「傷跡は残りそうだな」と考えた。
体が重いのはきっと、心が重いせいだろう。
「クソッ……足手まといは俺の方か……」
それは今まで目をそらしてきたことだった。
下部組織にあたる会社やグループ、大半を一般ポケモンが占める面々とは異なり、「本部」に直接連なる顔ぶれはほとんどが何らかの異能力者か人外生物だ。バケモノを相手に何か出来るような特技を持たないのは技術班のニーナと、その身に抱える呪いを使いこなせていない自分くらい。
よりによって、組織の頂点に立った自分が、である。
『後は任せた』
そう言い残して姿を消した先代本部長を、今更恨んでも詮無いこと。
諦めは虚脱感に取って代わられた。
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舞台は23日未明。約一週間かけてようやく書き上げた、遅い。
根っこにいろんなものが絡まってるせいで身動きがとれなくなるのはいつものこと。
でも彼らは彼らなりの考え方を持っていて、それは時々PLの思惑をも軽々と飛び越していく。
暴走というと聞こえは悪いが、それくらいのバイタリティがあってこそ、キャラクターっていうものは魅力を掴むのではないだろうか。多分。
傷口を突き刺してくるように染み渡る痛みは、人を気絶から覚まさせるのに十分な威力を持っていた。しかしその瞬間にどんな悲鳴を上げたのかは直後に忘れた。最初に目に入ったものが思考を丸ごと吹っ飛ばす。
首のないバシャーモが枕元に立っていた。
「………………」
状況を飲み込めない。光景の異様さも重なり、声を出す前に息を呑んだ。
「やっと目覚めたか」
声は視界を定めていた方向の反対側から聞こえてくる。両目だけを動かしてようやく見えたのは、サイドテーブルに置かれたバシャーモの頭部。
こちらの左腕をがっちり押さえつけて包帯を巻いている首なしの体と見比べてみると、ちらっと見えた首の切断面が金属のフレームと色とりどりのコードで出来ていることに気づいた。
「……お前か……よく、それで、動けるな……」
出した声は自分でも驚くほどに弱く、かすれていた。
それでも相手には問題なく聞こえたらしい。感情の薄い答えが返される。
「こういった事態には初期の改造の段階で対処している。バッテリーが維持される限り、何ら問題はない」
「そういう問題じゃ……痛いっ、もうちょっと、丁寧に、扱えねーのかっ」
「安心しろ、傷は深くない。神経も無事のようだな」
逆に言うとそこまで深く到達していたようにも見える傷だった、ということなのか。
痛みは肩口から骨の上をなぞるようにして手首近くまで至っている。途切れのない一直線。確かに見た目はひどい怪我かもしれないが、それにしても包帯の巻き方がきつすぎるのはわざとだろうか。
「少しでも受け身が遅れていれば、腕を失っていた可能性もある。自分の強運にでも感謝しておけ」
そうだ。
あのとき。
“あれ”に斬られたことは覚えている。しかしその後、急に意識が遠のいた気がする。自分はいったいどうなったのか。
「貴様が倒れる直前、後ろから麻酔弾を撃たせた。奴は自分の攻撃で倒したものと誤解しているはずだ」
心を読まれたかのようにバシャーモが口を開いた。
撃たせた、のあたりで一人の顔を思い浮かべる。最近ある意味でたくましくなったと評判の狙撃手は、今の言葉が本当なら自分より長く“あれ”の猛攻にさらされていたはずだ。
次の言葉はたいした考えもなく、口をついて出てきた。
「……アルは……他のみんなは、無事か?」
ハクタイの拠点は1月の暗殺未遂に続き、3月の終わりにも同じ犯人の襲撃を受けている。“あれ”は馬鹿にでかい高枝切りバサミのようなものを振り回し、家の中をめちゃくちゃに破壊し、暴風のように去っていった。
それから一月も経たないうちに、災難は三度降りかかった。前回と同じく唐突に。しかも以前より大きな刃物を持参した相手と、先月の余韻を引きずるこちら側で、いずれが有利かなど聞くまでもない。
ただ、今回は今までの襲撃とは少し違った点を一つだけ持っていた。
『島を取り返しに来たの。「霧」を渡しなさい』
“あれ”は高らかにそう宣言した。一見意味不明なそれはつまり、島の根幹、セレビィたちが鍵を握ると噂される多次元間ワープゲートの支配権を引き渡せという脅迫。
統轄本部がそれの構築に初期から関わり、一度は某世界の安定を図るためにシステム管理者権限を行使していること、それを承知した上で突きつけてきた要求。
決定的な宣戦布告だった。
島を物理的に蹂躙しようと、あるいは乗っ取ろうとする連中とは違った方面からの攻略法ではあるが、こちらにとって見過ごせない要求であることに変わりはない。選べる回答は事実上一つしかなかった。
『断る』
本部長がたった一言そう呟き、次の瞬間には敵の攻撃が再開された。居合わせた仲間たちは具体的な作戦を告げられなくても自ら散開し戦闘態勢に入った。
島で交わした約束――命までは奪わない――が一種の足かせになってはいたが、単独で乗り込んできた相手を集団で追い詰めることに躊躇はなく、効果もあった。
司令塔となるべき人物が真っ先に味方の弾丸で気絶させられる、という想定外もあったものの。
結局、彼らは猛攻を耐えしのぎ敵を撤退させた。結果だけ見れば十分な勝利だった。
問いかけへの返答は一言だけだった。
それを聞いて、考えた末に、彼は包帯の端を縛っているバシャーモへ手を伸ばした。
「……サーリグ」
「何だ」
相手がこちらを見下ろす。もちろん視線は後頭部の方から降ってくる。
「メープルを呼んでくれ。話がしたい」
「代役を立てるのか?」
「ま、確かに俺の仕事は、モノムーに頼まなきゃなんねーよな。でも今回はそれだけじゃない……こっちを手伝ってくれ、って言ったらあいつ、喜んで飛んでくるから。それも言っとけ」
「承知した。存分に罵られろ」
治療を終えたバシャーモはサイドテーブルから自分の首を手に取り、片腕に抱えるという奇妙な格好でベッド脇を後にした。痛い一言を置き土産にして。
一人になった彼は、ようやく自分の身の回りを見た。ここはどうやら自分の部屋であるらしい。
左の肘は問題なく曲げられるし、痺れも感じないが、動かすとやはり痛い。ぼんやりと「傷跡は残りそうだな」と考えた。
体が重いのはきっと、心が重いせいだろう。
「クソッ……足手まといは俺の方か……」
それは今まで目をそらしてきたことだった。
下部組織にあたる会社やグループ、大半を一般ポケモンが占める面々とは異なり、「本部」に直接連なる顔ぶれはほとんどが何らかの異能力者か人外生物だ。バケモノを相手に何か出来るような特技を持たないのは技術班のニーナと、その身に抱える呪いを使いこなせていない自分くらい。
よりによって、組織の頂点に立った自分が、である。
『後は任せた』
そう言い残して姿を消した先代本部長を、今更恨んでも詮無いこと。
諦めは虚脱感に取って代わられた。
----------
舞台は23日未明。約一週間かけてようやく書き上げた、遅い。
根っこにいろんなものが絡まってるせいで身動きがとれなくなるのはいつものこと。
でも彼らは彼らなりの考え方を持っていて、それは時々PLの思惑をも軽々と飛び越していく。
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プロフィール
HN:
Rista
HP:
性別:
非公開
自己紹介:
化屋月華堂(親サイト)&カフェ「パーティ」(子サイト)管理人。今のところ活動は後者の方が活発。
一応今は社会人なので控えめに動いてるつもりだが、その割に子供じみた言動も多々ある。自覚あり。
ちなみにブログ名は“カフェパにのめり込んで離れられなくなった人”を指す造語に由来。
あなたは大丈夫ですか?
一応今は社会人なので控えめに動いてるつもりだが、その割に子供じみた言動も多々ある。自覚あり。
ちなみにブログ名は“カフェパにのめり込んで離れられなくなった人”を指す造語に由来。
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