「決められない横顔」

Twitter300字SS 第六十九回参加作品

お題「選ぶ」
ジャンル：オリジナル、とある普通の世界の話（単発）
注意書き：特になし

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「卒業なんてまだ先なのに、なんでもう決めなきゃいけないの」
　姉は進路志望のアンケート用紙を前に悩んでいる。
　姉といっても双子で同じ学校だから、私も同じ紙を受け取った。そして当日中に提出した。
　私はパティスリーに行くと毎回悩むけど、進路は心に決めていたからすぐ書けた。スイーツを買うとき即決する姉が、今日はずっと悩んでいる。不思議で新鮮。
「ケーキは次のチャンスもあるけど、これはやり直しきかないでしょ」
「そう？　買ったケーキは換えられないけど、進路は変えられるし後で違う方だって選べるじゃない」
　納得してない顔を見て、こう続けた。
「私が決めてあげようか」
「やだ」
　毎度のやりとりを互いに真似て、私たちは笑い合った。

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字下げや改行はノーカウントで300文字（今回もちょうどのはず）。

今回はオチの３行で悩みました。もう一本書く余裕などなかった。

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「力ずくで解いてみた」

Twitter300字SS 第六十八回参加作品

お題「夕」
ジャンル：オリジナル、とある壊れかけた世界の話（自作ファンタジーツイノベシリーズの番外編）
注意書き：特になし

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　藍（ラン）は魔女である前に学校の生徒だ。探索や実験で長期不在が多い彼女のため、担任が頻繁に宿題を送ってくる。
　今日届いたメールにはこんな一文があった。

　常に夕焼けを見続けるためには、時速何キロでどの方角へ走ればいいか。

　私は家庭教師である前に付き人なので、藍が放り出すまでは黙って見守る。普段ならすぐにでも端末を閉じるか、検索から脱線して無関係な動画を見るが、今日は違った。
「日が暮れたら起こしてー……」
　彼女は車の助手席にもたれたまま動かなくなった。こんな時に昼寝かと一度は思った。
　しかし藍は風の魔女だ。
　指示に従い日没後に起こすと、突然叫んだ。
「方角は西！速度わかんない！」
　異能で意識を風に乗せて飛んでみたらしい。

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字下げと改行とルビはノーカウントで300文字（今回もちょうどのはず）。

今回は140文字練習でおなじみ「ストレイトロード」から。もちろん語り部はいつものゼファールおじさんです。

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「進化した相棒との正しいつきあい方」

Twitter300字SS 第六十七回参加作品・その２

お題「泳ぐ」
ジャンル：ポケモン二次創作、とある平凡なトレーナーの話
注意書き：特になし

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　この町のポケモントレーナーに聞いた、初心者にさせてはいけないことランキング。数々の危険行為に混じって「イーブイに自分で進化先を決めさせる」が入ったのは間違いなく僕のせいだ。
　青が好きな相棒にねだられるまま水の石を与えたら、全く泳いだことのないシャワーズが爆誕した。いきなり陸生から水生になっても瞬時に適応できるのがポケモンの驚異だけど、心はすぐに変わらなかった。今まで通り暮らそうとするんだ。僕と。陸で。
　相棒は日に日に弱っていった。ポケモンセンターに担ぎ込んだら、風呂場で水浴びする程度じゃ足りない、相応の環境と世話が必要だと全力で叱られた。
　泳げない僕は今日も青いビニールプールで泳ぐ相棒を眺めている。


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字下げと改行はノーカウントで300文字（その１に続いて）。

今日8月1日は「水の日」、その宣伝キャラクターにシャワーズが起用されたとのリリースを改めて読んで、書いてみたくなりました。
2本目出すのは久々。

一緒に過ごしたくて隙あらばトレーナーを水中に引きずり込むポケモン、っていうのも珍しくないのかもしれない……
水は大切に。そして時には水の危険性も考えよう。

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「ずっと君のバタ足を見てきて思うこと」

Twitter300字SS 第六十七回参加作品・その１

お題「泳ぐ」
ジャンル：オリジナル、とある平凡な世界の話（自作ファンタジー長編の番外編）
注意書き：特になし

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　思い返せば小学校のプール授業は一学期のボーナスステージのようなものだった。浮き方や泳ぎ方は一通り習ったけど、結局僕らは遊びたくて出席していた。
　ただ一人、僕の幼なじみはいつも真剣に泳いでいた。もともと習っているから課題は楽勝なのに一切手抜きなし。自由時間もずっと一人でコースを往復していた。
「昨日の俺に負けたくねえから」
　学校でも水泳教室でも互角に競える相手がいないらしいと誰かが言っていた。

　高校生になった今も、僕らにとってプールと言えば夏の遊びで、彼にとっては戦いの場だ。
　部活という世界でライバルに出会えたのか、まだ自分と戦っているのか。
　金網の外からは日に焼けた腕しか見えない。心の中でエールを送った。


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字下げと改行はノーカウントで300文字（今回もちょうどのはず）。

「DROPOUT」シリーズの一般人枠、実隆くん視点で、主人公サイガの話を。
1巻では水泳部らしいことできてませんが、そろそろ頒布できそうな2巻ではようやく泳ぐシーンが出てきます（宣伝）。

※平凡な世界というのはこのSSに限った話で本編はそうでもないです

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「ある冒険者の脱走劇」

Twitter300字SS 第六十六回参加作品

お題「橋」
ジャンル：オリジナル、とある不思議な世界の話（と思って書いた）
注意書き：特になし

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「無い橋は渡れない」
　俺に剣術を叩き込んだ師匠の口癖を、敵から逃げる最中に思い出したのは何故だろう。物事を成したければ手順をよく考えろ。そんな意味だった気がする。
　暗い森を抜けた先は崖だった。追い詰めたと思って飛びかかってきた奴がそのまま急流へ真っ逆さま。牢獄を脱出してから緊張続きで今さら冷や汗も出ないけど。
　仕方なく崖沿いに走ったら古びた吊り橋を見つけた。逃げ道を見つけたと同時に、森を迂回してきた追っ手と合流した。これはまずい。先陣切って橋を渡って、向こう岸に着くと同時に後ろ手でツルを斬った。
　無数の悲鳴が水音の中に消えてから、ふと気づいた。引き返さないと味方に会えない。さて、どうやって橋を架ける？

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字下げと改行はノーカウントで300文字（今回もちょうどのはず）。

今回はこの企画で時々出てくる薬屋さんのシリーズでイメージしていたんですが、完成してみたらその要素は皆無ですね。
よくある古典的RPGの世界観でイメージしても間違いではない。タイトル無視したらニンジャの時代でも通りそう。

なお最初の一文はどこの引用でもありません。自分の中では。まあどこかに存在する格言かもしれない。
誰かが言ってました、ってやつですね。

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