忍者ブログ
♥ Admin ♥ Write ♥ Res ♥ 
Party Syndromeの現場に踊る足跡の記録。


 12 |  13 |  14 |  15 |  16 |  17 |  18 |
Twitter300字SS 第十六回参加作品
テーマ「写真」
ジャンル:オリジナル/日常の一コマ

---

その白い箱を見たことはあっても、使うのは初めてだった。
分厚いカーテンをそっとめくり、先客がいないことを確かめてから、中に入った。
証明写真機の中身は思っていたよりずっと狭かった。

画面に顔を映してから、深く腰掛けると撮影ボタンに手が届かないことを知った。
座り直してボタンを押して、背筋を伸ばした瞬間に、ネクタイのゆがみに気づいた。
首周りを整えて真面目な顔を作って、シャッターが切られる直前に、前髪が一房だけ額に垂れ下がった。
機械は使用者の指示通りにするから、全部自分のせいだ。

ようやくプリント画面までたどり着いて、カーテンの外に出た。
機械は設計者の指示通りにして、少しだけ美化した顔を受取口に吐き出した。


PR
Twitter300字SS 第十五回参加作品
テーマ「夜」
ジャンル:変則的おとぎ話

-----

零時の鐘が響く中、彼女は家路を急ぎました。
靴を片方なくしたので、もう片方も脱ぎ捨てて、全力で走りました。

「早く戻らなきゃ」
お姫様、どうしてそんなに急ぐのかな。
「仕事が残ってるの。朝までに終わらせないと勝手に出かけたことがばれちゃう」
眠ってしまったことにすればいい。
「それじゃだめよ。ここにいられなくなっちゃう」
言ってくれたら代わりにやったのに。
「絶対無理」
そう?
「明日は取引先で大事な会議があるの!プレゼンの準備終わってないのよ!」

取り残された魔法使いは肩をすくめました。
「違いない。自分の力で掴んでこそ本物の幸せだ」
拾い上げられた靴の飾りが月光を受けて輝きました。
「明日の会議が楽しみだね、お姫様」

-----

非日常からの帰り道にて。

SS企画《俺のグルメFESTIVAL》に3回目のチャレンジ。
今日が最後らしいので滑り込みをはかります。

テーマ『グルメのお伴にコイツがいなくちゃ! グルメ・アイテムとともにある飲食風景』
ジャンル:オリジナル/日常/美しくない恋愛

-----

 最近同棲を始めた彼は中身も外見も申し分なし。ブタみたいな顔の私と付き合っているのが奇跡のようだ。
 唯一の欠点は食べた料理の味をすぐ忘れること。
 3日連続して同じ店でデートして同じシチューを頼んだ時には、思わず口走っていた。
「このニワトリ頭!」

 今年の誕生日プレゼントはシチュー皿、それもニワトリとブタのペアだった。
 まさかあの一言を覚えていたのか。

 腹が立ったので翌日に作った。
 半日煮込んだ具沢山の贅沢ビーフシチューを、ニワトリとブタの顔に入れて食卓に並べてやった。

「あ、これおいしい」

 そう、それでいい。その場で感想を言ってくれたら、また作ってあげたくなる。
 今日のことを忘れても、また同じように言うはずだから。

-----


Twitter300字SS 第十四回参加作品
テーマ「音」
ジャンル:オリジナル

-----

分厚く重い扉を慎重に閉ざした。
少しだけねじれたような空気が充満している。
ここは猛獣の口の中だ。尖った白い歯が上から前後左右から、あらゆる音を引き裂き食らい尽くす。
思った通り、私にずっとつきまとっていた悪態や罵倒や叱責や陰口を、まとめて飲み込んでくれた。
すっかり軽くなった心が浮き上がって、床に着地した。

でも、一息ついた直後から、私の耳は違う音を拾っていた。
白い楔の群れがささやきあっている。
振り払ったはずの騒がしい声が反響を繰り返しながら漂っている。
どこから?誰の声?
耳を澄ませると、雑音の中にひとつだけ静かに抗議するようなリズムを見つけた。
しばらく観察してようやくつかんだ正体は、自分の鼓動だった。

-----
日曜から折本の配信(16日まで)、長編はいつも通り更新予定、さらにカフェパはイベント中。
今週は色々詰め込んでますが、合間を縫って別の企画に出すものも書いてました。

今回はSS企画《俺のグルメFESTIVAL》に2回目のチャレンジです。

テーマ『「これが! 俺の! グルメだ!!」を詰め込んだ、“おいしそう!”な飲食風景』
ジャンル:オリジナル/SF一歩手前

-----

 ブロック型のスープに初めて出会ったとき、SF映画のような時代はもう始まっていたんだと子供心に感動したことを、今でも鮮明に覚えている。その加工物が普段の食事ではなく宇宙に持っていくものだと聞かされると、私は安直な想像を巡らせたのだった。
 外は星空。宇宙船の中で一人漂いながら、淡い黄色のブロックを口へ放り込む。
 物語の続きは忘れてしまった。

 宇宙滞在七日目の朝食は、船内で収穫した野菜で作ったサンドイッチと、真空パックのスープ。封を切って口に含んだ液体は地球で味わうそれと少し違う感触だが、舌先がとらえたのは紛れもなく懐かしい故郷の味だった。
 子供の私が見たら贅沢だと思うだろうか。
 想像の先の先にあるのが未来だ。

-----


Copyright(c)  狂宴症候群  All Rights Reserved.
*Material by *MARIA   * Photo by photolibrary   * Template by tsukika

忍者ブログ [PR]
カレンダー
12 2025/01 02
S M T W T F S
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31
プロフィール
HN:
Rista
HP:
性別:
非公開
自己紹介:
化屋月華堂(親サイト)&カフェ「パーティ」(子サイト)管理人。今のところ活動は後者の方が活発。
一応今は社会人なので控えめに動いてるつもりだが、その割に子供じみた言動も多々ある。自覚あり。

ちなみにブログ名は“カフェパにのめり込んで離れられなくなった人”を指す造語に由来。
あなたは大丈夫ですか?
ブログ内検索