書き残す：旅立つ前に

Text-Revolutions（以下テキレボ）ではカタログの代わりに、参加者によるテーマアンソロジーを発行しています。
その第四回にてついに、化屋月華堂として掲載してもらうことになりました。
本としての頒布は来月になりますが、先行してテキレボ公式サイトにてWeb版が公開されていますので、ぜひご覧ください。

以下ネタバラシなど。

仮タイトルは「旅立ちの前に」でした。あんまり変わってない。
もちろん旅立ちとはいわゆるアレのことで、行ってしまうと二度と戻れないから最後にいろいろ手伝うっていう、映画とかでよく人間がやるやつが彼らの仕事っていう。
でもなんか歌のタイトルみたいだなぁと思ったので提出直前に変えました。


今回のお題が「和」ということで、和室が出てくるのですが。
実はテーマ要素として描きたかったのはそこではありません。

先にも述べた通り、今まではアンソロジーへは参加出来ませんでした。
第１回「初めての〇〇」→本作る前で一般参加だった
第２回「再会」→みどさんに委託だったのでアンソロ参加資格なし
第３回「猫」→初の直参だったがツイノベまとめとポストカードで手一杯
そして
第４回「和」→やっと書けた。

お気づきの方はいますでしょうか。
今回の掌編は全部入りです。三題ならぬ四題咄です。
和、で思いついたのがこれだった。はい。
(第２回のテーマが記憶違いだったらごめんなさい、ここだけ過去データ探せなくてうろ覚えなんです！)


語り手として登場しましたのは「DROPOUT」Chapter4などに脇役として登場している死神アッシュです。
本編のオリジナル版(10年以上前に書いたもの)では主人公宅に居候するレギュラーメンバーでしたが、リベンジ版(今掲載しているもの)では諸事情で準レギュラーに降格しています。
合わせてカットした諸々の説明や出番自体カットされた局長の話もいつか番外的に書きたいと思っていたところ、ふと前述のテーマを思いつき
「そう言えば猫キャラがここにいた！」
ということで彼らを起用した次第です。
ちなみにデックスは今回のための新キャラです。

作中ではアッシュやデックスの外見について、敢えてほとんど触れていません。
これは本編の中でアッシュが「出会う人によって違う姿に見える」ことを踏まえたもの。
つまり読み手が思い浮かべたイメージが正解。
こういうのは文章だけで情報を提示する小説だからこそできるやり方ですね。


宣伝という意味合いでは既刊がある「ストレイトロード」の方が良かったかな、とも後から思いました。
でも「DROPOUT」も本当は出す計画がありまして。
当初の予定では今度の4で試し読み的小冊子を出せるかなという見込みだったのです。

しかし今や予告済みの新刊も危うい。笑えない！！
まずそちらを頑張ってます。
それがなんとかなったら、製本待ちの間にせめてこれの4000文字に収める前のバージョンを再編集できたらいいな……なんて。


ここまでお読みいただきました皆様には御礼申し上げますと共に、
自分が来月無事に参加できるようちょっとだけお祈りくださると幸いでございます、
という訳の分からないことしか言えなくなったところで裏話を締めたいと思います。
ありがとうございました。

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「待ちわびる」

Twitter300字SS 第二十五回参加作品
お題「訪れ」
ジャンル：オリジナル
注意書き：特になし

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「宅配便です」
小包を抱えてインターホンを鳴らすと、女性の声で返答があった。
足音が近づいてきて、静かにドアが開く。
でも顔を出したのはメガネを掛けたヤセ型の少年だった。しかも小包を見るなりがっかりした顔をされた。
「なんだ、違うのか」
全く違う声と予想外の反応に面食らっているうちに、後ろから足音が近づいてきた。
郵便屋が来て、少年に書留の大きな封筒を渡した。
「ありがとうございます！」
少年は書留の伝票にだけ受け取りの判子を押した。そして半開きのドアに挟まれた格好のまま、封筒をやや乱暴な手つきで開封した。
「やった！ 合格だ！」
少年は春の訪れを待っていたのだ。
気づくと何故か少年と手を取り合い、一緒に喜んでいた。

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今回は季節も何もかも完全に無視。
長い行列に待つ間にアイデアを書き留めて、帰宅してから10分で仕上げました。
そんな急ごしらえで字数ぴったりになったので、いろいろ間違えていても目をつぶってください（弱気）

「その10秒のために」

Twitter300字SS 第二十四回参加作品
お題「声」
ジャンル：オリジナル
注意書き：特になし

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号砲一発、一斉にスタート。
トラックを駆け抜ける選手たちの中に彼がいる。
私は観客席の最前列に座って、目の前のゴールテープが切られる瞬間を見守る。
勝負は一瞬。
彼が天を仰ぐ。
電光掲示板に名前が灯る。
スタジアムを埋めていた声援が大きな歓声に変わった。
私も叫びながら立ち上がって、拳を振り上げて、

突然世界が真っ暗になった。

急に全身から力が抜けて、私はベッドに座り込んだ。
「それ、何回見たら気が済むの？」
ゴーグルを外して振り返ると、お母さんの呆れ顔が目の前にあった。
その手には壁に挿していたはずのコード。
私は電源の切れたゴーグルがとても熱いことに今更気づいて、それを放り出した。
「別に何回見たっていいでしょ！？」

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かぶらないといいなと思いつつ、二重の意味で時事ネタです。
（今日から始まったあの大会。そしてVR。）

これ、もう「未来の光景」でもなんでもないんですよね。
なんなら今からこのセット一式自作しようと思えばできてしまう。そんな時代なんです。
（自分にも手が届くかどうかはともかくとして。）

「要求」

Twitter300字SS 第二十三回参加作品
お題「のむ」
ジャンル：オリジナル/日常
注意書き：特になし

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両手を上げろ。すぐに席を立て。窓口から出てこい。
猟銃を構えた銀行強盗は矢継ぎ早に指示を出した。行員は渋々要求を呑み、居合わせた客と一緒に壁際に並ばされた。
ブラインドを下ろす。監視カメラの電源を落とす。持ち込んだ錠で扉を締める。
強盗はなぜか防犯装置に詳しく、金を集める前にデスクを回って通報手段を片端から封じた。
そして責任者を呼び出し、いよいよ金庫へ行こうとした瞬間、扉が外から破壊された。
「動くな！ お前はもう包囲された！」
武装した警察官がなだれ込み、犯人は瞬く間に拘束された。

テレビの情報を鵜呑みにして事に及んだ犯人は見落としていた。
誰も言わない基本的な方法、つまり電話で通報した通行人がいたことを。

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基本は大事です。

前回は諸事情で参加できなかったんですが、今回は間に合いました。
前日の晩に眠れない頭でぼんやり考えていたネタを奇跡的に思い出せて、無事に書き出すことができました。

「親の心、子知らず？」

Twitter300字SS 第二十一回参加作品
お題「子」
ジャンル：オリジナル/日常
注意書き：web掲載中の長編「DROPOUT」番外編 / 本編未読でも大丈夫です / 表現絡みの注意点なし

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　ある日の深夜、町の片隅のバーで。

「なー、ひどい話だろぉ？」
　馴染みの客がカウンターの片隅に居座って数十分。
　氷を突っ込んだ蒸留酒を一杯分だけで既に舌が回らないのはいつも通り。店主は素知らぬ顔で親友のグラスに真水を注いだ。
　曰く、小学三年生の息子が学校でいじめられたらしい。事情は六年生の姉から聞いたが、肝心の息子は一切口をきいてくれないという。
「俺に相談してくれたら、いくらでも、助けてやるのに！」
　客はグラスを高く掲げて氷水を一気に飲み干した。そして電池が切れたようにカウンターに伏せると、すぐに寝息を立て始めた。

　六時間前に息子本人が店裏に来て、父親の失言のせいだと憤っていたことは、店主だけが知っている。

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主人公サイガの父・陽介と、その友人・柏木。
300字企画には以前にも登場している二人です。

本編は9割以上が若い三人の視点から描かれた話なので、彼らが出てこない場面はどうしても広げられない。
でもこういう企画や番外編として少しずつ書いてみたいと思っています。

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